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お蔵入りのヒロイン

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私小説「お蔵入りのヒロイン」 (定期更新・ほぼノンフィクション)
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#恋愛

嘘が、心斎橋に飾られていた。

休日を苦痛に感じてしまうのには、ワケがある。 テレビ制作に携わる人間の仕事とプライベートの境界は曖昧だ。香ばしい新作Webマンガを見つければオフィスで堂々と読んだりするし、反対に、友人と過ごしていても放送ギリギリに修正の指示が出たら彼らを置き去りにして編集所へ戻ったりする。 ボクたちに約束された休日はないから、突然上司から休日をもらっても特段やりたいことが思い浮かばず、ボクはそんな自分に落胆するのだ。ちなみになぜ休日が急に決まるかと言うと、上司が「部下を管理している」と役

これは、キミがくれた夢

「お元気ですか?最近キミが遠い人になったって、みんな心配してるよ」    一眼レフカメラとロケ台本の間に置きざりのスマホが、大袈裟な文面を映し出した。   「へぇ。オマエって、遠い人になったの?」    先輩にスマホを覗かれ地獄のいじりを受けながらボクはAD(アシスタント・ディレクター)二年目を迎えた。  父親から金を借り就職留年を経て入社したテレビ局。その制作フロアで、コンテンツ制作と呼ぶには程遠い仕事に明け暮れていた。プロデューサーが使う会議室の予約、演出家が好むタバコ