プロレス超人列伝第10回 「クリスチャン」
プロレスの世界には確かなキャリアを持ち、人望もあるが決して報われない人間もいる。
今回紹介するクリスチャンはそんな一人である。
1974年、カナダで生まれたクリスチャンは親友であり幼馴染であったエッジに触発され1995年にプロレスデビューをして、1998年にはWWEの入団テストを受ける。
その際に試験官をしたのはあのファンクスの一人であったドリー・ファンク・ジュニアである。
当時はファンクスはまだWWEと仲がよく多くの興行で顔を見せていた。
見事に合格したクリスチャンはエッジの弟というギミックでWWFに入団をすることになった。
その後、当時ヒール軍団「ミニストリーオブダークネス」の一員である吸血鬼コンビ「ブルード」の一員として加わるのであった。
やがて、ミニストリーから追放されてしまった彼らは単独のチームで行動をすることとなった。
やがて、90年代から00年代に時が移り2000年になる。
その頃にはハーディーボーイズやダッドリーボーイズなどと名試合を量産しWWFの黄金時代を築き上げていくのであった。
ファンから「バカナダ兄弟」と称される失笑気味のコントを多く行い、日本人ユニットのカイエンタイとも絡みをみせることになっていった。
その後、長い間続いたエッジとのコンビは解消になり、これ以降は単独のヒールとして紆余曲折のキャリアを構築していくのであった。
このころには団体名もWWFからWWEに代わっていった。
しかし、彼のキャリアはイマイチ伸び悩んでいた・・・。
元相棒であり親友であるエッジが番組の代表的なヒールになる一方彼は常に噛ませ犬・笑われ者のヒールの地位で甘んじていたのだ。
そんな彼もWWEを2005年に去り、TNAに活動をうつすのであった。
WWEでの彼はどこへいったのか、TNAではほとんど主人公的な扱いを受けることになるのであった。
当時NWA世界ヘビー級王座を保持していたTNAはチャンピオンベルトを保持していたジェフ・ジャレットの挑戦者としてクリスチャンを選んだのであった。
NWA世界ヘビー級王座といえば、団体を変えながらも多くのスター選手が巻いたことのある歴史のあるベルトで当時のTNAでも最高級のベルトであった。
そして、2006年とうとうその時がおきる。
彼はNWA世界ヘビー級王座ベルトを獲得することとなった。
観客は大歓声をして新時代のヒーローとしてクリスチャンを歓迎した。
その後、3年間ほどTNAの主人公として善玉悪玉を転向させながらキャリアを構築していったのであった。
しかし、2008年彼はTNAとの契約に応じず去っていった。
多くのレスラーがそうであるように彼も所属する団体を変えていったのだ。
そして、2009年WWEが旗揚げしていた新ECWのメインイベンターとして君臨することとなったのであった。
しかし、そのECWも2010年には打ち切りになってしまった。
とことん運がない男クリスチャン…。
その後、スマックダウン所属になったクリスチャンは世界ヘビー級王座を獲得することなった。
・・・・しかし、ここでも彼の不運はとまらなかった。
何と王座獲得からたった5日後、ランディ・オートンにベルトを奪われてしまうのであった。
この扱いはある意味ビンス・マクマホンのTNAへの仕打ちなのだろうといわれている。
しかし、そんな負け役でも甘んじて受け入れ全力を尽くすのがこのクリスチャンの凄いところである。
この後、オートンとクリスチャンは多くの名試合を産みファンからもやはりクリスチャンは凄いと改めてリスペクトされるようになった。
だが、今思えばWWEに戻ってきた彼のキャリアがよかったのはここまでであり…これ以降、彼の扱いは徐々に悪くなり負け役を多く任せられるようになっていくのであった。
そして、2014年彼は突然引退を発表する。
原因は相次ぐ脳震盪が原因であるとも言われているが…どうだろう。
今考えればこれもアングルの一つだったのか、噂されていたTNAとWWEの裁判対策の一環であったのか定かではないが…今でもちょくちょく番組に顔を出してはいるがフルで活躍することはほとんどなくなっていっている。
まだ年齢も47歳、プロレスラーとしてはこれからなのに勿体ない限りである。
ここまで書くと彼が才能がないようにみえるが、そんなことはない。
彼自身にしかないファイトスタイルと独自のハードバンプが魅力な印象的な存在である。
しかし、WWEでの彼は常に誰かの噛ませ犬でしかなかったのだ。
一説にはビンス・マクマホンがクリスチャンをかなり嫌っているからだともいわれている。
だとしたらビンスも狭い器の持ち主だと呆れるばかりである。
ビンス以外のほとんどはあらゆる選手もファンも彼の才能と実力を認めておりヒールなのに声援が起きてしまっていることもあった。
彼こそAEWにふさわしい人材もいないのではないか、今こそもう一度彼をプッシュしてあげてほしいそんな風に思ってみたりもする。
余談であるが…彼の入場曲はどれもカッコいいのだ。
TNA時代に至ってはなんとあのエヴァネッセンスの曲が使用されていたぐらいである。
今一度彼にチャンスをあげてほしい、心の奥底からそう思うばかりだ。
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