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BOARD GAME RESORT GAW JOURNAL#02 「プレミアムなボードゲーム体験を生み出す建築とは?」阿相綾・鈴木哲郎(duffle)×GAW

〈GAWジャーナル〉第2回目は、GAWの建築・設計にまつわるストーリー。建築・設計を担当した建築事務所duffleのお二人と、完成までのプロセスを振り返りながら、GAW建築の見所をたっぷりお届けします。
 
構成・文/GAWジャーナル編集部


鈴木哲郎(写真左)阿相綾(写真右)、による建築・設計ユニット。建築(戸建て・内装・オフィス・店舗)の企画・設計、不動産デベロッパーとの商品開発設計など幅広く活動。
http://www.duffle.jp/

唯一無二の場所にしたいから、0から建てる


阿相:あだち先生から、「長野県原村に土地を買ったよ〜」って連絡が来たのが2021年の春だったかな。

土地購入直後。雑草がしげる、荒涼とした土地だった。

あだち:うん。まだイメージは漠然としていたけど、原村の大自然の中で心ゆくまでボードゲームができる場所を作れないかなぁって思って、阿相くんに連絡したんだよね。わざわざ原村という都会から離れた場所まで来てもらうわけだから、「1日1組で、自然の中でプレミアムなボードゲーム体験ができる場所」ということだけは決めていました。

鈴木:ただ正直、その「最高のボードゲーム体験ができる場所」っていうのがどういうことなのか、僕たちはピンときていなかった(笑)。だから、いろんなプランを出して、太陽くんとあだち先生が思い描いている空間とすり合わせていく作業を続けていった感じだよね。
 
太陽: あと、「世界一カッコいいボードゲーム施設」というのもあったね。ボードゲームが子どもの遊びだけでなく、大人の嗜みにもなることを普及するには、大人が納得するような最高にカッコよい舞台が必要だと考えていました。そのようなテーマで建設されているボードゲーム専門の建物は、世界を見渡してもおそらくあまり例がない。そのバックグラウンドからお話していきました。

あだち:この頃の打ち合わせ資料を見てみると、「GAW」っていう名前すらまだないね。「アナゲリ(アナログゲームリゾート)計画」って書いてある(笑)。

太陽:「自然豊かな場所でボードゲームをする」というだけなら、田舎の中古物件を買っていい感じにリノベーションする方法もあると思うけれど、それだと今回のプロジェクトには半端なものになりそうな予感がしました。 “ゼロから建物を設計して突き抜けたものを作る”でないと、自分たちの本当にやりたいことが表現できないと思ったので、新築にこだわりました。なんというか、僕たちがつくりたいものって、提供するサービスだけじゃなく、建物自体もすごく大事な要素になると思ったんです。そして、設計から建物ができるまでのスケジュールを立てていただいたんですが、約2年の壮大なプロジェクト!スケジュールを見て、気が遠くなりました。

阿相:ほんとうに2年まるまるかかりましたよね。

自然に囲まれた環境を、建築にどう生かすか


鈴木:最初の頃は、とにかく、何が一番ワクワクするかっていうのをみんなで話していたと思います。
 
あだち:私のボードゲーム事業の会社「あだちのYEAH!!!」のロゴみたいなサーカス小屋みたいな感じがいいのかなぁとか。

あだちのYEAH!!!ロゴ
「あだちのYEAH!!!」のロゴから構想したサーカス小屋のような案。


阿相:高い塀で囲んで、中に入った人しか建物の全貌が分からないという特別感をつくろうかとか、ボードゲーム棚にぐるりと囲まれた円柱のような建物はどうだろうとか。
 
鈴木:敷地内に、いろんなデザインの建物を点在させた“ボードゲーム集落”のような場所にしたらどうかというプランもあったね。

いろいろなデザインの建物が点在した“ボードゲーム集落”のような案。
塀で囲み、中に入らないとどんな施設があるか分からない案もあった。



太陽:この頃って、最大収容人数とかも、まだ全然決めてなかったですよね。
 
鈴木:具体的なことは決まっていなかったけど、太陽くんとあだち先生から「わざわざこの自然の中にきてこそ、体験できること」「前例のないボードゲームリゾート」というキーワードをもらっていたので、そういう部分をどう表現するか考えていました。

太陽:例えば、ボードゲームをした後に焚き火を囲んでチルタイムを過ごすって、都心では出来ないことなので、絶対実現したかった。
 
阿相:当初は、敷地の中央に建物をつくろうと考えていたんですが、焚き火スペースが窮屈になってしまうと特別感を感じてもらえないと思って、建物の位置を敷地前方に少しずらして、焚き火スペースを贅沢に確保しました。


