何が変わった?不動産取引の電子契約を解説します
こんにちは。GA technologies(ジーエーテクノロジーズ)グループ PRチームです。
いま大きく変わりつつある不動産業界に関する情報をお届けするマガジン「オープンファクトブック」。不動産業界のニュースや課題、業界を知る上で欠かせないキーワードなどを解説します。
2022年5月18日、改正宅地建物取引業法(以下、宅建業法)が施行されました。これに先立ち、2022年4月27日、宅地建物取引業の書面ので電子化を可能とする政省令の改正が公布され、同日、国交省から実際の運用で注意すべきポイント等をまとめた「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明実施マニュアル」(以下、「電子契約実施マニュアル」)が公表されました。同年5月16日には「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の一部も改正され、いよいよ、電子取引の運用が本格的にスタートしたといえるでしょう。
今回は、ネット不動産の第一歩と言える改正宅建業法と、電子契約実施マニュアルの内容をご紹介します。
(執筆協力:イタンジ株式会社 鈴木紀子)
不動産取引の電子契約が解禁
まず、改めて改正宅建業法についてご紹介します。
2021年、デジタル改革関連法案が可決されました。この中には宅建業法を始め不動産に関係する法律も複数含まれており、業界に大きな影響を与えるだろうと言われてきました。
そして2022年5月、改正宅建業法が施行。これにより「押印・書面の交付等を求める手続きの見直し」、つまり押印や紙の手続きが不要となりました。不動産取引の電子契約が本格的に可能になったのです。
たとえば賃貸で引越しをする場合、まずネットで物件を検索する方がほとんどだと思います。しかし、その後のフローはどうでしょうか?
仲介会社から電話がかかってきて、実際に店舗に行く。
複数の物件を営業担当と一緒に内見する。
その後の申込や契約は、仲介会社や管理会社にハンコを持って行き、たくさんの書面に押印する…
と、ネットで可能なのは物件の検索まで、というのがこれまでの不動産取引の常識でした。
しかし今回の法改正で、不動産取引の電子契約が認められ、物件の検索から契約までのすべてがネットで完結できるようになりました。これが、改正宅建業法施行が「ネット不動産の解禁」と言われる理由です。
電子契約実施マニュアル
改正宅建業法の施行に先立ち、国交省から公布された「宅地建物取引業法施行規則(※1)」と電子契約実施マニュアル(※2)によると、改正箇所は次の4点でした。
詳細に入る前に、消費者側の目線としては以下を認識しておくことをおすすめします。
電子契約が可能なIT環境が整っていること
不動産取引時の電子書面の提供には、契約者の承諾が必要
契約書が改変されていないことを確認できる(事業者側に説明の義務がある)
電子契約ではなく、従来通りの書面での契約を希望することもできる
専門用語も多くわかりづらいかもしれませんが、紙での契約と同様の安心・安全が担保されつつ、より便利になると思っていただけると誤解がないと思います。
ここからは事業者側が遵守するべき、主な事項や、注意点について解説します。
(1)電磁的方法による提供に係る承諾の取得
まず、宅建業者が書面を電磁的に提供するに際し、相手方から承諾を得ることが必要です。必ず確認すべきこととして
「宅建業者が利用予定のソフトウェア等に説明の相手方等が対応可能であるか」
が挙げられています。相手方のIT環境を聞き取り、宅建業者が書面を電磁的に提供する場合に、相手方のIT環境が対応可能か、確認しておく必要があります。この際、相手方がスマートフォンを使用すると言った場合は、文字や画面自体のサイズが小さく見づらいなど、電子書面の見やすさに課題があることが考えられます。そこで、なるべくパソコン等の電子書面を見やすい端末を利用するよう、相手方に推奨することが望ましいと記載されています。
そのほかの説明事項として、宅建業者は
重要事項説明書等の電子書面を提供する方法(電子メール等での提供/Webページからのダウンロード/USBメモリ等での提供のいずれか)
重要事項説明書等の電子書面のファイルへの記録の方式(Excel や PDF 等ソフトウェアの形式やバージョン等)
を説明の相手方へ示す必要があります。
承諾を得る際も同様に、
電子メール等で承諾を得る
Webページ上の回答フォームから承諾を得る
USBメモリ等の交付などで承諾を得る
のいずれかの方法をとる必要があります。
承諾を得られない際は、従来通り紙媒体を用いて契約を進めていくことになります。
(2)重要事項説明書等の電磁的方法による提供の要件等
書面を電磁的に提供するに際して、
説明の相手方等が出力することにより書面(紙)を作成できるものであること
