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【後編】「大学の授業、どうしてる?」聴覚障害学生が大学の授業で困ること

前編に引き続き、Collableのインターンシップ生として活動しているかりえさん・かのんさんによる、聴覚障害学生の大学についての対談をお届けします。
前回の記事をご覧になっていない方はこちらもご覧ください。

前編はグループでのディスカッションが大変だという話でしたが、後編ではそのような困りごとに対する補助機器や、合理的配慮の話があがりました。


情報を補う補助機器の使い方

文字起こしアプリは何をつかう?

かのん:かりえちゃんは、私が今使ってるUDトークみたいな文字起こしアプリはあんまり使わない?

かりえ:あー、使う時と使わない時があるかな。大学1、2年生の時に、UDトーク(*1)を使ってみたけど、あんまり活用できなかった。

かのん:そうなの?

かりえ:周りの音を拾っちゃうのが気になってたかな。あと、ちょっと文字を起こすのが遅いっていうのがあって、あまり使ってなかった。

かのん:なるほど。そもそも、一台の端末で全員分の声を拾う使い方は、UDトークでは想定されてなかったらしいね。今はマイクモードを「遠くの声」にすると、そういう使い方ができるようになってて、私もそれを使ってる。

かりえちゃんは、今はたまにUDトーク使ってるって感じ?

かりえ:私は「YY文字起こし(*2)」を使ってる!文字を起こすのが早くて使いやすいよ。

かのん:初めて聞いた。今ダウンロードするね(笑)

UDトークの使用画面。中央下にマイクのアイコンがあり、タップして話すと「私は今ユーディートークを使っています。すぐに反応してとても使いやすいです。」という文字がチャットのように表示される。使う状況に合わせたマイクモードや、英語などのカスタマイズもできる。

(*1)UDトーク:Shamrock Records株式会社が提供している高精度の音声認識アプリケーション。
公式サイト:https://udtalk.jp  
Apple Storeはこちら

(*2)YY文字起こし:株式会社アイシンが運営する高精度の音声認識アプリケーション。
公式サイト:https://yysystem.com/product/yytranscription
Apple Storeはこちら

授業に欠かせない「ロジャー」

かのん:私の場合は、学校でロジャー(*3)を使ってて。授業では毎回先生にロジャーを首にかけてもらう

先生たちには、学期が始まるまでに大学の障害者支援室から対応の依頼を届けてもらってんだよね。だから、授業担当の先生は障害のある学生がいることを知っている状態で、最初の授業でロジャーを渡す時に「私です」って挨拶に行く感じ。

かりえ:うんうん。

かのん:ディスカッションの時は、ハンドマイク型のロジャーを使ってる。教室全体で意見を共有するみたいな場合だと、ロジャーのマイクが2本しかないから、みんなに回してもらったりしなきゃいけなくて。だんだんスムーズにマイクが回るようにはなるんだけど、やっぱり手間をかけてしまうし、毎回申し訳なく感じる。

かりえ:うんうん。その、事前にメッセージを送るっていうのは、支援室がやってくれてるんだ。

かのん:そう、支援室で私の障害とか配慮事項をまとめた文書のテンプレートを作ってくれていて、支援室に「履修登録が決まりました。この授業です」って送ったら、その授業の先生にメールで送ってくれている。それで先生が対応してくれている感じ。

かりえ:わあ、テンプレート作ってくれてるんだ。いいね。

(*3)ロジャー:フォナックより発売されている、話し手が使用する「送信機(ワイヤレスマイクロホン)」と、聞き手が使用する「受信機」で構成されるシステム。公式サイト→https://www.phonak.com/jp/ja/補聴器/アクセサリー/ロジャー.html

TOEICを受けるならIP受験

かのん:ちなみにさ、TOEICとかって受けた?

かりえ:オンラインのTOEICは受けた!パソコンで受けるやつ。対面の会場は配慮が必要だから受けたことない

かのん:そうなんだ!オンラインのTOEICって、普通のTOEICと成績の扱いは変わらない?