建物の裏側にある焚き火スペース。


あだち:あと、非日常の空間でボードゲームをしてほしいなぁって思って、ボードゲーム会場に薪ストーブを置くことは決めてた。
 
太陽:薪ストーブを置くとなると煙突や換気とかの関係もあって、建物は、分棟ではなく1つの大きな建物にすることに決まりました。

薪ストーブの背後には大きな窓をつくり、開放感ある空間にした。薪ストーブに主役感を出すために特注の台座を作った。


鈴木:
あとはやっぱり、長野県原村までやって来てGAWにたどり着いた時のファーストインプレッション。ここも大事にしようと阿相くんとよく話していたと思う。
 
阿相:そうだね。自然の中に建物を建てるとき、〈自然との調和〉をテーマにした建築も多いかなと思うんですが、前例のない建物だからこそ、建物を見た時に「あれはなんだろう!?」とか「ここでボードゲームをするの!?」というような高揚感を持ってほしいなと。それで、自然の中に突如として黒い物体がポコッとあるようなイメージがわいて、黒い外壁にすることにしたんです。
 

だんだん固まってきた外観の図面。


自然の中に現れる、黒い建物


鈴木:
八ヶ岳の雄大な自然の中に、黒い物体があるというギャップがあることで、建物自体がアイコン化されるという効果もあります。新しい施設だからこそ、そういった仕掛けも大事じゃないかなと。
 
そして、黒塗りの建物の中に入ると、今度はカラフルなボードゲームがずらりと並んでいるという、外と中とのギャップも生み出せる。そういう視覚的な体験の積み重ねも、GAWでの特別な体験につながってくると思いました。
 

カラフルなゲーム棚


あだち:最初の頃、私は、壁の色とかインテリアの色に、カラフルしたい!もっとポップなイメージ想定だったけど、「主役はボードゲーム。ボードゲームのカラフルさを引き立てるための色選び」という視点から考えると、外観、内観、ボードゲーム棚、家具など、全てシックな色を選ぶようになったよね。

太陽:ファミリー向けのレジャー施設だったら、家具も含めて全体をカラフルにして賑やかな雰囲気づくりをしていくと思うんですが、「大人の嗜みとしてのボードゲーム空間」というのを一貫して意識していたので、とにかくゲーム以外の内装や家具は落ち着いた色味を選ぶようにしました。外観も含めて、そういった部分もしっかり統一できるのも、新築物件だからだと思います。

あだち:そういえば、ソファやテーブルの色味を決める時に太陽くんが「モノクロでありつつも、濃さにグラデーションがある感じで・・・ピカソのゲルニカみたいな」と言うと、みんなが「なるほど、ゲルニカみたいな!」と深くうなづいたんだよね。

太陽:あの時、誰もゲルニカの絵を改めて見なくとも、うなづいてくれて……。文化的な素養って大事なんだなと改めて実感しました。

家具はモノクロのグラデーションに。「テーブルの大きさは、どのボードゲームを広げても大丈夫な大きさをあだち先生に確認してもらって決めました。ボードゲームをするという用途では楕円がベストということに」(阿相)


GAWの象徴となるボードゲーム棚ができるまで


 
あだち:ボードゲーム棚がGAWの大きなポイントになると思っていたからこそ、なかなかイメージが決まらなかった。壁いっぱいに棚をつくろうとか、ボードゲームを平積みにしようとかも考えたよね。でも、それだと普通というか……。最終的に決まったボードゲームを斜めにして棚に並べていくデザインって、どうやって決まったんだっけ?


鈴木:
あだち先生の「あだちのYEAH!!!」の公式HPの中に、あだち先生がボードゲームの上に座っている写真があって、パッケージが斜めに写っていたんですよね。その感じがすごくインパクトがあって、GAWのボードゲーム棚にも取り入れました。

「あだちのYEAH!!!」の公式HPにある写真。

あだち:そう!この写真だよね。これは、数年前にアートディレクター清水貴栄さん、フォトグラファーの磯部昭子さんのタッグで撮っていただいたもの。この写真を撮影する時も、実際に何百個という大量のゲームを撮影スタジオに持ち込んで床に並べて、それを頭上高くから俯瞰で撮影するという・・・普通は絶対やらないような、とても手間のかかる方法でした。

