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Institute of Gaudiologyの始まり

こんにちは。山村健(やまむらたけし)です。2021年に「一般社団法人ガウディ学研究所」を立ち上げました。初回はそのミッションについての話を書きたいと思います。ガウディ学研究所では、三つのミッションを掲げています。

1、ガウディ研究の基礎となる資料のアーカイブズ

2、ガウディ研究を端緒として、これからの建築を考える

3、ガウディ研究者のプラットフォーム



1.ガウディ研究資料のアーカイブズ収集

これまで発刊されたガウディ書籍、研究論文、写真などを中心としてアーカイブズします。現在は入江正之アーカイブズを所有しています。入江正之が1977年の王立ガウディ講座にて収集した資料を基礎として、それ以降に収集したものや、早稲田大学時代に書かれたガウディ関係の論文などがあります。


研究の質は資料の質に比例するといえます。どのような資料を用いて、いかに新しい知見を獲得できるかです。ガウディは1926年に亡くなりました。その後、多くの研究者がガウディについて様々に論じています。日本人では、入江正之、鳥居徳敏、田中裕也らが学位取得者の研究者であり、松倉保夫などは物理学者でありながらガウディ研究に勤しんだ研究者もいます。バルセロナのカテドラ・ガウディ(La Real Cátedra Gaudí)にはJ・F・ラフォルス、J・B・バセゴダらが収集したガウディ資料がアーカイブズされており、現在はJ・J・ラフエルタ教授に引き継がれています。しかし、日本ではそのような研究機関がありません。日本におけるガウディ研究は、それぞれの研究者が所属する大学の研究室が母体となり、各々が資料を保管しているのが現状です。

私は早稲田大学にてガウディの研究を開始しました。日本の建築界では、今井兼次を嚆矢として早稲田大学の専門分野として認知されています。当時早稲田で活動していたときは気付きませんでしたが、その看板は意外と不自由なことに気付きました。現在は早稲田を離れ東京工芸大学で活動しています。そこで気付いたのは、研究が学閥に束縛されているのはおかしいと考えました。もちろん、ノーベル賞や特許が絡む工学・理学・医学のなどの分野は、所属が重要であると理解していますが、建築意匠や建築論のような分野で、閉じずに他分野と横断的に知見を重層させていく学問分野にとっては、誰もがアクセスが可能な研究資料プラットフォームを作りたいと考えました。それがガウディ学研究所の始まりです。



2、ガウディ研究を端緒として、これからの建築を考える

ガウディの研究を通じて、新しい創造性のある価値を発信していく。研究で獲得したヒントを具体的なカタチに落とすことを第一目標として、建築やデザインのキュレーション、展覧会の開催、書籍の出版、講演会などを行います。

本研究所に「学」がついているのは、これまではガウディ研究ばかりをしてきましたが、これからは、それらの知見を生かして新しく創造性のある価値を発信していくことです。ゆえに、ガウディを対象とした伝統的な研究の積み重ねてと併走して、ガウディが試みていたように、常に新しい建築やデザインを求めて何事にもチャレンジしていく活動を積極的に行うために、ガウディ「学」という名をつけました。

突拍子もない発想の根源にはガウディ的なものがみえてくることがあります。研究から新しいデザインがうまれてくることはほとんどありません。むしろ、実施に活動しているとデザインやカタチがでてくることで、研究の本質を発見したり、研究の難題が氷解する瞬間に出会ったりできます。それによって、従来の研究にも新しい知見の獲得が可能となります。そのために、ガウディを研究するのではなく、ガウディを学ぶことで開かれていく次世代のデザインに出会うことを、ガウディ学と名付け、積極的に新しいデザインのチャレンジに取り組んで生きたと考えています。


3、ガウディ研究者のプラットフォーム

日本に多世代のガウディ研究者や若者が気軽に集える場を。


以前はガウディ友の会(日本支部)というのがありました。早稲田大学の今井兼次研究室から池原義郎研究室へと引き継がれ、日本のガウディ研究者のプラットフォームとなっていました。ガウディ友の会はバルセロナで継続されていますが、その日本支部は解体されていました。

そこで再びガウディ研究者が集える場を設けてたいと考えて、プラットフォームとしてこの場を設けたいと考えています。ガウディに興味のある若手の研究者や、一般の方も自由に出入りできるような文化拠点です。COVID-19の影響により、現在は集うことが難しいですが、いつかそれが現実の日となることを願うばかりです。


著者 山村健(やまむらたけし)。1984年生まれ。早稲田大学にてガウディ研究の第一人者である入江正之に師事。2006-2007年はバルセロナ建築大学に留学しバセゴダ名誉教授のもとで薫陶を受ける。2012年に早稲田大学にて博士(建築学)を取得。2021年ガウディに関する研究論文にて日本建築学会奨励賞受賞。

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