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作詞における文学的変換能力

作詞は作曲と違ってこれといった理論がないので苦手。

どのサイトやブログをみても似たようなことしか書いていないし、勉強しようにも具体的な記述が少ないのでなかなか難しい。

テーマを決めましょう!季節とか登場人物の設定をしっかりしましょう!みたいなことしか書いてないことが多い。

もちろんそれは間違っていないけど、それを知っただけでいい歌詞が書けるとは限らない。

心の底から「良い」と思える歌詞を書くにはどうしたらいいのだろう。

最初に述べた通り作詞には理論がない。

作詞は音楽の1部というよりも文学と解釈したほうがいいのかもしれない。

様々な作詞に関するサイトを見て感じたことをまとめたいと思う。

まず主題はできる限り具体的にする。
× 恋人と別れて悲しい
△恋人にフラれて週末が憂鬱になった
〇恋人にフラれてから、以前は週末によく行ったどこそこに行くことがなくなった

ひとつに絞ってから広げることを大切にする。
直接表現をしてしまうとその1文で完結してしまうため、遠回しになっても構わないので主題を感じさせる「シーン」を描写することに専念する。

「彼女に振られた  憂鬱な週末」
と直接的な歌詞になってしまうと他に言うことがなくなってしまう...。
これがよくある「テーマはあるけど続きをどう書いていいかわからない」という状況に陥ってしまう原因のひとつではないかと思う。

つまりある主題に対してどれほど色んな角度から見て描写できるか、つまりはどう言い換えるかということではないかと思う。

これを文学的変換能力と呼びたい。これに付随する形で必然的に語彙力が求められるのではないかと考えている。

良い歌詞を書くアーティストやプロの作詞家はとにかくこれが上手いと気づいた。

もちろんやりすぎると難解な歌詞や理解されない文章になってしまうこともあるが、歌詞の場合は多少そうなってしまっても良いと思う。

あくまで歌詞である以上メロディにのせないといけないというルールがある。これが直接的すぎると、メロディよりも主張が強くなってしまう現象が起きる。

どんなに泣ける良いメロディを思いついたとしても歌詞がダサかったら雰囲気をぶち壊してしまう。

そういう意味ではそれほどまでに歌詞は曲にとって重要な役割を担っているとも言える。

ではどのように勉強すればいいのかという具体的な内容に入っていきたいと思う。

上記のことが理解できたとしても最初から良い描写ができるとは限らない。

そのため、まずはその逆を辿ってみる。

気に入った歌詞が見つかったらその歌詞がどういうことを言いたいのかを考察してみる。

出てきた結論と元の歌詞を見比べて言い換えの考え方を真似る。

これを何度か繰り返していくうちに自分の中である程度法則のようなものが出来上がってくる。

では今度は逆に簡単な例文を作ってみる。

それをいかに歌詞らしく変換できるかということを考えてみる。

作詞の勉強はこの1連の作業だと思う。

これが出来るようになると歌詞だけでなくちょっとした文章も詩的に変換できるようになる。

少し抽象的になってしまったのでここから先は実際の変換例を紹介したい。(実存する曲の歌詞に関する個人の解釈も含む)

悔しくて歯を食いしばって泣いた
→塩辛い水を噛んだ

雲がふわふわと浮かんでいる
 → 浮かんでいる雲 ふわふわと

あなたに会いたい
 → あなたには会えない

君のために頑張りたい
→ 君がいない僕は尽くせない

胸が痛い
→ 痛む胸が

1歩を踏み出す勇気が湧かない
 → 行方を拒んだ足が

待ち合わせの時間を過ぎているのに未だにあなたはここに来てくれない
 → 止まることを知らない あなたを待つ針は
 → (夏だったら)溶けていくアイスを見つめながら

何億年も先の未来
 → 脊椎がオパールになる頃

(米津玄師ライブツアー名)

高層ビルの絵を落描きする
→プラスチックの消しゴムで消した音が高層ビルを建設中

(リーガルリリー「17」)

彼女と別れたので同棲していたときに使っていた部屋にはもう誰もいない
→あの部屋のポストに置いてきた合鍵で開けるドアはもうどこにもないから

(クリープハイプ「オレンジ」)

大きな夢があるので 本当は弱くても大丈夫
→ 本当の僕らは弱くてもいい 確かな夢があれば

(Megashinnosuke「永遠の少年」)

自分の気持ちを伝えるのが苦手で、自分なりに一生懸命考えた言葉で 大切な人に気持ちを伝えてみた。でも思い返してみれば、共感性羞恥心とかいうやつで恥ずかしいって感情が込み上げてきた

→感受性の檻からあなたに贈った言葉さえ、共感の羞恥で排水になっていく

ほんとはそんな経験してないのに想像や嘘で創作をしようとするので思い通りにいかない
 → 芝居がかった自由自在にからめとられていく

(笹川真生「日本の九月の気層です」)

いくつか問題も載せておくので考えてみてほしい。

あなたの笑顔が素敵だと思う
 →

君のことがどんどん好きになっていく
 →

月曜日が憂鬱で何もやる気が起きない
 →

しんどい仕事が終わった後にお酒を飲む
 →

今回のお話はあくまでひとつ正解として考えられることであって必ず答えになる訳では無い。

作詞に悩んでる人は参考にしてもらえたら嬉しい。










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