床にゲームをひとつひとつ並べていった


この写真がGAWのボードゲーム棚の鍵になるとは!この写真をヒントにすると決めた時から「面出しでパッケージを見せる」というのが絶対に外せないことになったね。

太陽:ボードゲームに限らず本や雑誌でも同じくですが、棚に収まった時は面出しではなく側面だけが見えるのが普通。でも、GAWのゲーム棚ではパッケージの表をあますことなく見せたい。それはひとえにボードゲームのパッケージが美的に素晴らしいものが多いから。「ボードゲームのパッケージはカッコよいものなのだぞ」と表現することが、GAWのゲーム棚の命題であるというふうに、向かうべき姿が明確になっていきました。

あと、打ち合わせで話していく中で、山々の写真もヒントになったよね。
 
あだち:そうそう!山が重なり合う景色。あの時も太陽くんが、「言うならば山々が何層かに連なる感じで・・・たとえばこんな感じでしょうか」と山の画像をみんなに見せてイメージを共有してました。

山が幾重にも連なるイメージ
山が重なるイメージから、独創的なゲーム棚デザインに繋がった

太陽:そう、色んなものからインスピレーションを受けつつ、ゲーム棚は形になっていきました。他にはこんな工夫も。東京・代々木にある国立競技場の観客席の椅子が、5色の椅子をモザイク状に配置して、人が座っていなくても席が埋まっているように見える工夫をしていたんです。ボードゲーム棚も、ボードゲームを抜きとっても、ゲームとゲームのほんの小さな隙間でも空白感が出ないようにしたいと思い、お二人に考えを伝え、ぴったりな柄の壁紙を選んでいただきました。

阿相:理想的な柄は海外製のもので、かなり高額なものだったんですが、ここは妥協せずにいこうということになりました。ほとんどがゲームで隠れることになり、隙間しか見えないことになるので、ほんとうに贅沢な壁紙の使い方ですよね(笑)。


ボードゲーム棚の壁紙は、モザイク調のカラフルなデザインのものを採用。


ゲームを並べている途中。

あだち:全然贅沢じゃない(笑)!壁紙の模様のおかげで、ゲームの隙間から見える壁も、間が埋まっていい感じになったよね。本当にこれはやってよかった!

「ボードゲームを何個置ける?とあだち先生に聞かれて、実際にパッケージを測って数えていくしかない!と、測ってサイズを導いていきました」(阿相)


具体的にゲームの箱のサイズを測って計算すると、約600個並べられることが分かった。

太陽:ゲームを並べるのも一苦労で、ただ適当に並べたらよいものではない。

あだち:そうそう・・・意気揚々と自分でゲームを並べたけども、実際に並べてみると、好きなゲームや思い出バイアスが掛かって・・・見た目が可愛いゲームとか色味が黄色ばかりだったり……私の主観が強すぎる!フラットな感覚が必要だってなった(笑)。


太陽:無数のゲームをどう並べていくか、パッケージの色合いのバランスを決定するのを、プロのアートディレクター鈴木友唯さんに加わっていただきました。しっかり調整を重ねて、ゲームへの照明の当て方(建物内の照明も)も、プロのライトマン竹本勝幸さんに入っていただきました。このゲーム棚は、まじでクリエイティブですよね。

全体の色味のバランスをみて、パッケージの配置を調整していく鈴木さん
室内全体の照明を調整していく竹本さん
皆の力が合わさって唯一無二のゲーム棚が完成!

建物があってこそ、GAW独自の体験プログラムが生まれた

          
 
阿相:いろんな部分の設計が具体化していく中で、GAWのプログラムは、入り口から建物の中を一筆書きで進んで、バックヤードに出ていくような動線だということが見えてきたんですよね。
 
太陽:入り口で気持ちを切り替え、集中してボードゲームをして、そのあとバックヤードに出てチルタイム。そんな建物内の動線が見えてくることで、参加者にGAWでどんな体験をしてもらうかという、プログラムの概要も決まっていきました。収容人数も、大きな部屋で同時に最大30人という風に具体的になっていった。ボードゲームを企業研修でも活用するなら、それぞれが細かい部屋に分かれることはなく、ひとつの大きな部屋が必要であるとも気づいてきました。

鈴木:体験の流れを意識するという点では、はじめは、ボードゲーム会場に入る前に、手を洗って、気持ちを整えるお清め室みたいな前室を作ろうとしていたよね。
 
あだち:そうそう、宮沢賢治の『注文の多い料理店』みたいにしたいって私がずっと言って。入り口の細長い建物で手を洗って、上着を脱いで、荷物も置いて進むと、ボードゲームで遊ぶための部屋にたどり着くイメージ。打ち合わせを始めた時期は、まだコロナ禍で、手洗いスペースの重要性もすごく高かったんだよね。

