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ひとを心から信じたい

スペインにある巡礼路カミーノ・デ・サンティアゴのことを知ったのは、2016年に友人がその道を歩いたことがきっかけだった。 
いつかわたしも歩くと決めていたカミーノ、それから3年後の春、ついに念願のその道を歩くことにした。

カミーノを歩くことが、いつか叶えたい夢から具体的な予定に変わった途端、カミーノを歩いたことがある方々と、不思議と、出会うようになった。

彼らの話を聞いていくと、歩くひとはみんな、なにかしらの「祈り」を胸に抱え、道を歩いているようだと気づく。
わたしの「祈り」は何だろうと考えた。

わたしの祈り 「ひとを心から信じたい」

家族も友人も恋人も好きだし、ひとに恵まれて生きてきた自信がある。
それでも、心のどこかで、わたしは目の前のひとを信じられていないと感じることがあった。
必ずしもひとを信じなければならないわけではないけれど、わたしにとって大事なひとを信じて、信じあって生きてみたいと思った。
信じることで、信頼することで、深い安心感のなかで生きていきたかった。

どんなところでひとを信じられていないと感じていたか、ひとからしたら、なんだそんなこと、、と思われてしまうかもしれない。

自分の意思を伝えるのが怖い

たとえば、趣味で山に登るとき。
個々の体力や歩くペースがちがう場合、休憩したい、水を飲みたいなど、自分の状態や要望をきちんと意思表示をして伝えることは、健康や安全に関わるので大切なことだ。わたしも、自分だけの問題ではなく、グループ全体のために必要なことだと自覚していた。
それをわかっていても、どんなに親しい友人との山登りでも、わたしにとっては、ちょっと休みたい、水を飲んでいいかな、ということを自分から伝えることが難しいことだった。

だれも拒まないことをわかっているけれど、だれかの邪魔をして、面倒な人間だと思われるかもしれないこと、自分の意思を伝えて、拒否されてしまうかもしれないことが怖かった。
そんなときに、わたしはひとを心から信じられていないのだと感じて、当たり前のようにそれをできる友人が羨ましく、また、素敵だと思っていた。

ひとりで歩く この特別な時間に自分を変える

カミーノはすべて自由。どこから歩き始めても、どこで歩き終えてもよい。
わたしが選んだのは、フランス人の道とよばれるルートで、フランスのサンジャン・ピエ・ド・ポーという山あいのちいさな町から、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂までの約780キロ。

自分の身体と心とよく話し合いながら、自分のペースで歩くこと。
出会ったひとを大切にして、ひとを信じる練習をすること。
サンティアゴへ向かう巡礼路の上で、自分を変えると決めた。

すべての行程を歩くことができるのか、どんなひとと出会うのか、期待と不安が入り混じった気持ちと、背中いっぱいの荷物を抱えて、4月の満月の日にわたしのサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼は始まった。
胸にちいさな祈りをしのばせて。

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