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首都圏幹線路線設備まとめ⑤ 総武本線

 本シリーズは特別料金不要の列車のみを対象に首都圏の幹線鉄道路線の設備をまとめるものである。具体的には、大都市近郊区間、都心からの直通列車がある区間、ホーム有効長、電車特定区間、複々線区間、種別、貨客分離区間、路線記号導入区間、発車メロディー導入区間、ATOS導入区間、並行する通勤新線の11項目についてまとめる。
※本項では便宜上、走行区間にかかわらず通勤型車両を用いる系統を中距離電車(中電)、通勤型車両を用いる系統をE電と呼ぶ。


概要

 総武本線は東京~銚子間を結ぶ路線であるが、今回は運行系統上一体化している外房線•内房線•成田線•鹿島線も含める。中距離電車(横須賀・総武快速線)はスカ色である。

設備詳細

大都市近郊区間•都心直通区間•ホーム有効長

  • 大都市近郊区間:銚子•鹿島サッカースタジアム•成田空港•安房鴨川まで(系統全区間)

  • 都心直通区間:成東•香取•鹿島神宮•成田空港•君津•上総一ノ宮まで
    (廃止:館山•勝浦)
    京葉線が上総湊•勝浦まで直通

  • 15両対応区間:佐倉•成田•君津•上総一ノ宮まで

  • 10両対応区間:館山•大原まで

  • 8両対応区間:銚子•安房鴨川まで

 大都市近郊区間は都心直通がない区間を含む房総半島全域に伸びていてかなり長いが、これは21世紀以降原則としてSuica対応区間は全て大都市近郊区間とするようになったからである。
 現在は都心からの列車のほとんどが千葉•成田空港•君津•上総一ノ宮で折り返す。成東•鹿島神宮方面へは分割併合により付属編成のみが乗り入れる。かつては付属編成が館山や勝浦に乗り入れていたが、前者は廃止され後者は京葉線直通に置き換えられた。
 千葉を境に需要が変化することから千葉以南のみで6両や8両のローカル列車(普通列車)が走っている。2022年ダイヤ改正で房総方面の大部分が木更津(君津)•上総一ノ宮で系統分離され、2両や4両になった他、4両や10両のローカル列車が廃止された。これによりローカル列車で10両が存在するのは常磐線の水戸地区のみとなった。現在佐倉•成田•君津•上総一ノ宮以東/以南で10両の列車は存在しない。
 通勤新線の京葉線は上総湊や勝浦まで乗り入れており、E電の方が中電よりも距離が長いという事態が発生している。これはグリーン車対応区間をできる限り減らしコストを削減つつ都心直通を維持するためである。房総特急は既に高速道路に敗北して下火になっているため今更特急誘導のために都心直通を減らす必要はないのだろう。ホーム有効長が長いにもかかわらずグリーン車非対応のため都心直通をしていない常磐線の高萩〜いわき間とは対照的である。
 他の多くの幹線はかつて長距離列車が多数存在し、時代と共に系統分離が進んだという歴史を辿ってきたが本路線の千葉以東•以南は歴史的にローカル列車が主体である。

電車特定区間•複々線区間

  • 電車特定区間:千葉まで

  • 複々線区間:千葉まで  

 電車特定区間内は全て複々線化されており、また総武本線のE電による千葉以西•以南乗り入れも存在しない(京葉線は乗り入れあり)。
 複々線化当初は津田沼までしか複々線がなく以西は各駅停車と快速が同じ線路を使用していたが、千葉に延伸された。三鷹以西の延伸が行われず、さらには2021年に各駅停車の三鷹以東乗り入れが廃止されてしまった中央線とは対照的である。
 なお、中電であるはずの総武快速線は多くの列車が千葉で折り返してしまう。この理由は高崎•宇都宮•常磐線とは違い県庁所在地が近距離にあり電車特定区間に含まれることから、区間外直通の需要が少ないためであると考えられる。なお、都心からのほぼ全列車が直通する東海道本線の横浜以東と総武本線の千葉以西では歴史的に発展の度合いが桁違いに違うため比較にならない。

