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「ウチのおカゲさんは、加減ってもんを知らねぇ!!」 第2話【漫画原作】

(本文4000字以内)

■学校の外観
(キーンコーンカーンコーン)
M:俺は今…
西岡先生「というわけで、先ほど用紙を配った通りだ」
M:…猛烈に悩んでいる!!

■机の上の進路報告書
西岡先生「来週の5者面談で使うので、記入しておくようにー」
M:この紙に、自分の夢を正直に記入するか否か!?
おカゲ「こんなもんバッと書いちまえよ!」
凪斗「できたら苦労しねぇよ…」
下位置にタイトル:
「ウチのおかげさんは、加減ってもんを知らねぇ!!」

■帰り道
凪斗「はぁ〜」
凪カゲ「進路報告書、何て書こう…」

凪斗「なっ!俺の心を勝手に代弁するな!」
タツヤ「凪斗、書くこと決まってないの?」
凪斗「決まってるけど、書いて良いのかなって…」
ユウコ「なんで?夢なんて自由に書いちゃえばいいのに!」
タカゲ「将来の夢かぁ、私たちにもそんな時期がありましたな」
ユカゲ「ユウコは何て書くつもり?」

ユウコ「私はクレープ屋さん!
    美味しいクレープを沢山の人に食べてもらうの」
タカゲ「タツヤは?」
タツヤ「俺は学校の先生!サッカー部の顧問になれば
    オトナになってもサッカーし放題じゃん!」
凪斗「ユウコはクレープ屋さんの制服、似合いそうだなぁ…。
   タツヤは成績も良いしサッカー上手いし、本当になるんだろうなぁ」

ユ&タ「凪斗は?」
凪斗「えーと…」
ユ&タ「?」
凪斗「忘れた!」(走って逃げる)

凪カゲ「あ、おい、凪斗待て!お先に失礼!」(凪斗を追う)

■夜、凪斗宅で夕食中
母「あなた、今度5者面談ですって」
父「楽しみだな。先生やカゲさんも交えて5者で
  凪斗の将来について話し合える貴重な機会だからな」
凪斗「お父さん、お母さん、その件なんだけど…
   実は、5者面談で使う進路報告書に、将来の夢を書く欄があって…」
父「それがどうかしたのか?」
母「凪ちゃんは年収いくら稼ぐ男になるのかしらね〜」
凪斗M:言えない!ガチガチの保守派二人に、本当の夢なんて…
凪斗「ど…どれくらい具体的に書けばいいと思う?」(誤魔化す)
父「そういう質問か!目標は具体的であればあるほどいいぞ!
  どこの会社のどこの部署のどんなプロジェクト…
  明確に書くことで、進める準備も明確になるんだ!」

凪斗「はは…参考にするよ…ありがとう」
おカゲ「・・・」

■風呂でも悩む凪斗、隣におカゲ
T:そしてー
■歯磨き中も悩む凪斗、隣におカゲ
■布団の中でも悩む凪斗、隣にカゲ
■トイレで悩む凪斗、隣におカゲ

■学校外観
T:5者面談当日ー。

■まだ白紙のままの進路報告書
モブ「この後5者面談か〜」「だりぃ〜」
凪斗「・・・」※デスク
おカゲ「…まだ書けねぇのか?」
凪斗「うん・・・」

■凪斗(目にクマ、焦点合わない)
凪斗「でも昨日YouTuberが
  「進路はトヨダ社員と書けば大体の親は喜ぶ」って言ってたから…」

■凪斗、震えるペンで「ト」…「ヨ」…と書き出す

■おカゲが両拳を組み、大きく振りかぶって、凪斗のデスクを叩き割る
おカゲ「んしゃおらぁあああ!」(進路報告書も真っ二つ)
凪斗「なぁっ!?」

■凪斗とおカゲ、向き合い胸ぐらを掴み合う
凪斗「何してんだてめぇゴラァァアアア!」(目がグルグルのまま)
おカゲ「こっちのセリフだごるぁああ!!将来なめとんのかお前!!」

