集英社のSimilarWebの使い方、揉めにもめた海賊版対策TFでの使い方と一緒なんだが
ウェブ担の下記記事に基づく記事です。前もって言っておきますが、鈴木謙一さんのSEOまとめ情報や、Mozの翻訳記事、デイリーポータルZの赤裸々かつ真摯な連載記事など、ウェブ担には尊敬している記事が本当にたくさんあります。また、海賊版は許してはいけない、という観点も譲る気はありません。
趣旨は、「よりにもよって海賊版の被害を示すデータとしてなぜSimilarWebを蒸し返したんですかねえ」ということです。
問題の記事
下記は、遠慮せずに言えば爆笑しました。
この中にこういうコーナーがあります。
集英社は海賊版サイトの実態把握に
「被害規模をリアルな数字で把握し対策の優先順位や関係団体とのやりとりに活用（引用）」しているらしいのですが、そもそもSimilarWebの信ぴょう性についてのやり取りは、それこそ知的財産戦略本部主催の「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」においてされているわけです。で、SimilarWebの数字に関しては「リアルなものとしてみなすかは疑問が残る」状態で終わった、と私は解釈します。そして、SimilarWebの数字が一因となって、この知財戦略本部のタスクフォースは空中分解したと考えます。
何が言いたいかというと、官公庁の会議を空中分解に追い込んだ一因であるデータが、まあ同じ話題で「信頼あるデータ」「リアル」と見なされることがあるんですねえ（暗黒微笑）ということです。
まずリンクを示します
上記からインターネット上の海賊版対策に関する検討会議でページ内検索
タイトル未設定としか表示されないのですが、これは「被害額等の算定に利用するデータについて (一社)日本インターネットプロバイダー協会 副会長兼専務理事 立石 聡明 2018年9月19日」です。第7回の中間とりまとめ案において、SimilarWebを数値根拠として使うことに対し、反論を含んだ内容となります。このツールに反対する人の意見はこれで大体わかると思います。
インターネット上の海賊版対策に関する検討会議におけるSimilarWeb議論のあらまし
結論から言えば「第7回中間まとめ案のぽっと出similarwebに対し、立石委員が反発、そこから大ゲンカになった」です。similarwebの数値はよりにもよって3,000億円という被害総額の根拠としても使われてしまったので、第9回まで引きずって、最後まで同意がなかったと見なせます。
立石委員が出した上述の資料に、川上委員の出した資料が真向から反対、森委員はsimilarwebを元に算出した3,000億円の数値に疑問を残したまま、最後にブロッキングの議論がまとまらなかったのも合わさって終了した、という流れだと思います。「中間まとまらない」ってなんだよそれ。
第9回議事録に「中間まとまらない」は書いてありますので、信じられないようであればご覧ください。もめにもめた議論の典型例という感じです。いやあ、トップでもこんなことになるんですねえ。
ちなみに、試算の計算式はこんな感じ。
ここの注は学術本でも見ないような超長い注なので必見です。
ウェブ担記事において歴史は繰り返した
実は集英社の担当の方も、海賊版による被害額を試算してるんですね。SimilarWebの数値をもとに。
先生、ほぼ同じ計算式見ました。しかも被害額無茶苦茶膨れ上がってます。4,700億円。これって一般的な計算式なんですかね？
※重ねて言いますが、海賊版には当然反対です。しっかり対価を払って見ましょう。でもここを見て私は爆笑しました。腹が痛くなりました
先ほどの検討会に講談社は参加していましたが、集英社は参加していませんでした。参加してたらそもそもツールを使わなかったりしたんでしょうかね。いずれにしろ多分決定的な揉め方はしなかったと思うので、海賊版対策は進んでよかったんじゃないでしょうか……でもなあ……うーん……
趣旨はいいのに根拠のせいで……
検討会で揉めた点はSimilarWebだけではありませんし、検討会、ウェブ担で示された海賊版反対には全く持って同意します。でも、無用に根拠に論争を招くのはやめた方がいいのでは？というのも考えます。毒か薬かわからないもので毒を制するのはやめた方がいいと思うんですよ。
SimilarWebは過去の炎上や専門家の反論（リンクは辻氏のブログ）もあり、反対派が醸成されている（というか私も反対したい）ツールです。そういうものを経営の意思決定に使おうとするのは私はリスキーかなあと思います。趣旨はいいのにロジック不十分でモヤモヤするのって損だと思う。以上です。
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