種別

 総武本線では現在以下の種別が運転されている。
中電... 快速(快速線)
 ※総武本線の佐倉以東は普通に種別変更。千葉以東•以南のローカル列車は普通列車
E電...各駅停車(緩行線)
かつては中電に以下の種別が存在した。
特別快速
通勤快速
 ※複々線化以前は中電が存在せずE電に木更津行きや成田行きの快速が存在した。
(Wikipediaより、今後時刻表で調べ確実な情報が分かれば更新する)

 総武快速線に関しては近郊形車両を使用するものの大部分が電車特定区間の千葉で折り返し、種別が普通ではなく快速であり、ダイヤの組み方や本数も通勤路線寄りであるためE電であるという捉え方もある。元々「中距離電車」の後に明確な定義や規則がないため曖昧になるのは致し方ない。
 都心直通が少ない代わりに千葉から先の区間にはローカル車の普通列車が数多く設定されているが、これは直通需要が大きく変わる県庁所在地が電車特定区間内にあるため区間外直通させる意義が薄いからだと考えられる。
  中距離電車の停車型列車の種別名が他路線のように「普通」てはなく「快速」である理由は、これはホーム有効長の関係で電車特定区間外にも僅かに通過駅があることであると考えられる。かつては電車特定区間外に大量の快速通過駅があり、完全な速達種別であった。
  なお、複々線化以前はそもそも中電が存在せずE電に各駅停車(千葉まで)と快速(成田•木更津まで)があった他、僅かではあるが急行型車両の間合い運用の快速も存在した。そして複々線化の際にE電快速と急行型の快速を新製した近郊形車両で全て置き換えた。そのため昔から中電があった他路線とは異なる経緯を辿っている。中電で「快速」という種別が使われる理由の1つに一度定着した名前だからというのもあるのかもしれない。
 常磐快速線•中央快速線•京浜東北線のような通勤型車両によるE電快速が存在しない理由は、千葉以西に乗り入れる列車とそうでない列車を近郊形に車種統一したかったためや、歴史的に近郊形車両が使われる横須賀線との直通運転が考えられる。

貨客分離区間

  • 貨客分離区間: 亀戸〜新小岩間(千葉方面貨物列車は京葉線経由)

 総武本線に貨物専用線は並行していないが、各線から千葉方面に向かうかもち貨物列車は全て武蔵野線•京葉線経由である。
 元々は川崎貨物駅〜東京貨物ターミナル〜品川埠頭分岐部信号場〜新木場〜南船橋〜蘇我〜北袖〜木更津間の貨物線(京葉線)と並行する武蔵境〜東京〜新木場〜南船橋〜蘇我間の旅客線(中央•総武開発線)が計画されていたが、前者の北袖〜木更津間と後者の新木場〜蘇我間が頓挫した。その結果、東京〜新木場〜南船橋〜蘇我間が京葉線、品川埠頭分岐信号場〜新木場間がりんかい線として旅客化され、川崎貨物駅〜東京貨物ターミナル間と蘇我〜北袖間が貨物線、東京貨物ターミナル〜品川埠頭分岐部信号場間は回送線となった。旅客線の貨物列車は南船橋〜蘇我〜北袖間のみを走り、南船橋から東京寄りは武蔵野線を通り埼玉経由で大きく迂回する。
 なお、亀戸〜新小岩間には貨物線の越中島貨物線が並行しており、越中島貨物駅から亀戸、新小岩から新金貨物線経由で常磐線へ向かう列車が走行する。

路線記号•発車メロディー

  • 路線記号導入区間:成田空港まで

  • 発車メロディー:成東、成田空港、君津、上総一ノ宮まで 
    ※千葉駅は未導入

  • ATOS導入区間:千葉まで

 ATOS区間は電車特定区間の千葉まで他路線と比較すると短くなっている。
 発車メロディーが全駅に導入されている区間は上記の通りであるが、実際はそこからから先の主要駅でも導入されている。
 中電のラインカラーはスカ色である。

