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本筋には触れない30代ゲイの『THE BOYFRIEND』感想

Netflixで配信された『THE BOYFRIEND』。

僕は友人を誘って、あーだこーだ言いながら毎週観ることが出来た。
そんな風に家に集まって、持ち寄ったものをつまみながら誰かと同じ画面を観ることが、なんか青春っぽいなと思いながら(遅い)。

誰がタイプとか、ここがひっかかるとか、そんなことは自分の好みの問題なだけなので、noteでは少し別のことを書きたい。



過去にフォーカスする時代は終わったのかもしれない


初リアルの場面で聞きがちなこととして、いつゲイだって思ったの?とか、きっかけは?的なことがある。
ゲイとしてのセルフイントロダクションの定番。

と僕は思っていたのだけど、『THE BOYFRIEND』では本編で生い立ちや過去が話される場面はいくつかあっただけで、僕が想像していたよりも格段に少なかった。

『ボーイフレンドナイト』でも、ゲイということを意識して見てくれってことじゃない、そういうことの比率が低い、という話があった。



僕の世代(平成初期生まれの30代半ば)では、子どもの頃はゲイの存在が可視化されていなかった。ゲイの存在が一般的ではなかったから、自覚した頃に感じた違和感が、生きる中でずっと付き纏っているのだと思う。
それをどうにか解したくて、そういうことを聞きがちなのだろうか。

片や現代。
ありとあらゆるものが調べられる。子どもでもSNSで気軽にオープンに出来る世界を持つことが出来、同じ人と繋がることが出来る。

ゲイであることを特異なこととか、特別に意識するような時代ではなくなりつつあるのかなあと感じる(特に当事者にとっては)。



ゲイを自覚した戸惑いはあれど、そこから情報や同じ当事者に繋がるスピードは格段に早くなったはず。
昔はその隔たりがとてつもなく大きくて、それが一つの困難だったと思う。

自分を否定してしまうような時間が、なくなりはせずとも、減る方向に、時代はなっている。
そんな時代に、ゲイを自覚する時期をオンタイムに過ごしていない僕には、なかなか想像が出来ない感覚だ。

自己肯定感という意味で、全く違う時代になったのだろうなと想像するしかない。



ただ、僕からすると出演者のこれまでの部分をあまり知ることが出来なくて、どういう人なのか理解が進まないなぁとも思った。

でも、もう過去に過分にフォーカスする時代ではないのかもしれない。
ほんの10年前には、ゲイは治せないのか?的なことを見聞きする時代だった。
そんなゲイの原因論や治療論がやっと終わったということでもあるのかもしれない。



男同士で付き合うって、どういうこと?
なんでこんな風に生まれてきちゃったんだろう?


初回の配信でこれが出て来たのは大きかったと思う。
スタジオでは全然触れられてなかったんだけど。

付き合った先のゴールというか目標というか、マイルストーン的なものがないこの感情をノンケは理解出来るんだろうか。

この人との関係に、一体どんな意味があるんだろうか?っていうね。



そういう意味で、社会的な意味付けって大きくて、見える未来の明るさが全く違うのだと思う。
このナーバスな感情を、もっとスタジオで掘り下げてもらいたかったのが本音。

ゲイであることを自分で受け入れられる社会の素地は格段に出来上がってきてはいるけれど、その先の躓きは昔も今も変わらない。

とは言え、ちょっと重めの話をするのは歳上陣が多かった印象で、今の若ゲイ達は、案外あっけらかんと受け入れているのかもしれない。
そう思いつつ、ゲイであることの自覚の問題と、ゲイである自分の社会での立ち位置の問題は、前者がクリアされつつあっても、後者は残るんだなと改めて思う。



恋愛対象と友達が、どちらも男という難しさ


恋愛にそこまで、重きを置かなくともいいわけだけど、やはりリアリティーショーは恋愛の比重が大きいわけで。

恋愛的に、ありか、なしか。
そのウェイトが大き過ぎて、友達という枠が難しい。
巷のゲイのリアルなリアルもこんな感じだよなと思う。

これが、『あいのり』や『テラスハウス』なら分かりやすいわけ。
異性との仲良しは恋愛、同性との仲良しは友情、みたいなね。男女の友情も少しはあるけど。



家での会話とか、コーヒートラックのペアとかもそうだけど、普通に友達として話したいとか、相談したいとか、そういうことだってあるわけじゃん。
でも、周りから見たら、恋愛として狙ってるなって思われるし、誘われた方もそう意識しがち。

一方は恋愛、一方は友情みたいな掛け違いもよくある話で。
それで大抵その場合、友情には落ち着かないもの。
イケなかったらサヨウナラ、がゲイの世界の常だったりする。

自分以外の全員に矢印を向けることが出来る、その複雑さ。
異性愛者男女の場合に比べて、矢印が単純に倍になるわけで。それはそれは絡まりやすい。
恋愛なのか友情なのか、その難しさがもう少しフォーカスされてもよかったかも。



傷つけられてもいい


僕はこれまで、不倫とか浮気とかメンヘラとか、損しかないんじゃない?と思う恋愛について相談されたら、止めた方がいいとばかり言ってきた。
そのアドレナリンは仮初のものだと。

でも、傷つけられてもかまわないと思う恋愛なんだったら、そのまま進むのも、一つの気持ちの実現なんだなと教えられた。



週1話配信を待つ楽しみって、もう古い?


僕は思いっきりテレビ世代だから、3話同時配信とかまとめて来過ぎて、もっと細切れでいいんだよなと思った。

僕は古い人なのかもだけど、待ち遠しい時間を含めて週1話のちまちま配信が好きだなあ。


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