小中規模の展覧会搬入あれこれ(1)郵送・宅配での搬入出について考える

 大きな展覧会なら別ですが、多くの作家の人は、小中規模の展覧会に参加することが多いと思います。
 小さい企画展やグループ展では、主催も出展者も一緒になって会場つくりをすることも少なくないと思います。
 そんな中で、搬入出について、とくに郵送宅配のことについて考察してみました。

 搬入出を委託でお願いしていたら、作品が破損した、梱包が現状と違った、ということは経験している作家の皆様も多いと思います。私自身も搬入出をお願いして戻ってきたら人形の指がばきばきだった、とか、絵が割れていた、ということもありました。
 そして私自身も元通りに搬出できなかった経験が幾度かありましたので、その経験から主催者側として・搬入出を依頼する側としての留意点をもう一度考えてみようと思いました。

現場では何が行われているか

 主催者サイドの視点として、搬入の現場がどんな感じなのか、というのをまずまとめて考えます。
 そこそこの展覧会・グループ展によって方法はかわりますが、おおむね私が参加して直接搬入できるところだったり、あるいは私が主催する場合ではありますがまず、こんな手順で展示をしてもらっています。

1)受付 (当日に支払のあるときは支払いも)
2)出展作品の確認(大きさ・形・点数など)(あらかじめ教えてもらってても当日変わる場合もあったり、小物(什器なども含め)が数に入っていないこともありますのでまずは確認を先にします。
3)場所の決定(あらかじめ決まっている場合以外は大きさで場所を決定します。当日じゃないと判断できないことも多いので、当日お願いします)
4)郵送宅配搬入の作品を受け取り・梱包を解きます(なるべく出展者に手伝ってもらうのではなくて主催者の時には自分で確認します)
5)配置後、出展者に確認のためSNSやメールその他で作品の配置の間違いがないかの確認をします。

 
 ざっくり大まかに書きましたが、当日の流れはこんな感じです。
 出展者の方に配置の手伝いをしていただくこともあります。
 設営の時間の最初から最後までがだいたいびっちり忙しくなるので、随分ばたばたしながらの作業になります。
 全員の配置が終わってから、主催者が自分のものをどこに置くか決めることも多いです。
 予定している数より減らすこともままあったり、足りなくて装飾品を用意することもあります。このあたりは当日の様子を見ながら考えていたりします。
 郵送搬入ですので、搬送中の破損もあります。私が主催の時にはあまりなかったのですが、搬入された作品がこわれていたりしたこともありました。壊れたまま展示するのかどうするのかもここで確認をします。当日連絡を取れない作家さんもいたりします。そういう場合は、会期中にどうするかを決定することがあります。
 それでは搬出の時にはどうするか、という話をしましょう。

1)作品・販売品の在庫の確認をします。
2)間違いなければ、それぞれ梱包し、送る準備を整えます(搬出伝票をいれてこられない作家さんもけっこう多くいらっしゃるので、そういう場合にはこちらで書きます(ちょっと手間です(苦笑))
3)車につめるときは持込で、大きいものが多いときには宅配業者の方に取りに来ていただきます。
4)直接搬出の作家さんはご自身の作品をまとめてもらいます。手伝ってくださる方は、ご自身の搬出のまとめが終わってからお願いすることがあります。
 
 これまでの企画展のほとんどは平面作品が代理の搬出だったので、少々送ってきたやり方と違っていても問題がなく送り返すことが出来ました。
 ですが、立体作品の場合、搬入のときの梱包に戻すのがとても困難だということが、先日手伝った搬出でわかりました。
 現場で一つ一つ搬入の写真を撮っておけばよかったと反省もするのですが、主催者側でそれをやるのはとても時間がかかって大変だということもわかりました。出展者として手伝っていてもそこまでの余裕が持てなかったので、ここはちゃんとマニュアル化しても良いところだなという反省を持ちました。
 そして、郵送宅配搬出のほうは主催者は先に郵送宅配搬出の作品を梱包しておく必要があります。これは、宅配業者の方に取りに来ていただく時間が限られているので、時間勝負でもほんとうにあるのです(汗)
 間に合わなかったりした分は結局持ち帰り、翌日地元から送ったこともありました。
 郵送搬出が遅い企画展はこういうことも原因の一つでもあるのかもしれない、と思ったりもしました。
 搬入出についてはギャラリー側が代理でやってくれることもあるので(梱包は主催者がしたとしても)、こちらはそれぞれの場所で問い合わせてみるといいと思います。