通勤新線

通勤新線…国鉄末期に計画されたバイパス線。埼京線•京葉線•つくばエクスプレス等が該当。

  • 通勤新線:京葉線(蘇我まで)
    計画中:新宿・三鷹・立川方面/計画中止:中央・総武開発線

 前述の通り、新五方面作戦では武蔵境〜東京(汐留貨物駅)〜蘇我間の中央•総武開発線が計画されたが実現せず、代わりに同線と並走する予定で建設されていた貨物線の京葉線を旅客路線に計画変更して開業した。県庁所在地の千葉は通らないものの、速達化や混雑緩和、沿線開発に多大な貢献をした路線である。

まとめ

設備まとめ

  • 大都市近郊区間:銚子•鹿島サッカースタジアム•成田空港•安房鴨川まで(系統全区間)
    都心直通区間:成東•香取•鹿島神宮•成田空港•君津•上総一ノ宮
    (廃止:館山•勝浦)
    京葉線が上総湊•勝浦まで直通

  • 15両対応区間:佐倉•成田•君津•上総一ノ宮まで

  • 10両対応区間:館山•大原まで

  • 8両対応区間:銚子•安房鴨川まで

  • 電車特定区間:千葉まで

  • 複々線区間:千葉まで  

  • 中電種別:快速(快速線)
    ※快速は佐倉以東で普通に種別変更
    廃止:特別快速、通勤快速

  • E電種別:各駅停車(緩行線)
    廃止:快速(複々線化以前)

  • 貨客分離区間: 亀戸〜新小岩間(千葉方面貨物列車は京葉線経由)

  • 路線記号導入区間:成田空港まで

  • 発車メロディー導入区間:成東、成田空港、君津、上総一ノ宮まで 
    ※千葉駅は未導入

  • ATOS導入区間:千葉まで

  • 通勤新線:京葉線(蘇我まで)
    計画中止:中央•総武開発線

特徴まとめ

  • Suica対応により大都市近郊区間が非常に広くなった

  • 電車特定区間の終わる千葉で需要が大きく変化するため千葉から先は6両や8両のローカル列車も走る

  • ローカル列車の10両は2022年に廃止され、JR東日本のローカル列車に10両があるのは水戸地区のみとなった

  • 中電の横須賀・総武快速線よりもE電の京葉線の方が遠方まで走る

  • 歴史上長距離普通列車が存在したことはない

  • 中電の最下位種別は普通ではなく快速

  • 複々線化前はE電の各駅停車と快速のみが運転されていた

  • 総武快速線は中電なのかE電なのか曖昧である

  • 電車特定区間の内外で需要が大きく変わるため他路線よりも跨ぐ列車が少ない

  • 通勤型車両による快速は存在しない(電車特定区間内のみの列車も近郊形車両が使われる)

  • 貨客分離はされているが当初の計画とは大きく異なる運行経路である

  • ATOS導入区間は電車特定区間までと非常に短い

参考サイト

 出来る限り信頼性のある情報を使用していますが、一部でWikipediaや個人サイトを利用しています。

路線概要


大都市近郊区間

電車特定区間

複々線区間

廃止種別

2022年ダイヤ改正(通勤快速)
https://www.jreast.co.jp/press/2021/chiba/20211217_c01.pdf

2017年ダイヤ改正(特別快速)
https://www.jreast.co.jp/chiba/news/pdf/pre1612_daikai.pdf

路線記号

https://www.jreast.co.jp/press/2016/20160402.pdf
https://www.jreast.co.jp/chiba/news/pdf/pre1801_number.pdf

発車メロディー(発車ベル使用状況 様)

ATOS

通勤新線(草町義和 様/一般社団法人建設コンサルタンツ協会 様)


https://kusamachi.railway-pressnet.com/archives/61

https://www.jcca.or.jp/infra70n/files/PJNO_06.pdf

京葉貨物線と総武開発線の複々線

 最後までお読み頂き有難うございました。次回は中央本線の予定です。

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