お笑いと音楽は人と語らない方がいい
お笑いと音楽は、話題としてはとっつきやすい。
両方とも嫌いという人は稀だろう。
人となりがよく分かるので、初対面の人でも「へー、そういうの好きなんだ」と盛り上がりやすい。
ただ、ほぼ万人が何らかの好みやこだわりを持つ一方、それが他人とピッタリ一致することはなかなかない。
例えば音楽ならロックが好きとか、お笑いならコントが好きだとか、そんなざっくりしたレベルなら全然問題ないだろう。
あのバンドが好き、この芸人が面白い、くらいまでなら話が合うことも多い。
ここから一歩踏み込むと、だいたい雲行きが怪しくなってくる。
相手との熱量の差や細かい好みの違いが出てきて興が醒める、あるいは自分が好きなものを相手に否定されて腹が立つなんてことはザラである。
相手に自分の好みを分かってもらおうと、こんこんと講釈を垂れる輩もいる。
ここに酒が入ると最悪で、ケンカ沙汰になることも珍しくない。
経験上ロクなことがないのだ。
先日ある酒の席で、コアなお笑い好きの友人同士が最近の地下芸人や学生お笑いサークルの動向について熱っぽく話していたが、互いにまったく意見や好みが合わないということがあった。
二人とも理性的な人間なので、お互いにこれ以上話しても不毛だと判断して別の話題に移ったが、こんなのは奇跡的なケースである。
熱量からして、リアルファイトに発展してもおかしくなかった。
まあ二件目に行ってから一瞬だけ議論がぶり返したので、互いにくすぶっているところがあるのは明らかだったのだが。
ところで私はこの音楽とお笑いにおいて、ライブに行くことはあまりない。
他人との温度差がモロに感じられる空間なので、どうにも集中して楽しみきれないのだ。
特にお笑いは自分のツボでないところで笑っている人が多いと、どうにもストレスを感じてしまう。
ライブで観たいのはやまやまなのだが、そのストレスを上回るだけの期待値がない限り足が向かない。
だから今日も私は一人である。
音楽もお笑いも人と語らず、自分の好きなように一人で楽しむ方がいいのだ。
本当はこの世のどこかにドンピシャで好みが合う人がいたらなと、心の奥底で願いながら。
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