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同族を殺す売国奴とは、実は内側のスグ傍に居る - ベトナム志士義人伝シリーズ⑰杜基光(ダウ・コ・クアン)

 ベトナムの抗仏史関連書には、ベトナムがフランスに蹂躙されると直ちにフランスに頭を垂れた無節操で強欲なベトナム人の存在が際立っています。
 フランスという西洋人支配下を恰も”新時代の幕開け”とばかりに勘違いし、率先して国を売り同国人を蔑み、そして支配する。植民地政府内で立派な肩書・官職を得て、言われるがままに同胞へ重税を課して、土地を資源を奪って貢物をする。勿論、途中で自分の懐を潤すことを忘れずに。

 ベトナムの独立運動家潘佩珠(ファン・ボイ・チャウ)の自伝や『越南義烈史』には、祖国の為に殉死した若者の逸話が多く書いて有りますが、皆一様に祖国の傀儡政府高官らを憎む事甚だしく、激烈な言葉が沢山遺されています。⇩

 「潘賚良(ファン・ライ・ルオン)君、…肺病を病み、中国へ。病状劇化を心配した私が、帰国して闘病せば、回復の見込あるやも知れぬと言っても決して承知せず、彼はこう返した。
”あんな鶏豚、家畜の如き奴らの屯す土地で死ぬより、人間の住む土地で死ぬことを選びます” それから幾日もせず、香港の病院で息を引き取った。」
 「林徳茂(ラム・ドック・マウ)君、…同じ獄舎で繋がれた2人は、共に頗る意気軒昂、消沈する気配など全く見せない。警官が銃をちらつかせて威嚇し、心を入れ替え政府の為に働くならばすぐに釈放する、と甘言を弄した。これに対して、徳茂君はこう言い放った。
 ”今のまま、ベトナム人のまま死ねるならその方がよっぽどましだ! 誰かの犬になってまで、長生きしようなど思うものか、俺たちが死んだって、ドイツの兵隊がすぐにやって来るぞ!” まもなく2人は、白梅(バック・マイ)山の麓で銃殺刑に処された。」

 「…ただ首を垂れて権力者にへつらい、まわりに威張り散らしてわれとわが身を縛り上げ、そこから抜け出ることもせぬ、これを奴隷というのであって、まこと禽獣自然の生活態度にも劣る存在である。いまわがベトナム国の某大官、某大使、某大紳士、彼らはフランス人のトラ、ゾウ、猿、つまり奴隷に他ならぬ。」

 などなど、、、例を挙げれば切りがない程この類の話が書き遺されていますが、あの当時、ベトナム志士達があれ程自国政府の高官らをこれほどまでに毛嫌いする背景を知るに、やはりファン・ボイ・チャウ自伝『自判』に書いて有る『杜基光(ダウ(ド)・コ・クアン)氏の殉死』が我々日本人にとっても最も解りやすい話かなと思います。⇩

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杜基光(ダウ(ド)・コ・クアン)氏

 ダウ・コ・クアン氏が広東に渡って来た頃は、ベトナム光復会の活動がまだ非常に活発だった時期だったが、徐々に活動が収縮して、広東・広西からベトナムへ行くルートも塞がれてしまった。クアン氏は仕方なく雲南からのルートを使って北圻へ戻る為、この旅費を私に願い出たので、私はついでに彼にハノイ習兵への鼓舞運動を委託した。けれど、この時彼に同行した阮黒山(グエン・ハック・ソン)という男が危険な人物だったとは、誰も気が付いて居なかった。
 元々から、クアン氏の出洋時にその出洋費用を工面したのがこのハック・ソンだったのだが、クアン氏は奴がフランス密偵とは知らなかった。出国してから広東に滞在した2人は、互いに困窮生活を忍び合い、その半年後に共に南京兵営に入営して更に半年間軍事を学んだ。同労共苦の仲だった2人だから、クアン氏はハック・ソンに対して深い信頼を寄せていた。それに、いつも国許の家族から送金が途切れないハック・ソンを信用し、クアン氏が雲南へ行く時もハック・ソンを誘って出発したのだった。ダウ・コ・クアン氏は、フランスによる悪逆な密謀を知らずに殺された。国事への尊い犠牲に哀悼の誠を捧げる。
 彼は、漢文、国語文(=アルファベット化文字)に長け、演説の才能も有った。雲南省へ赴くにベトナム光復会の密書を多数携帯して、雲南到着後は現地の我国人へ熱心に運動を働きかけたので、河口から雲南へ来ていた同国人、例えば鉄道守備兵や通訳書記、炊事夫など合計50余名が挙ってベトナム光復会に入会した。それから間もなく欧州戦争が勃発したので、クアン氏はこの機を狙って在蒙自(もう・じ)ドイツ領事館へ我党への庇護を願い出た。そのお蔭で、我党勢力は益々伸長した。
 そんなある日、クアン氏は鉄道守備隊習兵に頼んで密かに汽車に乗り込み、ハノイへ潜入して習兵長2名と接触した。彼等と関係を結んだのも束の間、突然逮捕されてしまった。彼と一緒に裁判所に引っ立てられたのは、習兵長一名と、秘書の蘭(ラン)氏以下雲南在住の我国人総勢約50余名で、全員河口へ連行されて、そこで全員同時に首を刎ねられた。クアン氏が組織した我が党の雲南支部は、一網打尽で漏れなく全員が敵の網に捕らえられた。たった一人、フランス密偵のハック・ソンを除いて。
 クアン氏は斬首刑に処され、自首を願い出たハック・ソンは無罪放免。更に奴の実長兄であり指南役の阮夏長(グエン・ハ・チュォン)は、なんと見事知県(=県知事)職に収まった。米粒如きの名誉・職位と引き換えに、愛国者である同胞50余人の命を簡単に奪うことが出来る肚の底からの売国奴ども。私はもう、奴等を人種に類別しあれこれと名称など付ける気力もない。

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 信じたくないけど、紛れもない事実です。敵は、バラエティ豊かに傀儡者を多く養い人材豊富に、恰も何年来の苦難を共にした同志だと勘違いさせるように年季を入れて仕込みをし、完全に信用させ、内側に忍び込んで全容を筒抜けにして泳がせて置き、或る日満を持して一網打尽にする。それで問答無用で一気に処刑して、運動ごと跡形も無く抹殺する。
 これが彼等の常套手段、いつもの手口。これで何百年も奴隷商売を続けて来たのだから、西洋植民地主義をナメてはいけない。😭😥😥
 時恰も、仏領インドシナに負けずとも劣らない≪重課税国家≫の入り口・崖っぷちに居る令和日本へ、潘佩珠(ファン・ボイ・チャウ)やベトナム志士らがあの世から警告してるようです。。。

 そういう視線で疑って目を凝らすと、いますよね。阮黒山(グエン・ハック・ソン)が。今の日本の保守論陣にも、沢山。
 いますよね、いつも。初めは居なかったのに、途中で土産を引提げて現れて、恰も救世主の如くにいつの間にか運動の中心に収まっている人。

 でも、その『土産物』、絶対アヤシイですよね??? 困って居る人の所にやって来てドンピシャな物見せに来る人なんて、向こう側の人間に決まっている。だって、元々筋書きを仕込んであるんだから。(笑)

 私は少なくとも、『近衛文麿が日米戦争を画策した!』とか言う人はどんなことがあっても心を許しません。。(笑)
  
 
 

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