 

当初の計画にあった別棟での手洗いスペース

阿相:そんな感じでプロジェクトがスタートして1年くらいたった頃かな。ようやく建物全体の予算をとれる段階まできたところで、建築費の高騰が起きたんですよね。

太陽:当初の予算の1.5倍で……。建築に関わるやりとりは、全て楽しい思い出ですが、この時ばかりは、シンプルにへこみました。

鈴木:それで、『注文の多い料理店』前室を諦めたんですよね。建物の大きさも、かなりシェイプアップしていった。打ち合わせの最初の頃から、ボードゲームを始める前に気持ちを整える、お清め的な意味合いで手洗いスペースを作ったらよさそう!とずっと思っていたから、じつは、なかなか諦め切れなくて。


当初考えていた、洗面台。神社の手水舎のようなイメージ。

あだち:ただ、コロナも収束していって、入口からすぐのところに手洗いスペースを設ける必要性も低くなっていったし、「手洗い場にこだわらず、同じお清めスペースでもデジタルデトックスをテーマにしたらどうだろう?」というアイディアを思いついて、入り口はゲームに集中するためにお客さんのスマホを封じ込めるケースとして、方向転換することにしたんだよね。

太陽:阿相さんと鈴木さんが、過去のアイデアにとらわれずに、今できる最善プランを考えてくれたからこそ、進むことができました。「デジタルデトックス」ということで、携帯を封じ込めるディスプレイもオリジナルでデザインしてくれて。そんなふうに、他のどこにもない、GAWらしさがどんどんかたちになっていったからこそ、ここでしか体験できないプログラムも組み立てることができた。建物が導いてくれたことってすごく多かったなって、今、改めて思いました。

完成したデジタルガジェットケース


最終的にまとまった図面

あだち:完全にそうだよね。GAWでボードゲームをするということは決まっていたけれど、「土地買ったよ〜」だけで走り出したからね(笑)。

阿相:僕たちは、図面を描いて「あなたの家はこういうふうになります」という建築の方法をぜんぜんしていなくて、どちらかというと、図面をもとに、みんなで描き加えていくような進め方をしていて。あだち先生と太陽くんは、思いやアイディアが本当にたくさん出てきて、みんなでどんどん図面をアップデートしていくことができた。ほんと、みんなでつくった建物だなって感じています。

基礎工事が始まったころ
工期中、阿相さんも鈴木さんも何度も現場を訪れた。

GAWの建築プロジェクトは、壮大な協力ゲーム


 
太陽:そういえば、もう少しで着工というところで、原村での着工の許可がなかなか下りないという問題も起きましたよね。
 
あだち:許可が降りなかったので工期が数ヶ月遅れて……。前例のない施設だから、村の方々への説明がすごく難しかった。ボードゲームをする場所と伝えると「娯楽施設?」とか「雀荘?」と思われてしまって(笑)。
 
鈴木:図面を見たら建物は黒いし、窓も少ないし、一見、中で何が行われているか分からないし……。まぁ、怪しいですよね(笑)。
 
太陽:あまりにも「怪しい」と言われるので、少しでもその印象を払拭するために、正面に窓でもあれば怪しさが減るのではないかということで、妥協案として、入り口の上に、小さな窓をつけることにしたんですよね。


予定にはなかった正面の窓。


太陽:思わぬ理由で正面に窓ができたので、せっかくであればそこにGAWのロゴを貼ったらよいのではないかということでロゴを貼り、結果的にすごくいい感じになりました。怪我の功名というやつですね。

予定にはなかったGAWロゴが入った四角い窓

鈴木:あと、ボードゲーム会場を、1棟型の広い部屋にしたので、耐震性の観点から天井の梁が大きくなって、部屋に入った時に予想以上に梁が視界に入ってくるということも起きましたね。
 
あだち:ボードゲーム棚だけ、バーン!と見せたかったのに、梁がこんなに見えちゃうの〜(泣)って。あの時は実はかなり動揺してしまった……。建築素人の私には、梁のこととか1ミリも考えてなかったから(笑)。
 
