『雨の日』後編
雨の日は…あの日を思い出す…
二年前の雨の日…私は目の前の血塗れの異物を見つめていた
遠くからはサイレンの音が聞こえてくる
「あなたが須東叶芽ね」
「………はい」
少年院の人に話しかけられ中に入る
「ねぇ!君って何歳?何でここに来たの?」
「……ぇ……ぁ…」
部屋に入るとすぐ陽キャな女の子に色々話しかけられた
「黒井姫菜、うるさいぞ」
「はぁい、ごめんなさーい」
看守?みたいな人に怒られていた、残念な人
「須東はこの黒井と一緒だ」
「えー!嬉しい〜!よろしくね、須東ちゃん」
こいつ頭大丈夫か?
「黒井、あなたがここのルール教えてあげなさい」
「了解でーす♪」
やばい、完全にバカっぽい女だ
看守さんは部屋から出て何処かへ行った
「…あ、初めまして!私は黒井姫菜、よろしく須東ちゃんは下の名前は?」
「………須東叶芽…」
うるさ…ずーっと喋ってる…
「あ、ごめんね?久しぶりに同部屋の子が来たから嬉しくなっちゃって、えへへ」
「…く、黒井さんは何してここに来たの…?」
するとニコニコしてた顔が真顔になり話し出した
「…窃盗や強盗を繰り返してたら、店員さんに顔を見られちゃって慌てて持ってたハンマーで殴っちゃってさ、店員さん意識不明だって…」
「…そう……なんだ…」
黒井さんは自分の手を見つめながら語った
「いやぁビックリしちゃってさ、でも向こうも突然殴られて驚いただろうね…んで?」
「……え?」
突然私に話を聞いてきた
「須東ちゃんは、何してここに来たの?」
「…う、ウチ…は…」
あの汚い血塗れた異物のビジョンが頭を過ぎる
「…大丈夫、私ね色んな人見てきたから」
「……酒飲みで暴力的な父親から弟を守る為に包丁で刺した…」
その日は雨が降っていて私は何を考えたのか分からないけど裸足のまま外に出てぼーっと夜空を眺めていた…
「あー、典型的な感じだね」
「ウチ……血塗れた汚い異物としか思わなかった…変かな?」
結局、弟は保護されて私は少年院だった…
「んー、そのお父さんにはドンマイとしか思わないかな、だって須東ちゃんは弟くん守る為に動いたんだから、すごい勇気だよ!」
「…それは励ましてんの…馬鹿にしてる?」
なんか慰められると馬鹿にされてる気分になる
「も〜!馬鹿になんかしてないよ〜!」
「…そう…」
でも…あの日の雨の夜空は綺麗だった
「私、須東ちゃんの事もっと知りたいな!少年院出たらさ下の名前で呼び合おうよ!」
「…良いよ…」
そして私達は二年後に少年院を出て施設に移された、まともな暮らしが出来るように勉強をして、姫菜は怪我を負わせてしまった店員さんに謝罪の手紙を毎日送っている
弟は私が少年院から出たら一緒に暮らせると思っていたらしいが両親の祖父母がそれを拒絶して弟だけを引き取った
「あーあ、大人って嫌になるね!」
「…まぁ…そうだね…」
姫菜は私が落ち込んでいるとすぐ隣に来て毎回訳のわからない励ましをする、姫菜なりの優しさなんだなぁと思った
「そろそろ下校だから、帰ろ〜!」
「うん、帰ろう」
外は雨だ、傘を持って来ていて良かった
「ねね、このピンク色の傘可愛くない?」
「…ぶりっ子みたいでウチは可愛いとは思わない」
思わずど本音を言ってしまい姫菜を見たらえーっとした顔をしていていつも通りだった
「そういえば雨の日って私達が出会った日だね、叶芽!」
「あ、そうだね」
あの時、雨の日に姫菜と出会ってなかったら私は独りぼっちだっただろうな
「でも私、雨大嫌いなんだよなぁ」
「ウチは好きだよ」
だって、姫菜が私の心を軽くしてくれたから…でも本人には内緒にしておこう
いつか一緒に普通の幸せが訪れますように…
『雨の日』END