アンダーテイカーが嫌ったレスラーたち
長い間WWEの良心といわれ、内外で慕われていたアンダーテイカー。
そんな彼でも嫌いなレスラーはいたようである。
今回はそんな彼が嫌ったレスラーとアンダーテイカーにまつわる様々なエピソードを振り返っていきたい。
①ショーン・オヘア
ショーン・オヘアはかつてWCWにいた2000年デビューの若きレスラーであった。
端正なルックス、身長190㎝超えの長身、そして高い運動神経などから業界の未来ともいわれていたほどの逸材であった。
しかし、WCWは長く続くことはなく以降はWCWを吸収合併したWWF(今のWWE)に吸い上げられることになった。
だが、彼の前に大きな障害が立ちはだかったアンダーテイカーである。
テイカーは控室でブラブラとあたりを歩いていたショーン・オヘアをみて「なぜあいつは俺に挨拶をしてこねぇんだ!!」とブチギレてしまった。
00年代当時バックステージのボスであったテイカーを恐れた上層部はオヘアをしばらく干す流れに踏み込んでしまった。
その後、2003年にはギミックを変えるものの・・・うまくいかず2004年にあえなく解雇されてしまった。
オヘアはその後、職を転々としながら2014年に43歳の若さで自殺をしてしまった。
様々な美談の多いアンダーテイカーだが、これは数少ない汚点の一つとして有名な話である。
しかし、元々素行に問題があった彼が解雇されたのはアンダーテイカーとの案件が問題ではなかったともいわれている。
②グレートカリ
インドから来た超大型選手として00‐10年代に活躍したグレートカリ。
しかし、彼は実のところ厄介ものであった。
まず試合があまりできなかった。
というのも、216cm 156kgという巨体をうまく生かす相手がほとんどいなかったのだ。
そんな中、アンダーテイカーは彼のデビュー戦でも負け役を打って出ることになった。
戦える選手がアンダーテイカーしかいなかったのだ。
控室でその話を聞いたアンダーテイカーはため息をつき、肩を落としたといわれている。
他のレスラーが「お気の毒に…」というとためいきをつきながらもアンダーテイカーはこういった。
「これも俺の仕事だよ。」
テイカーはすすんでカリの負け役を担った。
これに感謝したカリは今でもアンダーテイカーのことをたたえており、WWEから去った今でも自分が立ち上げた団体でアンダーテイカーの写真を張っておりかなり尊敬していることがうかがえる。
テイカーも決して彼を邪見にせず良き友人になったそうである。
③メリーナ
2000年代に活躍したディーヴァの一人メリーナはバックステージで多くの問題を起こすトラブルメーカーであったブッカーTの奥さんだったシャメールと喧嘩を起こしたり、他のディーヴァと付き合いが悪かった。
彼女の狼藉を知ったレスラーたちは「プロレス裁判」を起こした。
このプロレス裁判は当時まだ荒くれ物が多かったプロレス業界で秩序を保つために行われていた「裁判ごっこ」であった。
そこで裁判長を引き受けたのはアンダーテイカーであった、仲間にビールをおごることなど笑える刑で許されることが多かったが、この場合はかなり異常であった。
アンダーテイカーも彼女には内心かなりキレていたそうである。
メリーナは泣きわめきながら許しをこい、周囲のレスラーたちは「あいつがどれだけ泣くか」と賭けていたそうだ。
メリーナがどのようなめにあったかは定かではないが、この後しばらく彼女は干される事になってしまった。
恐らくアンダーテイカーの課した刑は相当だったのだろう。
やがて、2011年に彼女はWWEを解雇されてしまった。
解雇される前後はほとんどセミリタイアか飼い殺しに近い状態であった。
④ヴィセラ
90年代ー00年代にかけて活躍していたヴィセラは日本ではビッグダディという名前で有名な220㎏の超巨漢レスラーである。
アンダーテイカーの初期のキャリアのライバルであったことでも有名である。
その時、キング・メイブルという名前で活躍していたヴィセラはギロチンドロップをアンダーテイカーの顔にかけ鼻の骨を折ってしまった。
この結果、アンダーテイカーはオペラ座の怪人のような仮面をつけるキャラクターになってしまった。
