可愛くて安いファッションの大罪
NHK他、海外でも報道されていたファッションと人道の罪について
「仏司法当局 ユニクロなど4社捜査 人道に対する罪の隠匿の疑い」
ユニクロは「生産過程で人権や労働環境が適切に守られている」としていますが、第三者の調査を拒否している地域の素材を使うことの危険性がメーカーに周知されることを願います。
安いは危険
新疆綿の真偽についてはのべません。そのあたりは報道に任せます。
ただ私たちが「安いを正義」とすることの危うさをそろそろ考えるべき時です。安い製品を支えるのは主に安い労働力です。それを支える為に立場の弱い人々が犠牲になっています。立場が弱い人、というのは子供や女性です。
可愛くて安い服が、児童労働や過酷な環境で働く女性たちの手で作られたものかもしれません。正当な対価が生産者に支払われているか、公平・公正な貿易のもとに届けられているか、私たちはそれを無視して「安いから」商品を選択することを止めるべき時がきています。
考えうる解決法は、フェアトレードを推進する企業の服を買うか、中古品を買う、手作りの服を利用することです。
コットン製品のフェアトレード
公平・公正な貿易(フェアトレード)のもと、認証を受けたコットン製品を扱っている日本企業は実は多くありません。フェアトレードジャパンによればわずか15社です。大手の多くはユニクロと同じく「自社で適切な生産環境にあるかを確認している」としています。なぜ、そうするかというと「利潤の追求」のためです。
認証コットンを使用している日本企業〜わかちあいプロジェクト、ホットマン、チチカカ、フェアトレードコットンイニシアティブ、第一紡績、日本生活協同組合、シサム工房、リーラ、ライン、タスマンインターナショナル、豊通ファッションエクスプレス、福助、壺内タオル、倉敷紡績、福市
しかし、フェアトレードの認識は徐々に高まり認証生産者は世界75カ国、1240組織に広がっています。全体で166万人の労働者が守られているといいます。(フェアトレードジャパン)
独自に認証しサポートするMOCHNI
MOCHNIはファッションにおける正義・公正・尊重を支援している組織。そこでは認証企業に「ECO ALPHABET」マークを提供しています。
フェアファッション。エコファッション。倫理的なファッション。持続可能なファッション。グリーンファッション。責任あるファッション。それに対する現実について、MOCHNIのサイトは一つの回答を見せてくれます。
1.健康で安全な労働条件〜生産国の人権状況に多くの大企業は無関心。
2.公正な賃金〜衣服コストのたった3%が労働者の賃金という研究も。
3.強制労働および児童労働〜貧困の連鎖の原因。特に児童労働は教育低下、成人の失業率を上昇させる。
4.文化的保存〜職人の立場が守られ技術が継承されることが衣料産業の歴史的役割だった。
詳しくはMOCHNI「フェアファッションとはどういう意味ですか?(英語)」
marlaolivia「HowManyHands」
フェアファッションを推進する「Clean Clothes Campaign」によれば世界中で4000万〜6000万人の衣料品労働者のうち80%が女性だそうです。
写真家マーラクラインのコンセプチュアルアート「HowManyHands」は、現代ファッションが幾多の「奴隷」の手によって支えられている現状を風刺しています。フェアファッションへの意識を高めるためには共感と芸術が近道であると彼女はいっています。
生産と消費の多くを女性が担うファッション業界において、まず女性が先陣を切っているのは当たり前?むしろ企業の経営者や国家の代表の多くが男性であることが障害になり問題へのアクションを鈍化させているのでは。
ラナプラザ崩壊からもう8年
バングラデシュで起こった「ラナプラザ」の崩壊は多数の家族を悲しませました。2013年4月24日に9階建の建物が崩壊し1136人が死亡し2500人以上が負傷しました。(詳しくは2018年4月30日の記事Fashionsnap.com「ファッション史上最悪の事故」がおすすめ)
労働者が安全な環境で働けることは当然の権利。持続可能で安全な労働環境が叫ばれるきっかけになった事件です。途上国の衣服生産労働者が過酷な労働環境にさらされていることが明らかになり、それらを利用している大手ブランドの責任も叫ばれるようになりました。
2021年にはドイツで「サプライチェーン法」によってバリューチェーンの被害者が企業に法定責任を負わせる道筋が示されたことは画期的です。不十分ではありつつも変化は少しずつ始まっています。
(ドイツのサプライチェーン法について、日本貿易振興機構ジェトロより)
具体的には、人権デュー・デリジェンスでは、以下の実施が求められる。
リスク管理体制の確立(社内の監督責任の明確化、経営者への年1回以上の定期報告など)
定期的なリスク分析の実施(自社と直接取引先のリスクの洗い出し・優先順位付けの年1回以上の実施、迂回的な取引が行われた場合は間接取引先を直接取引先とみなす)
「人権戦略」に関する方針書の採択(義務履行のための手順、上記2.で特定した優先的リスクへの対処方針)
自社と直接取引先における予防措置の実施(契約上の担保、直接取引先の訓練と順守状況のチェック)
人権の侵害または恐れの是正措置(直接取引先の場合は是正措置計画の策定・実施、取引関係の見直し)
苦情処理手続きの確立(内部の告発・外部からの通報手続きと告発者保護、苦情処理に係る情報開示)
間接取引先による人権・環境の侵害リスクへの対処(苦情処理手続きの確立、苦情申し立てがあった場合のデュー・デリジェンス実施)
「人権デューデリジェンス」とは、企業が原材料調達・生産/製造・輸送・販売・廃棄、あるいはビッグデータ使用など事業活動をする中で、社内はもとよりそのサプライチェーン(供給網)、バリューチェーン上の強制労働やハラスメント、差別などの人権リスクを「特定」し、それを「軽減したり予防したりする」、そして「救済する」措置を取ることです。また、その取り組み内容と結果の「情報開示」も含まれます。(BUSINESS INSIDERの記事で、NGOヒューマンライツ・ナウ事務局次長 佐藤暁子弁護士による )
ただ、生産者の人権と環境に配慮する視点が企業だけでなく消費者側にも芽生えてくることを願っています。
※トップ画像は「HowManyHands」をイメージして作成。
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