レビュー 凶器は壊れた黒の叫び(新潮文庫)

ーもう。
この人の作品は小説って言うよりポエムですよね。
本来あるべき思考のない人間がここまで揃ってるとこの人の考える世界ってのは恐ろしく純粋なのかこの人が恐ろしくひねくれてんのかわからん。
この人物造形に一定程度のリアリティを持たせるあたりがやばい。
何か最近誰も悪人の居ない優しい世界の話を癒やされるーって読むことが多いのだけど、この人の話は誰も悪人は居なくて全員が自分の正義を信じてるのに噛み合わないけどそれを尊いと思ってるみたいな心理が美しいんだよね。

ありえない世界でありえない倫理観をこういう人もいるかもしれないというリアリティをもって描き出すのは素晴らしいと思うんだけど、これも中二病の一種なのだとしてもこの遵守さを中二病で片付けたくない。
なんかこうガラス細工みたいな透明度の高い美しい感じなんだよねえ。

小説を読むときには多かれ少なかれ情景を思い描いて読むけど世界全体にフィルターがかかってるみたいな作家は私の知りうる限りでは二人だけで、一人はこの河野裕だよなぁ。
なんだろうなぁ。でもその作家の何を読んでもその作家のカラーっていうか世界観があってそれが強烈であることが武器であるとは思うけれどそれ自体がストーリーが面白いということとは全然違うことなんだよなぁ。
あらすじにしちゃうとさっぱり面白くないし@gaまぁでもこの強烈な世界観と人物描写に浸りたくて買ってるんだけど。そして一定以上は面白いんだけど。
この面白さを伝えたいのに私では何万文字尽くしても難しそうだよなぁ。
でもこう、何回読んでも世界が光で細部が飛んでいるようなそんな話だと思うんですよ。
でもこの人を見ていると物語が面白かったり人物に好感を持ったりするのは共感できるとかできないとかそういう次元ではないことを圧倒的に見せつけられている感ある。
主人公とか1mmも共感出来ないもんね。

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