電子書面が改変されていないかどうかを確認することができる措置を講じていること
という条件を満たす必要があります。35 条書面(宅建業法35条の規定に基づく重要事項を記載した重要事項説明書。契約締結前に交付される)については、提供する時点で改変防止措置を含む全ての要件を満たす電子書面を提供することが必要です。
1つ目については、印刷に適合する書式で書面を作成すれば問題ありません。2つ目に関しては、電子署名やタイムスタンプを用いることでなりすましや改ざんの防止をするといった対応が想定されます。電子署名で用いられる電子証明書及びタイムスタンプには有効期間(電子証明書は最長5年、タイムスタンプは最長10年)があるため、それを相手方に説明した上で、有効期間後の取り扱いについて事前に相手方と協議しておくことが望ましいとされています。
また、従来通り、重要事項説明書等の電磁的方法による提供に係る宅建士の明示(電子書面への記名)も義務付けられています。一方で、押印は不要となります。
電子書面を作成するにあたって、ファイルへの記録の方式に指定はありません。文字や表が文字化けしたり崩れて表示されたりしていないか等をきちんと確認しましょう。
前述の通り、電子書面の提供方法は次の3つです。
電子メール等での提供
Webページからのダウンロード
USBメモリ等での提供
電子書面を提供した際には、説明の相手方に対し、提供した旨の通知が必要です。通知の方法に指定はありませんが、メール、電話やチャットツールでの通知が考えられます。
(3) 電子書面が改変されていないかどうかの確認方法の説明
提供する電子書面について、改変されていないかどうかをどのような方法で確認することができるのか、当該方法が提供時点から将来のある時点において改変されていないかどうかを確認するために必要な方法であることを含めて、説明の相手方等に対して説明を行い、確実に理解してもらう必要があります。また、この説明は対面であっても非対面であってもよいとされています。
改変されていないかどうかの確認方法の説明は、説明を受ける方にわかりやすく伝わるよう、Webページ上での説明するといった対応も考えられます。
また、実際に電子契約をおこなう際は勿論、電子書面が改変されていないことを確認いただくといったステップを踏みます。
(4) 電子書面の保存の必要性及び保存方法の説明
電子書面の保存は重要であるため、電子書面の保存の必要性や保存方法を説明することが望ましいです。
(5) 電子書面が閲覧できないトラブル等が解消しない場合の電磁的方法による提供の中止
電子契約の過程で、電子書面が閲覧できない等のトラブルが生じたり、相手方から「やはり紙媒体での提供を希望する」旨の申出があったりした場合、電磁的方法による提供を中止する必要があります。その後、書面(紙)により交付する形に切り替えて、対応を行うことが可能です。この場合、
拒否する旨を記載した書面(紙)を受領
拒否する旨を電子メール等で受信
Webページ上で拒否する旨を取得
拒否する旨を記録したCD-ROMやUSBメモリ等の受領
といった方法で、事業者側は拒否する旨の申し出を取得する必要があります。つまり、口頭のみではなく、ログが残る形でおこなう必要があるということです。
いかがでしたか?
これまで紙で契約することに慣れている人からすると、電子契約には少し不安を感じるかもしれませんが、それを払拭するためにさまざまなことが事業者に義務付けられていることがおわかりいただけたと思います。
この連載では、今後も不動産業界のさまざまな側面をご紹介していきますのでお楽しみに!
出典・参考
※1 「不動産取引時の書面が電子書面で提供できるようになります。~宅地建物取引業法施行規則の一部改正等を行いました〜」(2022年4月27日・国土交通省)
※2 重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明実施マニュアル(国土交通省)
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株式会社GA technologiesについて
社名:株式会社GA technologies
代表者:代表取締役社⻑執⾏役員 CEO 樋⼝ ⿓
URL:https://www.ga-tech.co.jp/
本社:東京都港区六本⽊3-2-1 住友不動産六本⽊グランドタワー40F
設⽴:2013年3⽉
資本⾦:72億2481万6203円(2022年3月末時点)
事業内容:
・オンライン不動産取引マーケットプレイス「RENOSY」の開発・運営
・SaaS型のBtoB PropTechプロダクトの開発
主なグループ会社:イタンジ株式会社、株式会社RENOSY PLUS、株式会社神居秒算など他10社
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