モブたち「何だ?」「凪斗がおカゲと喧嘩してるぞ」
おカゲ「お前についてる俺の身にもなれ!
    ワクワクする将来を描けよ!手堅く決めてどうする?」
凪斗「ついてくれなんて頼んでねぇよ!」

※凪斗の机の中から『おカゲ消滅計画ノート』チラッと見える
タツヤ「あいつまだおカゲ消滅計画、諦めてないんだ…」※呆れて

■おカゲ、新しい進路報告書を取り出して黒板に固定(バン!)
おカゲ「仕方ねぇ!少々手荒だがこれも使命だ!」
凪斗「な!?」

■おカゲ、凪斗に鉛筆を握らせて、その手ごと掴み動かす
おカゲ「素直に書いちまえ!楽になるんだ!」
凪斗M:こいつ、何書こうとしてやがる…
凪斗「や、やめろぉ〜!」(血管浮き出る)
凪斗M:シャレになんねぇ!
凪斗、凪カゲの腕力に抗いつつも、進路報告書に文字を書かされる…

■記入しきると、強い風が吹いて、紙が飛ぶ
■その紙は、不運なことに、悪ガキリーダー・リョウの手元へ

リョウ「ん?何だこれ?」
かたまる凪斗「・・・!」

■進路報告書に「ベストセラー作家」の文字
リョウ「ブワハハハハ!お前、小説家目指してんの?無理無理!」

悪モブ「ギャハハ!現実見ろって!」
凪斗(赤面)「やめろ…」
リョウ「お前がこんな夢見がちガチ陰キャだとは思わなかったぜ…」
凪斗(涙)「やめろって言ってんだろぉ!」
おカゲ(シュッ!)
※瞬間移動してリョウの進路報告書を取り返そうとするが…
効果音:ガシィ!!
おカゲ「!」

■リョウにつくムキムキのおカゲと取っ組み合う形に
リョウカゲ「・・・」
凪カゲ「ぐぐっ…」
リョウカゲ「カゲはカゲ同士ヤリましょうや」

■リョウカゲと凪カゲ取っ組み合ったまま
 窓の外へ飛び出しグラウンドでもみくちゃに

凪斗「おカゲーーー!」
リョウ(背後から近づいてくる)

■リョウ1S
リョウ「小説家になる努力もロクにしてない奴が
    抜け抜けとベストセラー作家なんて書いてんじゃねぇよ!」

■凪斗UP(落雷)
効果音:ピッシャァアアア!

※言葉なくその場にへたり込む

■タツヤ、進路報告書を取り上げて
タツヤ「リョウ、おカゲが無理やり書かせた夢をネタにするなんて、
    趣味が悪いぜ!」
ユウコ「そうよ、凪ちゃんが可哀想よ!」
リョウ「ちっ!なんかシラけた、帰ろ帰ろ!」

■西岡先生、教室扉開けて呼びかけ
先生「次の面談、今西凪斗くんよ!
   お父さんお母さんがもうお見えになっています」

凪斗「はい…」
タツヤ「凪斗、これ…」※進路報告書
ユウコ「凪ちゃん、がんばって」
凪斗「うん、ありがとう」※教室をフラフラと出る

■先生、凪斗、父、母、(おカゲの席は空席)
先生「凪斗くんのおカゲさんはご不在のようですが、
   他の方の時間もあるので、予定通り始めさせていただきます」

父・母「はい」
先生「まず、凪斗くんの進路報告書ですが…「ベストセラー作家」?」
父・母「凪斗、どういうこと?」
凪斗「・・・」
父・母(失笑して)「…ふざけているのよね?」
先生「さっきチラッと見たけど、
   これはおカゲさんに無理やり書かされたもの?」

凪斗「・・・」
父「なんとか言ったらどうだ?」
母「凪斗!」
効果音:ガラッ!(後方から)

■部屋のドアが開き、おカゲさん登場(顔UP)
おカゲ「おめぇら揃いも揃って…
    これを凪斗本人が書いたとどうしても認めたくないようだなぁ!」

■おカゲさん全身
効果音:バァン!(全身タイツがボロボロで際どい露出度になっている)
父・母・先生・凪斗(どうしよう…キモい…!)