かりえ:うん、変わらない扱いではある。まあ、使う場所によるかも。企業とかによってはオンラインだとダメっていうところもあるけど…

かのん:へ〜、そうなんだ。私はTOEICを学校の団体受験で受けようかなって思ったんだけど、対面のリスニングだとやっぱり「ロジャーをつないでほしい」とかいろいろ出てくるから…確かにオンラインもアリだね

かりえ:オンラインのはIP受験って言うんだけど。

かのん:IP受験?

かりえ:そう。TOEIC IPって言うんだけど、大学で無料提供とかない?

かのん:聞いたことない。

かりえ:本当?でもオンラインのIP受験だったら確実に補聴器とかロジャーが使えるじゃん、パソコンにつないで。だから絶対そっちのほうがいいよ。

かのん:えー!私が知ってるのは、生協で提供してる、校内でオフラインで受けるやつだけだ。今度調べてみよう。

かりえ:オフラインだと配慮が必要だからね

今感じている授業での問題点

かりえ:ディスカッションがやっぱり1番問題な気がする。補聴器だけでは限界があるとなるとやっぱり他の補助機器が必要だけど、お金がかかるというのが結構大きい。高いお金で買うほどかって言われると、今はいいかなって。就職とか進学の区切りで買えばいいかな、ぐらいで、今わざわざ買うまででもないかなとか思って買ってない。

かのん:私も1年生の時は、ディスカッションはほぼ聞こえない状態で参加してて。オンラインがほとんどで、オフラインのディスカッションは週に1回あるかないかだったから、まあいいやって思ってた。2年生になって頻繁にディスカッションするようになったから、支援室でロジャーマイクを借りて参加するようになったかな。

これから使ってみたいツールや方法


かりえ:グループワークの時に、補聴器につなげられるロジャーセレクト(*4)を使ってみたいな!

周りに雑音があると、全ての音を拾ってしまって会話を聞き取るのが難しいけど、ロジャーセレクトだと騒音を抑えて聞きたい声だけ拾ってくれるって聞いた!試してみたいなあ。
あと、そのマイクを補聴器に繋げるだけじゃなくて、スマホに繋げてみて文字起こしがどれだけ正確になるかも見てみたい。

ロジャーセレクトのデモ機。丸い形で手に収まる小ささ。色はゴールドでスタイリッシュ。
ロジャーセレクトの写真(デモ機)

かのん:ロジャーセレクトは、かりえちゃんが今使っている補聴器に接続できるの?

かりえ:それができないんだよね…(笑)
でも、年内には補聴器を変える予定だから、アクセサリー接続ができる補聴器を買おうと思ってるんだ。

かのん:かりえちゃんの大学は、ロジャーセレクトなどの機器の貸出ってある?

かりえ:私の大学では、相談した当時は貸出はできなかったな。
かのんちゃんがいつも使っているロジャーは大学にサンプルがあって、試用させてもらったんだけど、その時は貸出体制が整っていなかった。もしかしたら現在は貸出可能なのかもしれないけど、どのみち今の補聴器では借りても接続できないから使ってないかな。

(*4)ロジャーセレクト:ロジャー製品の一つ。直径55mm×高さ12mmという手のひらに収まるコンパクトサイズで、重さもたったの28gと非常に軽量。マルチビームテクノロジーにより、会話音と騒音の比率を毎秒数百回解析し、6方向・360度、その瞬間の話し手の声をビームのように捉える。会議やレストランでの会話など、騒がしい環境での会話に役立つ。
公式リンク:https://www.phonak.com/jp/ja/補聴器/アクセサリー/ロジャー%20セレクト.html

まとめ

いかがでしたか?
前編・後編を通して、聴講やディスカッションなど、様々な場面で2人がそれぞれ苦労し、工夫していることが分かりました。他の障害や特性によって大学生活での配慮の方法は異なりますし、大学によって環境も異なりますよね。みなさんの経験談もぜひ教えてください!

また、大学の教育機関において、周りの理解や支援はもちろん大事ですが、機器や制度といった形での支援もさらに充実することを願っています。

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