ヴィセラはこの結果、プッシュを外されてしまう憂き目にあってしまうのであった。
それ以降、テイカーとヴィセラは冷戦状態であった。
しかし90年代末期ミニストリーオブダークネスというユニットで同じ釜の飯を食うことになり和解をしたといわれている。
ヴィセラ自身はこの体格が原因で2014年に43歳の若さでこの世をさってしまうのであった。
⑤CMパンク
10年代にかけて善悪の枠を超えて大人気になったアイコンであるCMパンク。
実はテイカーとの間でもバチバチがあったといわれている。
以前欧州ツアーに参加した際に、当時世界王座の一つであった世界ヘビー級王座のベルトを保持していたCMパンクがスーツを着てこずにカジュアルな服装のままでいたことに礼儀と伝統を重んじるテイカーはかなり嫌悪感を感じた。
鼻っ柱の強いパンクは注意したアンダーテイカーに言い返し、これがきっかけで世界ヘビー級王座をアンダーテイカーに奪われてしまった。
世界王座を獲得するというのはWWEにおいて、主役を譲るということに相当する。
ところが、自身のカリスマ性をいかんなく発揮したパンクはアンダーテイカーともやがて打ち解けるようになりお互いに冗談を言い合う仲に落ち着いた。
これについてパンクは実はアンダーテイカーの責任ではなく当時経営側にいた何者かがアンダーテイカーをけしかけたのではないかとみている。
⑥ダイヤモンド・ダラス・ペイジ
WCWの大スターであったダイヤモンド・ダラス・ペイジはWCWの他のスターたちと同様に、WWFに団体ごと買収されてしまいWWF所属になってしまった。
マンデーナイトウォーのころから団体の看板であり続けたテイカーにとってWCWは憎い天敵であり続けていた。
そんな彼にとって、WCWからきたDDPは自分の土足に天敵が入り込んできたようなものだったのだ。
WWFのフロントがDDPに用意したのはアンダーテイカーの妻のストーカーという実に不名誉なキャラクターであった。
DDPは対戦相手をよく観察して研究するところがあり、テイカーはそこも気に入らなかったそうだ。
結果的にDDPとアンダーテイカーはうまく混ざり合うことができずにいた。
しかし、現在その関係は徐々によくなっておりドキュメンタリー「ジェイク・ロバーツの復活」をみて感動したアンダーテイカーが話しかけてきたことがあったらしく今では修復をしていると思われる。
⑦マイク・アッサム
日本ではザ・グラジエーターというリングネームで有名だったマイク・アッサムはECWを捨て、WCWにやってきた野心家であった。
しかし、彼がWCWに入った同じころにWCWはWWFに買収されてしまった。
彼も他のWCWレスラー同様に、WWFにやってきた。
ところが、そこで彼の運命は大きく狂ってしまうことになる。
身長200㎝体重130㎏あるマイクはアンダーテイカーにとって何から何まで自分と同じ存在にみえ、非常に嫌悪した。
アンダーテイカーはマイクを干すように運営に働きかけ、マイクはそのすぐ後にWWFの1軍の番組から二軍落ちをして、やがて解雇されてしまった。
そこから彼の人生は徐々に狂い始め、最終的には2007年娘を残して自殺をしてしまう…という悲しい結末で終わったしまった。
彼はのちに「WWFではろくな目に合わなかった、常に戦略的に政治的に動くのは嫌だった」と懐古している。
まとめ
このようにリングの中だけではなくその外でもドラマが繰り広げられているのがWWEの魅力でもある。
嫌ったと書いたが、心の奥底から嫌っているのはせいぜいショーン・オヘアぐらいであとはそこまででもないのが実情である。
残念ながら今年引退してしまったアンダーテイカーだが、今後どうなっていくのか…。
果たして本当に引退するのか。
それは誰もわからないのである。
(追記)
とかいたが、よくよく考えれば彼が嫌っているのはWCWである。
90年代からWWF/WWEを守っていたテイカーにとっては外敵にみえたのだろう。
哀しいことに彼は自他ともに認めるWWEの守護神であり続けてしまったのだ。
かくいう彼も若きころにWCWにいた頃があったが、その頃に何かひどいトラウマを受けていたのかもしれない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?