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憧れ

定期的に純粋さが詰まっていそうな作品を見たくなる時期があって、かねてから友人に勧められていた『四月は君の嘘』のアニメを見始めた。まだ7話目か8話目かそのくらいだ。

ありがちといえばありがちなストーリーではあるけれど、セリフの言葉の選び方がすごく丁寧で心地よい。それに、天真爛漫なヒロインを画面越しに見ている僕らの感性を、主人公のひとり語りが完璧に言葉にしていって、話の世界に取り込まれていく。よくできている。

キャラクターに憧れさせられてしまう作品は、見終わったあとの反動みたいなものが大きい。普段は諦め感を基底において生きている自分の価値基準みたいなものを殴られてグラグラと揺れている感じがする。年を重ねることで増えていく諦め感と、年を重ねても変わらない憧れ(『四月は君の嘘』的にいうなら「恋」?)の間に葛藤が生まれる。結局どうすればよいのかわからなくなって時間が経てば諦めのほうへ漸近していってしまうんだけど。この葛藤の時間が貴重な時間であり、いろいろな作品をみる理由でもある。もっと年をとったら憧れることすらしなくなってしまうのかもしれない。そうでないといいな。

さらに言うなら、この葛藤をうまくすり合わせて、すべては無意味であるという諦め感の上に、しかし人間は憧れ何かに恋い焦がれる生き物なのだから、僕はその何かに向かって全力で走っているのである、みたいな状態になれるともっといい。