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豚骨スープのように清らかな話


ラーメンが食べたい。こってこての。

その日の朝はもう起き抜けからこんな感じだった。たまにこういう気持ちから始まる朝ありません?私はあります。食いしん坊なので。

でも私は理性付きの食いしん坊なので、こういうときの5回のうち4回は自制します。5回の欲求全てに答えていたら今頃私は樽になっていることでしょう。樽みたいな体型。4回の踏みとどまれ精神のおかげでとりあえず丸太レベルに抑えられてます。ありがとう理性。

でも昨日はなんかその理性がうまく働かなかった、5分の1の確率の日でした。朝からいろんな用事を済ませて、これからもいろんな用事がある。でもラーメン食べたい。そしてそんなときに道端にみつけた魂心家の文字。この看板見て涎出ない人間いるんかな?

「コロナで自粛してたから今年一回もラーメン食べてないよね」「年に一回くらい豚骨ラーメン食べてもええやん」「こってこてやで〜」みたいな声がめっちゃ脳内で聞こえてくる。

「まあ確かに最近全然食べてないなこういうの。久しぶりに食べてみよう。確か死ぬほど多い量でもないし」 

こんな感じで昨日は理性に負けた方の日だった。ちなみに現金を持ち合わせていなかったので、走って銀行まで行ってお金をおろした。どんだけ食べたいんだ。

入店して食券を買う。もちろん味玉ラーメン。味玉以外食べる人いるんかな?それは普通にいるな。
なんかお店の中おじさんしかいない。21歳女子大生若干浮いてる。店員のお兄さんも「店間違えたんか?」みたいな顔してるけどそれは気のせいだと信じたい。

若干アウェイな空気の中「麺硬めで!」と食券を渡しました。「味は?」とお兄さんに聞かれて、そういえば味選ぶんだったと一瞬迷って塩と答える。昔塩選んだらサークルの同期に醤油じゃないなんて邪道だ!みたいなことを言われたのを思い出して、こんなアウェイの中塩を頼んでよかったんだろうかと思った。
そんなことを思っていたら、「〜〜〜〜〜か?」と聞かれた。全然聞こえん。さっきから思ってたけどこのお兄さんちょっと声小さいのよ。有線の音楽に負けちゃってるのよ。でもなんかオプション的な感じの質問っぽかったので、「大丈夫です!」と答えた。そしたら「え?」と言われて、なんかもうよくわかんなくなって「はい!」と言ってしまった。

案内された席に座るとお兄さんが「麺固めの塩麺ご飯〜」的なことをラーメン職人に叫んだ。いやおかしいやん??大盛りとか聞いてないしご飯って何?!幻聴?!てかラーメン職人にその声量で叫べるなら私にももうちょい声張ってくれん??

めちゃめちゃ悪い予感を感じ取りつつ店内を見回すと、「魂心家ではラーメンにご飯がついてきます!スープとのりと一緒にお召し上がりください」みたいな文言が書いてあって激びびった。魂心家ってデフォルトでご飯ついてくるタイプだったっけ?!ごはん?!

どうしよう、、、、今からなんか言おうかな、、、と思うけど店員さんは既に湯切りを始めている。しゃん!しゃん!と湯切ってる最中に話しかけたら私まで切られそうだったのでやめることにした。
でも流石にご飯はまずいよな、、、、ご飯まで出てくるなんて。でも何も言ってないのにご飯がついてくるって言うことは、ご飯をつけないことさえできないのではないか。
「え?あなた魂心家まできてご飯も食べないんですか?さわやかでハンバーグ食べないのと同じですよ?」とか言われたら困る。てかそもそも関西のお好み焼きスタイル的な感じで、ラーメンをおかずにご飯を食べるのかな。そうすると、
「こんなコテコテ大阪スタイルのラーメン屋にきてご飯無しにするんですか????あなた地元はどちら???」とか言われるかもしれない。どっちも嫌だ。

一人で悶々としてたら先にご飯が運ばれてきてしまった。まずい!もう無理だ!逃げられない!ここで「ラーメン+ご飯」が確定となる。ちなみにその後に隣に座ったお客さんは高らかに「ご飯なしで!」と叫んでいた。

そもそも魂心家は横浜家系ラーメンなので、関西人のことまで危惧する必要はなかったのだ。

そんなこんなでしっかりと大盛りのラーメンが運ばれてきてしまった。煮卵も2つ+うずら1個。完全栄養食品をたくさん入れることで罪悪感を減らす作戦なのだろうけど、全然減らないどころかハードル高まってるよ。

もう仕方ないのでずるずると麺を啜る。ほうれん草やチャーシューを早々に片付けつつ啜る。すんごい美味しいんだけど、ラーメンの隣に鎮座する白米が煽ってくるのがきつい。

さらに「ごはんはまず海苔と一緒に食べよう!そのあとチャーシューをトッピング、最後にラーメンのスープをかけて召し上がれ♩」みたいな文言が目の前に書いてあってやるせない気持ちを加速させる。私だってできるならそうやって一番美味しい食べ方をしてあげたい!でも胃袋には限界があるのよ!!!!


ものすごく考えた挙句、スープの中にいくばくかの麺を残しつつ白米を食べ終えた。ぱっと見完食した風。満足と後悔で脳内腸内ごちゃごちゃのまま、お店を後にしました。

世の中にはご飯がついてくるラーメン屋が存在するってことをちゃんと覚えておきたいと思った。また一つ大人になりました。
こうやって人間は食から色々なことを学び、楽しみ、ときに苦しむのであった。これは全部の要素がちょっと入っているお話です。



ここまで魂心家の話をずらずらと述べてきたけど、iPhoneで「こんしんや」と打っても「魂心家」と出てこないのはちょっといかがなもんですかね。六回も「たましいこころいえ」と打つハメになりました。今後の改善を願います。

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