出展者としてどう準備したらいいだろう

 初出展のときなど、何をどうしていいかはわからなかったりします。
 作品を紙袋で郵送搬入された方も居て、作品の無事を祈りながら梱包を解いたこともありました。出展する側としてもこういう準備をしておくといいのではないか、ということをもう一度明確にしたほうが良いのではないかと思いました。

 私は過剰梱包の人でした。
 とにかく梱包材でぐるぐるに巻いて、そりゃ主催者の人は大変だったろうと今にしたら思うのですが、当日は作品を守ることに必死だったので、搬出の手間のことをあんまり考えていなかったのです。
 最近は主催を始めるようになってから、相変わらず過剰梱包ではありますが、なるべく主催者に迷惑の掛けない梱包を心がけようと思いました。
 そして、いろいろ失敗を繰り返した中で出展者としての搬入出の方法をちょっと自分自身にマニュアル化させようと思っているので、その一部を掲載します。

1)梱包材に名前をつける(作品Bなどというように、いくつかの作品がある場合にはわかりやすいように名前をつけます)
2)搬出の梱包用のマニュアルを添付する(搬出指示書を書いて一緒に同梱します。人形のときは特に慣れていない人のために搬出指示書をつけることにしました)
3)自分が搬入出にいけないときの場合の簡略化した展示方法の計画をあらかじめ立てておく(世界観を完璧に表現したいあまりに、小物を増やして人を困らせたことがありましたので、その経験からなるべく難しくない展示を考えるようにしています)

 3番目は絶対ではないですけど、特に人形などの立体の場合は難しいことが多かったので(思ったように設営してもらえないなども)、ここは自分の中のテーマとして考えるようになりました。

 1,2については自分が搬入が出来たけど搬出が出来ずに人に任せたとき、思ったことと違う梱包方法で届いてしまった経験から搬出のほうの指示に力を入れようと思ったのでした。
 人形に慣れていた展覧会の主催者でしたが、それでもそういう間違いは起きますし、実際私も期待されたとおりの搬出が出来ず迷惑をかけてしまったことがあります。詳細な搬出の手順は必要だと再度自分の中に確信しました。不幸な出来事を減らすためにも、出展者も主催者もそこを徹底しなくてはいけないと思ったのです。設営の手間と、搬出の手間を以下に省いて、かつ安全に搬出してもらうためには、ということを念頭において、ここしばらくは搬出の方法を画像つきで一緒に梱包するようにしています。
 梱包材込みでの説明も必要だと思うようもなりました。人間は自分で過信しているより頭がよくないのです(汗)
 記憶力も少ないのだと思いました。注意力も。
 足りないところを補う努力をしなくては、とも思いました。

 1の作品を包む梱包材に名前を入れるのは大事だと思いました。郵送で参加される作家さんの中に「物販用」などマステに書いてくださる方が居てとても便利でした。梱包方法も図解で出ていて、結果、そういうものがあったほうが主催者側の時には早くに搬出の手続きをとることができたのです。
 なので、梱包にも名前を、搬出の指示書には梱包と箱等に入れる順番の指示などを添付しておくのがベストだと思いました。
 同じ作品の搬入出での出展のときにまた使えますので、無駄にはなりません。
 「自分でも再現できる搬出」を目指すと、過剰梱包梱包不足も減るのではないかと思いました。
 
 そして、出展者も主催者も言えることですが、自分の記憶を過信せず、ちゃんと梱包を解く前の写真も残しておく、このひと手間が大事だと思いました。
 慣れている人だから大丈夫だろうという過信も、私には大いにあったので、これも「いつでも初心者に説明を」のつもりでむかうのがベストだと思いました。同時に「いつでも初心者のつもりで確認を」も含まれます。
 
 私もそうですが、遠方のものにとって「郵送宅配搬入出」は浮き輪のような大事な存在なのです。
 だからこれが出来なくなるのはとても困るし、よりよく出来る方法も必ずあるはずだ、と思いました。
 直接にいけるひとには解らない苦悩も苦痛も、そうして諦めることも多いので、そうならないためにも希望を持って出来る方法を、個人ではなくいろんな人がシェアできる形で考えたいと思います。

 今回はまず、こういうことだな、ということをまとめましたが、改めてまたこまかくまとめますね!
 出展者側マニュアルと、主催者側マニュアルを整備して、少しでも役に立てたらいいなと思います。
 裕樹でした。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?