おもひでぽろぽろ
入院3年目に新たな看護師がやってきた。Tという時代劇を思わせる看護師だった。この人は意地悪と言うか、能力が低いにもかかわらず自分はできますアピールをして癇に障った。その人はいつもフンフフンフ♪と鼻歌を歌っており、明るいのとウルサイのとは別ですから、残念!という心境だったし、自分は鼻歌を歌いながらでも仕事をこなせますアピールをしているようだった。
後者のような印象はあるエピソードをうけての自分の印象に過ぎない。そのエピソードを今から説明する。
僕はナースコールで看護師さんを呼んだ。T看護師が来た。そいつ(「その人」といいたかったが、書いている内に怒りが湧いてきたので、「そいつ」になった。)は腰に手を当てて「何?あん。いいよ。」と独特の鼻にかかる声で気さくで有能なお助けウーマンを気取っていた(いや、単に口のきき方を知らなかっただけだろうか。)。で、そいつは「たん?」とか何とか当てずっぽうに次々と矢継ぎ早に訊いてきた。僕は気管切開していたので首をひたすら横に振った。相手は有能さを気取りたかったろうに、肩透かしを食らい、明らかに焦り、イラついているようだった。そいつはとうとうしびれを切らして、
「たんの吸引でいい?私時間ないんだけど。」
と時間がないのに茶々を入れてきた迷惑な患者かのように僕を扱った。だいいちたんの吸引は最初に僕が首を横に振ったから何もやらなくてよい。何もしないで去る訳にもいかなかったのだろう。僕はさっさとそいつに去ってほしかったので首を縦に振って吸引を受けた。で、そいつが去ったのを見届けてからまたナースコールを鳴らした。
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