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ローレンス・シルバーマン(5)ー沈黙のらせんー

ローレンス・シルバーマン判事が指摘するように、70年代以降のマス・メディアの偏向報道には目を覆いたくなるほど、という話をしながら、回を重ねて参りました。このシリーズは今回を含めて2回で打ち止めとなります。

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先日の記事(woke)のいしまるゆきちゃんからのコメント。世論の拡散と収斂について触れられていました。


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1.人々は社会の認識をマス・メディアに依存。

2.マス・メディアは受け手の判断力を奪い、問題の重要性を誤って認知させる。

3.「マス・メディアが提示する世論」を基準とした選択が起こり、「作られた世論が収斂し、現実化」。


この3つが、今回のオチです。

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声ある少数派:隔離への恐怖をあまり感じない人々が少数ながら常に存在。変革のためには、この世論への挑戦者が不可欠。


クラレンス・トーマス判事ローレンス・シルバーマンこそが声ある少数派なのであり、民主主義の健全化には欠かせません。だから、オイラも声を挙げずにいられない(笑)。

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1.ワシントンD.C.巡回区控訴裁判所のローレンス・シルバーマン判事が、報道機関は民主党の支配下にあり、非常に危険だと警鐘を鳴らす。

2.米民主主義を守るため、連邦最高裁が1964年に下した『NY・タイムズ対サリバン』事件の判決を覆すことを求める!!!

シルバーマン判事は、「NY・タイムズ」と「ワシントン・ポスト」が報道倫理を失い「民主党の防御壁」であることを指摘。さらに、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のニュース欄、AP通信、「ロサンゼルス・タイムズ」などの大手新聞社もこれに追随。全米テレビ局も民主党の「ラッパ」となっており、政府の支援を受けている「ナショナル・パブリック・ラジオ」もビッグテックも、民主党に有利なように動いているとして、懸念を表明。

なぜ、判事が懸念を表明したかと言えば、メディアが人々の認識を画一化することを放置すれば、政府の情報統制と同じになるから。また、独裁主義政権の最初のステップは、ニュースの配信をコントロールするプロパガンダだから。さらに、過激派を生み出す可能性をもたらし、民主主義を維持する上での脅威となるから。

連邦最高裁が1964年の『NY・タイムズ対サリバン』案件に下した判決(記事の最後をご覧ください)報道機関の偏向報道を助長するものであり、『報道の自由』を保障している憲法修正第1条の主旨から外れている。

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マス・メディアを単なる気晴らし、現実逃避の手段と捉えるのは危険!!

自分の考え方が正しいかどうかの判定をマスメディアに依存する人は能動的主体的とはいえない。

ところが、

人は、どの意見が多数で優勢かを確認し、もし自分の意見が少数派であれば、意見表明を控えて孤立を避けようとする習性を持つ。

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マス・メディアは自在に意見の風土形成ができる


意図を露骨にしなくても、長期的かつ累積的に人びとの価値判断の基準を変えられる。例えば、「天声人語」(笑)。

1960年代後半になって TV視聴が当たり前になると、短期的・直接的に人々の意見を変えるというより、長期的に強力な影響を及ぼすようになります。

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情報操作と議題設定機能

メディアが恣意的に「なにを考えるべきか」「今なにが問題なのか」という争点を設定できるってのが議題設定機能

そのために、恣意的に重要性の強弱を変えたり、論点をすり替えます。具体的には、詭弁術、切り取り・ねつ造、視覚や音響などの技法を駆使しての情報改変。

情報操作(印象操作)にはプロパガンダもありましたね。ナチス・ドイツやC国共産党のような独裁国家、あるいは戦時中における検閲情報操作のため。

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先有傾向とオピニオン・リーダー

ニュースの受け取られ方は、直前に流されたニュースによって左右されるというのが、先有傾向。また、特定の記事を一面に掲載し、多数派・優勢意見であるかのように提示するのが議題設定機能

ラザースフェルド & カッツは、1940年のアメリカ大統領選挙時の人々の投票行動における、マスメディア(新聞とラジオの時代)の影響力の大きさについての調査研究しました。そして、投票の意思決定は、すでに持っている有権者の政治思想や政党支持といった先有傾向によって決まっているのであって、マスメディアの宣伝の影響は限定的(限定効果説)としました。また、人々の投票意図に大きな影響を与えたのは、仕事や友人付き合いの方でした。
同時に、人々の意思決定に影響力を持つのは、オピニオン・リーダーであり、マスメディア ➡ オピニオン・リーダー ➡ 受け手 という2段階の流れがあることがわかりました。 

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沈黙のらせん

マスメディアは「複数のメディアの表現内容の類似(共鳴性)、情報伝達の繰り返しの影響(蓄積性)、広範囲への影響(偏在性)」による集合的錯覚が人々の認識に影響を与える。

政治学者であり社会学者でもあったE.ノエル=ノイマンは、西ドイツの選挙において、人々の投票行動が土壇場で変化するという出来事をきっかけに、「沈黙のらせん仮説」を提唱。

1965年、選挙直前まで2つの政党支持率は伯仲していたにも関わらず、結果は一方の圧勝に終わりました。

選挙前 8か月の間に、圧勝した政党を選んだ人が急増していました。つまり、「その政党が勝つという流れだ」という世論によって人々の認識が変わり、選挙の結果を左右した、というのです。

人は周囲の意見や社会の動向を観察し、多数派であると思われる場合は自らの意見を公表/少数派であると思われる場合は社会的な孤立を恐れて沈黙 ⇒ どの意見が多数派か少数派であるかをマスメディアが持続的に提示することで、多数派の声は根拠もなく大きくなり、少数派は根拠もなしに沈黙へと向かう ⇒ 「集合的錯覚」がらせん状に連続し増大することで世論の収斂が起こるというのが沈黙のらせん仮説です。

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TV離れ。

NHK文化研究所
10代、20代の半数がTVを観ない。
30代は37%、40代32%、50代17%、60歳以上5%

1960年代とは違って、若者がTVを観ない時代になりました。ワイドショー化したニュース番組という国家による統制の効かない無法地帯、そしてTV局の御用学者という名の倫理なき人の偏った意見に世論が流される風潮が、20年後にどうなっているかが楽しみです(笑)。

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記者を養成するためにジャーナリスト・スクールや養成課程を設け、報道倫理や法律などメディアに関する科目を教育するべきだ、との意見も。

発言者の意図と異なる趣旨になるよう切り取り・ねつ造して報道
根拠が希薄なまま「○○の恐れがある」として不安を煽る
事実と異なる報道を行っても、その取り消しを行わないか、小さくしか訂正記事を出さない
アンケート対象の意図的な絞り込み
自由記述型にすべき回答欄を故意に多肢選択型にして結果を操作
記者自身や組合が支持する政党に都合の悪い事実を報道しない
情報源を「関係筋」として詳細を公開しない
 

次回の記事では、オイラが TV離れ、新聞離れに対する秘策を伝授しますからね(笑)。

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参考:『NY・タイムズ対サリバン』事件の判決

公人の場合、報道された情報が虚偽であるという理由だけでは名誉毀損訴訟は成立しない。
さらに、報道記者や編集者が『現実の悪意』をもって行動し、それが虚偽かどうか、まったく意に介さずに情報を報道したということも原告側が証明しなければならず、証明できなければ、同メディアを州の名誉毀損法に基づいて裁くことができない。

要するに悪魔の証明をしろっていうことです。明らかに、シルバーマン判事の指摘は正しいですよね。


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