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コンピュータゲームに熱中した少年達のその後・学歴(武井信也)

1980-90年代、コンピュータゲームに熱中した子供達は、その後どうなったのだろうか。ゲームのやり過ぎは成績を下げると言われている。筆者の周りには尋常ではないゲームオタク仲間が居たので彼らのその後の姿からその分類と、近年の大学、就職との関連性を述べてみる。

私の簡単な紹介

1971年生まれ。祖父が実業家・発明家・写真家、父は計算機を使うゼネコンの強度設計エンジニアという環境に産まれ少年時代にTK-80という自作ワンボードマイコンに触れる。ファミコン世代だが買って貰えず、ファミコンのソフトと似たようなゲームを家にあるコンピュータで自作して遊んでいた。そのうちゲームのパラメータ改造やマップ変更、コンピュータハードの自作やクロックアップなどにも手を染め、学生時代にはバックアップ活用テクニックというディープなハッキング雑誌で連載を持っていた。画像1

1980年代後半からパソコン通信のコミュニティを主催するようになり、2000名を超えるクリエイター(プログラマ、CG作家、シナリオライター、作曲家)などと交流を持った。このコミュニティは「聖まりあんぬ」と呼ばれ、「萌」の創出と啓蒙にも大いに貢献した(これは別途詳しく述べたい)その後、この頃の仲間達と日本で初の本格的サーチエンジンの会社(マーズフラッグ)を共同起業し、現在でも代表を務めている。

ゲームオタクの分類

 私なりに、ゲームオタクを分類してみる。後の段では彼らの「その後」40代、50代の状況も簡単に説明したい。

1. ダメ人間、情報消費者
 自他共に認める堕落しきったダメ人間wwww で、ゲームは時間つぶしか逃避に利用されている。自ら創作活動には参加せず、ひたすら与えられた情報(ゲーム、コンテンツ)の消費者として生きていく。コレクターも多い。

2. 超高学歴、天才エンジニア
 難関進学校からゲームのハッキングをしながらも理系有名校に易々合格していく連中。合い言葉は「俺何も勉強してない」だが、多分本当にしていない。天才なのか効率がいいのかは知らない。

3. クリエイタータイプ
 もともと、ゲームにはそれほどハマりこまない。どちらかというとゲームは自己の実力を知らしめるためや創作欲求を満たすためのチャネルであるというスタンス。ゲームをプレイしながらどんな人がどのように製作したか、に強い興味を持つ。

4. 2+3 のマルチ人間
 存在確率はコアなオタクの中でも 0.01% 程度だが、私は親しい知人に10名ほどこのタイプが居る。

彼らの40代、50代はどうなった?

 まず 1. のタイプは、不安定な就労状況となっている人が少なくない印象だ。ゲームやコンピュータ業界に残っている人も居るが、職業は様々。基本的には40を過ぎても独身で、未だにゲームをひたすら消費している。もちろんこの中には、幸せそうな人も居るが、良くも悪くもSNSのおかげで、当時の知人の中に輝いて居る人を見つけることも多いので、自己が何者か特別なものになれていないことへの後悔や焦燥感を持つ人も少なくない印象だ。

 2. のタイプの多くは弁護士、医師、研究者、官僚、大手企業の役員などになっている。もうゲームはやっていない人も多い。基本結婚していて、世の中的には「勝ち組」と呼ばれることもある。一方で日本で暮らす限りは税金も高く労働時間も長いため、幸福度は低く感じる。ハードウェアのエンジニアになったタイプは日本のメーカーに就職して重宝されては居るが、上の世代が多く出世は難しく日の丸産業の相対的沈下とともにジリ貧になってきている。このタイプからソフトウェアエンジニアに進んだタイプは若い頃低所得、過剰労働で苦労したものの、現在フルスタックエンジニアとして1000万円級の高級エンジニアになっていたり、AIや英語などのスキルを獲得して更なる高給取りになった人間もいる。

 3. のクリエイタータイプは、才能のあった 1/3 程度の人間はアーティストとして成功しており、コンピュータの発展と共に人生が開花した。名のあるゲームクリエイターや、作曲家、CG絵師、有名な同人作家など。残りの 2/3 は(1.)と同じ状況に陥っているケースがあるが、趣味として音楽やCGを続けていて人生は充実しているという場合もある。幸せは様々である。

 4. のマルチ人間は起業家となっているケースが多い。リーダーシップのタイプは人それぞれだが才能が全てを代弁するので大きな問題はない。上場したり、非公開でも大きな実績をあげたりしている起業家も多い。一部は所謂器用貧乏なタイプとして社会に消費されている印象が否めない人もいるがいずれにせよ多趣味なので楽しそうには見える。

シンガポールで暮らす人達との親交

 私はシンガポールに2014-2017年にわたり、2年半居住した。そこで出会った「非シンガポール人」の多くは季候が良く税率の低いシンガポールに家族で移住し、子供に高度な英語教育を受けさせていた。もちろん世界でもっとも物価の高いシンガポールに家族で移住できる時点で、英語が堪能で(海外留学経験がある)年収が良いか、資産があるなどのケースが多いように思う。そこで出会った彼らの多くは日本の有名大学を卒業しているにも関わらず自分たちの子供達には「日本の教育は受けさせたくない」と言っている親たちが多かった。母集合の特性が異常(海外好き、海外びいき)なのでそれを差し引かねばならないだろうが、それでもほぼ全子息がシンガポールのローカル校かインターナショナルスクールで英語にて小学校、中学校を過ごし、高校からは米国か欧州の全寮制の有名校、その後は世界トップクラスの大学を目指すのだと。

 さて、そんな彼らの興味は子息らの今後の就職や職業選択であるのはどこの世界も同じだけれども、AIやらコンピュータサイエンスに興味があるのでそちらに進路をとりたいという親御さんが多いので、私は職業柄良く相談を受ける。もちろんMITやスタンフォードを卒業すれば進路は選べる。英語もできて海外有名大を卒業していれば起業したときも投資家の支援を得やすく、同級生から優秀な人材をスカウトできるので成功確率は高いよねと、言っている。

突き抜けろ。消費者で終わらずクリエイターたれ。

 しかし、いうまでもなく海外有名大を卒業するというのは金銭面や情報面など、難易度が低いとはいえない。どうだろうか?就職が必要ないくらいのスキルを身につけたり(例えばコンクールで賞を取るとか)スモールスタートといって少額資金で起業する、副業として起業するなどの手段を使えば実力があればなにも海外や日本の有名大学を卒業している必要はないだろう。もっともカーネギーメロン大学(世界大学ランキング 24位、東京大学同46位)(AI部門世界1位、コンピュータサイエンス世界5位)にはゲームクリエイターの専攻があり、ゲームクリエイターとして優れていれば入学の可能性があるなど、「ゲームをしたらいい大学に行けない」は、日本だけの話になりつつある。「ゲームを通して、好きなだけではなく、突き抜けて情報消費者ではなくクリエイター側になる」ことは世界難関大への扉を開き、不安定なこの世の中で手に職をつけ、よしんば起業すれば富を得ることさえも宝くじに当たるよりは相当高い確率に思えるわけだ。

気が向いたら続編があります。

【参考】ゲームをバカにするな 遊び心が生む社会の変革力
本社コメンテーター 村山恵一

武井信也

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