阿相:二層目の梁がうまく隠れるように、ボードゲーム棚の角度を現場で調整しましたね。


天井の梁を隠すには、ボードゲーム棚の角度をどのくらいにすべきか、阿相さんが検討中。

あだち:この目に見える調整もありがたかった。しきりに「ゲームがディスプレイされたら梁はそんなに気にならなくなると思うよ」とずっと優しく声を掛けてくれてて・・・実際にゲームが棚に飾られたら全く気にならなくなりました(笑)。こうして振り返ってみると、このプロジェクトはこの4人だからこそ実現できたんだなぁって改めて感じます(涙)。
 
阿相:常に、それぞれの個性がうまく出た打ち合わせができていたと思います。僕はけっこう慎重派だけど、鈴木さんは正反対。打ち合わせで方向性がブラッシュアップされると、鈴木さんが「ということは、こんな感じですかね」って模型をバキっと大胆に取り払って、イメージを共有してくれたり(笑)。
 
鈴木:よく模型を切り刻んでましたね。
 
太陽:僕も自邸を建てたことがあるので、建物の打ち合わせ自体は経験があるのですが、このGAWの打ち合わせはいつも特別なライブ感があったなぁって思います。それはひとえに前例がない建物だから。前例のないものを形にするんだったら、やっぱり熱のあるやりとりが必要だし、1回ですべてが決まるわけではなくて、何度も何度も、そういう濃い打ち合わせが必要なんだって実感しました。
 
最初から、このプロジェクトは一筋縄ではいかないというか、ロングランになると思っていたので、それを共有しながら全員で「大変そうだぞ〜」と覚悟して取りかかれたこともよかった気がしています。阿相さん、鈴木さんのお二人じゃなかったら、このプロジェクトは途中で頓挫しちゃってる可能性、全然あります。
 
あだち:達成したいゴールイメージがあるが、スケジュールや予算という現実的な問題も沢山あって、そこに向かってみんなでアイディアを出し合ってクリアしていく。そして、当初思ったようにはうまくいかないことが、結果的にはよかったと感じたりと、どう転ぶかわからない。この建築プロジェクトは、4人のプレーヤーで壮大な協力ゲームをした感じがします。2年間かけた、楽しいゲームでした(笑)。


鈴木:
僕は建物の裏側、芝生の上から建物を見た時の景色が好きなんですよね。

バックヤードから見えるGAWの後ろ姿。

あだち:え?そこ???後ろ?(笑)
 
太陽:あ〜!分かります!かっこいいですよね。
 
鈴木:その景色って、みんなで練り込んだ一連のオペレーションがあって最後にたどり着く景色なんですよね。
 
あだち:阿相くんも、改めて好きなポイントとかありますか?
 
阿相:部屋ごとに空間の体験が変わることかな。ボードゲーム会場に入る前に携帯を預ける部屋って、壁も黒で塗っていて本当に真っ暗なんですよね。ピンスポットでシュッと手元に光があたるような照明だけつけていて。そんな真っ暗い狭めの空間から、自然光がたっぷり入る天井の高いボードゲーム空間に入って、その後は空が広がるさらに開放的なバックヤードに出る。

ボードゲームだけじゃなくて、そういった空間ごとに変わる感覚も楽しんでいただけたらと思います。言葉ではなかなかうまく伝えられないな。

太陽:現地で空間をまるごと楽しむものなので、言葉にしにくいところがありますよね。とにかくGAWに来て体感してほしい!

だんだんと成長していく植物とともに、外観も変化していく。

鈴木:GAWって、これからもどんどん変化していくと思うんです。あだち先生の司会進行の仕方とか、細かいところでいえばプロジェクターの使い方とか、照明とか音響とか。外の植物の育ち方なども。空間の使い方の幅が広がって、より濃度の濃い体験がここで生まれるんじゃないかなって。
 
あだち:これから、この空間できっといろんなドラマがうまれると思うんです。もちろん単純にゲームをやることで楽しい場面がたくさん見れると思いますが、この場所でコミュニケーションを深くとることによって、喜怒哀楽、さまざまな人間模様が見れる気がします。その時に、お客さんの人生の思い出に残るような場所になれたらいいなと思います。
 
太陽:人生の思い出というと、僕にとってはこの建築計画自体が思い出のひとつですね。自分の家を建てるという経験はあったけれど、住むという目的ではなく、最高のボードゲーム体験を提供するためのものという前例のない建物をつくるというこの経験は僕にとって、本当に楽しい思い出。建物や場所をつくることって、最高にクリエイティブなことだなと思いました。今日は改めてお二人と振り返ることができて嬉しかったです。
 
あだち:ほんとに。ありがとうございました。
 
阿相さん、鈴木さん:これからもGAWを応援しています!

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