ブンデス2節 バイエルンvsケルン

智将 対 奇将

バイエルンの監督ナーゲルスマンがラップトップ監督の最先端を行く智将なら、ケルンのバウムガルト監督はその個性的なキャラクターが全面に出る奇将だろう。試合中は終始中腰でピッチの選手たちに熱く声をかけ続ける。トレードマークのハンチング帽もあいまって一度見たら忘れられない監督だ。チームの戦い方もまさにそのキャラクター通りといった形だ。4−1−3−2の配置から積極的に相手のビルドアップ隊を捕まえにいき、高い位置でうばってゴールを目指す。ただ攻撃の際はサイドチェンジなど幅を使った攻撃で相手をゆさぶるうまさもある。

バイエルンはこの日も左SBデイビスを高い位置に上げ、4−2−3−1から3−2ー−4−1の可変を採用していた。これがケルンのプレスにばっちりハマってしまった。ケルンはトップ下リュビチッチと2トップの3枚が前に出る。その後ろのIH2枚がバイエルンのボランチコンビをつかみにいく。こうすることでバイエルンの逃げ場はサイドしかなくなるが、そこにはケルンのSBが猛然と出ていく。ボールの出どころを完全にふさがれた形のバイエルンは前半はほとんど良い形を作らせてもらえなかった。

後半ナーゲルスマンは次のような修正を施していたと思う。前半はばっちり掴まれていた3−2のビルドアップ隊を2−1に減らす。具体的には右SBをスタニシッチに変更してより高い位置をとらせる、ボランチのゴレツカを一列上げ右のHSでケルンのアンカー脇に立たせる、という変更である。そうすることで相手も味方も人数が少なくなり、ボランチの脇やサイドの低い位置にスペースが空く。そのスペースにスタニシッチやゴレツカ、ミュラーがかわるがわる顔を出すことでビルドアップの出口となっていた。とくにミュラーとゴレツカがアンカーの両脇を常に狙っていることでケルンの守備はかなりの迷いが出たと思う。実際にこのスペースをうまくつかわれ2失点してしまった。

それでもここで終わらないのがバウムガルトのケルン。プレスからボールを奪ってサイドに展開し、クロスから2得点。バイエルンに2点先行されながらまたたくまに追いついたのは見事だった。とはいえバイエルンの守備対応のゆるさも気になった。自陣で奪われているのに中盤の選手の戻りが遅く、選手同士のすきまが空いたままクロス対応をしていた。3点目も狙い通りの形でとり、無事勝利することはできていたが、9連覇中の国内リーグで余裕が油断に変わっているのではないかという気がした。

一方ケルンはとても魅力的なチーム。第1節では観客がバウムガルト監督の真似をしている姿が映像で抜かれていたが、それくらいこの監督は人を惹きつけるものがある。戦術的な修正を施すような柔軟性は無いのかもしれないが、その一本木な姿勢がかえって未知のパワーとなって今後ブンデスリーガの台風の目になるかもしれない。

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