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玉姫様乱心

わらわの名は玉姫である。皆のものは玉姫様と呼ぶように。

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わらわはやんごとない生まれであるが(のはずだが)、野良であった時にとある交通量の多いところで保護され、この貧乏くさいウサギ小屋のような狭い館に連れてこられたのじゃ。
保護された時には、身ごもっておってのう、間も無く文字通り玉のようなお子を5匹産んだのじゃ。その子らはすくすく育って、乳離れし、皆里親とかが決まったらしいわ。

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なのにじゃ、気がつくとまた子が増えておるのじゃ。わらわのお子は皆黒かったはずじゃがのう、茶色かったり、白混じりじゃったり、シマがあったり・・・。おかしいのう。どうやらこの貧乏くさい館のあるじがこっそりわらわに乳飲み子を次々使わしておるようじゃった。
当然、わらわは慈愛に溢れた高貴な心の持ち主であるがゆえ、育て上げたぞよ、自分のお子を含めるとその数20匹以上にはなったかのう。

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その後もどんどん乳飲み子が来るのでのう、ダンボールに入れられておるのを直接くわえてもっと安全なところで育ててやろうと企てたのであるが、それは阻止されてしもうた。こんなダンボールより、カーテンの陰の方が安全かと思うたんじゃがのう。

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館のあるじが治療と称して子猫をいじめておるように見えた時は、敢然と立ち向かったぞよ。知らぬ子ではあったが泣き叫んでおったからのう、館のあるじは困惑した顔であったが、わらわはお子達のためなら身を呈して戦うぞよ。

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一時期は乳を吸われすぎて、げっそりやつれてしもうた時もあったが、今はもう乳を吸う子もおらんのでな、ほれ、ツヤツヤした、まさに玉のような体型になってしもうたわ。(誰ぞは「こたつみたい」などと失礼千万なことを申すが不敬罪で牢屋行きじゃ!)
これぞ、わらわの名である、「玉姫」にふさわしいぞよ。

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いつも、厨房に待機しておれば、しょっちゅう離乳食やらミルクのついた食器があるゆえ、それをじゃな、舐めて綺麗にしてやっておるのじゃ。

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高貴な身分ゆえ、あまり人という生き物に触られることは好まぬが、たまに頭やお腹を撫でてもらうのは、まあ、あれじゃ、そこそこ気持ち良いのう。
ほっほっほ。

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そろそろこの狭い館からもっとマシなところへ引越ししたいのう。どこかわらわを迎えてくれる屋敷あらば、たまにはこの高貴な体、触らせてやっても構わぬぞよ。
ほっほっほ、ほーっほっほ、ほーっほっほっほ。

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