※グラウンドに全裸で転がるリョウカゲ(効果音:チーン)
父「だって凪斗は大手企業に勤める為に毎日勉強を頑張って…」
母「そうよ、習い事もあんなに通わせているのに…
  それを無駄にして売れない小説家になるなんてあんまりよ!」
凪斗(ピクッ)「誰が売れない小説家だって…?」
父・母「え?」
凪斗「ベストセラー作家って書いてあんだろ…」
先生「だ、だとしても進路が作家だなんて博打すぎます!
   これはおカゲさんの仕業!無効にしましょう!
   凪斗くん、後日頭を冷やして改めて提出…」

凪斗「違うんだ!!」
父・母・先生「?」
凪斗「この字は紛れもなく…俺の意志で書きました」
父・母・先生「!」
おカゲ「あぁ…俺は”ギリモザ界のカリスマAV監督”と
    書かせようとしたんだがな…!」
効果音:ドン!!
おカゲ「こいつのペンを動かす力が俺より上回っていたんだ…」

凪斗「あぁ、そうだよ…」(立ち上がり)

■凪斗とおカゲ、胸ぐらの掴みあい
凪斗「お前の思惑通りに筆を動かしたら
   何書かされるか分かったもんじゃねぇからなぁ!!
   咄嗟に浮かんだマジな夢を書くしかなかったっつーの!!」
おカゲ「俺がついてるからには面白そうな将来見据えないと許さねぇ!」

凪斗「俺はお前の暇つぶしの為に生きてるんじゃねーよ!!」
父・母・先生「・・・」
父「凪斗、本当に…なりたいんだな?」
凪斗「…ごめんなさい」
父「今西家の家訓は「努力こそ最大のリスクヘッジ」だ…」
先生M(ださっ)
父「だから、これから証明しなさい」
凪斗「え?」
父「根拠無き自信は人生を滅ぼす!
  だから凪斗がこの夢を実現できる根拠をいつか私に見せなさい」
おカゲ(ニヤッ)

凪斗「お父さん!」

■夕暮れ
凪斗「今日は、ありがとう。
   おカゲがいなきゃ、ずっと二人に夢をごまかし続けてたかも」
おカゲ「結果オーライだな」
凪斗「確かにリョウの言う通り…
   俺は小説家になる努力を何もしてこなかった…
   皆にも笑い者にされて…明日から学校に行くのが億劫だよ…」
おカゲ「皆に笑われたのが恥ずかしいのか?」

凪斗「そりゃそうだろ…
   俺がベストセラー作家になりたいだなんて、烏滸がましいのかな…」
おカゲ(ムズムズ)
凪斗「おカゲ、今、良いこと言おうとしてない?」

■おカゲ、凪斗に耳打ち
おカゲ「「夢」って字…なんで"くさかんむり"で書くか、知ってるか?」
凪斗「え?そうえいば…分からない…」
おカゲ「盛大に草(wwwwww)が生えるものだからだよ!
    人が無理だと笑うくらいの夢じゃなきゃ、夢って言わねぇんだ」

効果音:風が吹く音(ザァアアアア…!)
凪斗「いや、漢字が生まれた頃に草(w)って表現は無かっただろ…」
おカゲ「細けぇ奴だな!とにかく今日ちゃんと「夢」を語れていたのは
    クラスで凪斗だけだった!しっかりブチかませてたぜ!」
凪斗M:俺は1日も早くおカゲを消滅させ、オトナになる。
凪斗「…うん!」
凪斗M:だからその日までは…お前のクサい説法に付き合ってやるよ。

凪斗「ちなみにリョウの夢って何なんだろう」
おカゲ「家業の八百屋、継ぐらしいぜ」
凪斗「…そっか」

第3話「バイバイ、いとしのユウコちゃん」に続く


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