アクタージュ自体が『今は』理想の女優の再生と失敗の物語

今号も!アクタージュは!面白かった!

ということで、週刊少年ジャンプ(8) 2019年 2/4 号 [雑誌]を読んで、アクタージュという作品について思うところが色々出てきたので整理も兼ねてアクタージュ全体考察をしたいと思います。
直接感想は別途記載します


黒山が理想の女優 を作ろうとして作られているのが夜凪であり『現段階での』アクタージュという作品
この作品では初めからみんなの「理想の女優≒星アリサ」です。
特に黒山が自分の理想的な女優、自分にとっての星アリサを作ろうとするところから物語が始まります。

作中、様々な人物が星アリサと関わりがあり、星アリサ本人も最初から登場人物として登場していますが、黒山本人は多分星アリサと監督と女優という立場で仕事をしたことはないものと思われます。
理由として上がるのはその年齢差です。

星アリサは現在54歳、黒山は35歳でその差19歳。
星アキラが18歳で、子役時代にはスターズでデビューしており、引退してから事務所を始めたような描写から、黒山は星アリサを撮影したことはないと推測されます。
仮にあったとしてもその段階で黒山が自分の理想とする映画を作れるほどの権力やお金はなかったでしょう。

そのため、黒山にとって星アリサはあくまで「理想の女優」であり、生身の人間ではありません。

あくまで黒山にとって自分の取りたい映画に必要となる理想の女優≒欠点のない星アリサを作り出そうとしていると考えられます。

そこで表題に戻りますが、アクタージュ全体が現段階では黒山による理想の女優の作成物語です。
そして作中、理想の女優に最も近い星アリサの欠点をどのように克服させるか、ということに焦点を置いてストーリーが進行しているという視点でアクタージュを再検討してみました。

理想の女優の欠点


星アリサは女優として作中で必要だと考えられている全てを持っている女優でした。
作中で既出の女優に必要な要素は、あくまで黒山にとってはですが、大きく以下の3点です。

・表現すべき感情。
・客観視。他者からの視線を意識すること。
・表現力。

そして夜凪がそれを順番に手に入れることでアクタージュは進行してきました。

表現すべき感情(メソッド演技)は天性のもの。
客観性は『デスアイランド』編で。表現力を『銀河鉄道の夜』編で手に入れてきています。

では、理想の女優に最も近かった「星アリサ」の欠点、なし得なかったことはなんでしょうか。

これについても作中でメソッド演技法の欠点と共に提示されています。
星アリサは、その才能により、自身の感情を掘り下げすぎて病んでしまったこと。
結果、女優をやめてしまった≒みんなにとっての理想の女優ではなくなったことです。

この回答が出ないと、夜凪は星アリサの欠点を克服した「理想の女優」にはなれません。
つまり本筋とは関係ない、「人間としての幸せ」がこの作品における現時点で提示しなければいけない解です。

黒山は星アリサの一件を知っているわけですから、黒山として何らかの回答を持っているはずだと考えられます。

百城千世子:掘り下げすぎて病んでしまったことから、掘り下げなければよい、という解

『デスアイランド』編は星アリサ自身が考える「理想の女優」の物語です。

星アリサ自身が自分の失敗から幸せな女優とはなにか、どうあれば幸せになれたのかを追求した結果≒千代子です。

星アリサの理想とする女優≒大衆の目線のみを気にし、自分の感情を掘り下げないことで、病まない女優を続けられる、というものです。
ここで表現すべき感情は、星アリサの理想の女優という解の中にはありません。理想ではあるが現実的でない、と判断したのかもしれません。

星アリサによる解は、千世子(自分の理想)自身からも否定されつつあり、黒山自身も千代子は上っ面だけと批判しています。
つまり、星アリサのやり方ではNGで、理想の女優は作れないのです。

明神阿良也:支えてくれる誰かの喪失が星アリサを失敗させたのでは、という解

巌さんは、明確に星アリサと仕事をしています。
今週のジャンプからも、直接的に星アリサを壊したのが巌さんだったのではないか、ということが示唆されています。

星アリサの失敗を踏まえて、巌さんは劇団天球を作りました。この失敗に関する話は『週刊少年ジャンプ(8) 2019年 2/4 号 [雑誌]』のレビューに記載予定ですが、一旦割愛します。

そして巌さんが出した解が、誰かが支えてやれれば星アリサは病まなかったのではないか、というものです。

これに関しては黒山も一定程度評価しているものと考えられます。
阿良也についても、舞台俳優は自分のしたい表現とは合わないとしているものの現在の夜凪の上位互換的には考えているようです。

そのため、夜凪の面倒をあれこれ見て、ただ女優というだけではなく妹弟の世話まで引き受けているのではないでしょうか。

理想の女優として足りなかった心を病む、ということに黒山がどういう階を持ってくるのか

現段階ではいくつかの回答が考えられますが、明確に黒山の解は表現されていないと思われます。
色々考えてみましたが今のところ私に想像がつくのは以下の2つでした。

・巌さんの解:自分が、あるいは妹弟が支えてやれば十分だと思っている可能性。
・夜凪になんらかの素質を見出した結果、心を病まないと思っている可能性。

2点目はメソッド演技を見て夜凪を拉致したことからこの可能性は低いと思いますが、作中で黒山が何を考えているのか描写されないことから楽観視している可能性も十分にあると思っています。
なぜなら黒山は現在に生きていて、星アリサの話は当事者では無いからです。

アクタージュという作品が黒山の解を最終到達点とするのか、夜凪景が黒山の理想を超える話として書くのか。
少年ジャンプ連載である以上、打ち切られるタイミングでどこまで描かれるのか不明です。
でもこの話はまだ解も提示されず、それどころか問題すらも出題されきっていない、最序盤でしかないので、やっぱり目が離せないのです。

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