内田篤人現役引退の報に思うこと

内田篤人選手について、オンラインサロン「蹴球ゴールデン街」に書いた記事を、シェアします。

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【内田篤人インタビュー】
「REAL SPORTS」2020年4月9日掲載の記事より抜粋

(前略)

――ケガとの闘いは長かったですよね。ケガをしている間、不安もある中で前を向いてやるために、どういう気持ちで乗り越えてきたのですか?
内田:変な話、仕事って捉えると、契約をしている以上はやらなきゃいけない。自分の体の感覚というのはだんだんわかってくるので、自分の中では引退はそう遠くないなと。
――内田選手は、試合中に緊張しているような印象がまったくないですが、緊張することはあるんですか?
内田:昔はしていましたけど、たぶん場慣れなんでしょうね。今はないです。それを見せないというのも、プロとして大事だというのもあると思います。岩政(大樹)さんとか緊張しいで、恥ずかしがり屋だし、緊張しているのが隣で見ていてよくわかります(笑)。そういうところが僕から見ても、あれだけいろいろ教えてもらったけどかわいいなと(笑)。

――「引退はそう遠くない」と思うようになってから、見える景色の変化を感じたりはしますか?
内田:今シーズンが終わる時に、クラブから来年契約延長しないよって言われても全然不思議には思いません。そういう中で、今若い選手がけっこう入ってきましたけど、そういう選手と練習するのがすごく楽しくて。
――そうなんですね。
内田:例えば、僕が「あそこ見えてた?」と言って「見えてないです」とか、「見えてたけど、蹴れないもんな」みたいな話になって。「動けるヤツいいよなー」と言っている僕と、「見えている人いいなー」と言ってくる若手、そういうバランスが、けっこう面白いなと。今までは自分が試合に出るために、というのが第一でしたけど、「今の練習どんな感じなんだろう?」って監督目線で考えたり、「なんでアイツと交代したのか」と監督に聞きに行ったり。
――サッカーとの向き合い方が少しずつ変化してきたと。
内田:少しずつ。
――あと、鹿島に戻ってきてから、よりチームのことを考えるようになったように思えます。
内田:アイツはこういう性格だからとか、外国人はこうだからとか、バランスは考えるようになりましたね。

(中略)

――先ほど引退という言葉が出ましたが、引退後は、どんなビジョンを持っていますか?
内田:ざっくりですけど、最近、監督をやってみたいなってすごく思います。強化部もやってみたい。
――「チームを強くする」というところに、目線が行ってるんですね。
内田:そうなんですよ。コーチの立場で、強化部まで全部やらせてくれたら面白いのに。チームのルールもあると思うけれど、そういうのを全部変えてみたい。僕は幸運なことに、代表も含めいろいろな監督を見てきましたから。20人前後は。つまらない練習や、面白いけれど勝てない監督とか、いろいろ見てきましたし。
――鹿島は、Jリーグの中でもトップレベルのクラブで、“常勝軍団”として勝者のメンタリティーがあると思うんですけど、そのカギとは何だと思いますか?
内田:選手の質だと思います。
――結局、スカウティングの部分がすごく大事ということでしょうか。
内田:日本人選手に関しては、外れがない、良い選手を取ってくるなと思います。目立たなかったり、大丈夫かな?と思っていたような選手でも、結局チームに入ってきたら仕事するし。
――鹿島の場合、以前よりも海外に行ける選手が増えて、世代交代の早さを感じます。
内田:そうですね。そこは(フットボールダイレクターの鈴木)満さんも言っていました。(鈴木)優磨もそうですし、(安部)裕葵も(安西)幸輝もそうですが、20代前半の若さで海外に行く。そういう中でチームを作っていくというのは、すごく難しいことだと思います。今回も、高卒で良い選手が入ってきましたけど、その選手たちがまた、活躍したら2、3年で海外に行くかもしれないし。10年鹿島に居続ける選手のほうが、もう少なくなっているので。
――今はもう、5年すらいないですよね。
内田:そのようにチームの入れ替わりがある中で、一本筋が通っていたのは(小笠原)満男さんのような存在だと思うんですよ。曽ヶ端(準)さんとか。僕もそういう存在にならなきゃいけない。
――そういう意味では、引退はちゃんとチームに貢献してから?
内田:そう。頑張ってやれるところまではやるけど、鹿島がもういらないってなったら終わりですし、ちゃんと貢献できなかったなって思うと思います。
――でも、まだまだ現役ですし。
内田:まだ32歳ですからね。サッカー選手として、終わる年齢ではないです。

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本日、鹿島アントラーズが、内田篤人選手の現役引退を発表しました。上記のインタビューを実施したのは、新型コロナウイルスの影響が深刻になり始めたタイミングの3月25日。都内のホテルで会って話を聞いたのですが、この時にはすでに今シーズンで鹿島をやめる可能性はあるな、と感じていました。なので、もちろん原稿には書いていませんが、「来シーズン、南葛SCでどう?」とこの時点で誘ってます(笑)。まだ32歳だし、内田篤人に、もう一度、純粋にボールを蹴る楽しさを味わってほしいと思ったので。ちなみに、本人のリアクションはというと、まんざらでもなさそうな感じでした!(あくまで、おれの希望的観測込みの感覚です 笑)

内田篤人のことは、デビューシーズンからずっと取材してきました。ドイツ時代も含めて、おそらく10回以上はインタビューさせてもらったと思います。すごく人懐っこくて、誠実で、本質的な話が大好きで、サッカーの話も大好きで。インタビュアーとして、取材者として、彼の約15年のプロ生活をそばで見させてもらったことは、本当に幸運だったと思います。

一番の彼との思い出は、ドイツのホテルで、一緒にUEFAチャンピオンズリーグの試合を観ながら、Twitter経由で視聴者からの質問に片っ端から答える、という企画をやったことですかね。男二人でホテルの部屋に寝そべりながらテレビで試合を観て、2時間、質問に答えまくって、その間にもいろいろな話をして。

内田篤人のキャリアは、他の選手と比べても、かなり恵まれたキャリアだったと思います。特にシャルケでは、UEFAチャンピオンズリーグの常連だったクラブで、長くレギュラーとしてプレーし、ファン・サポーターにも本当に愛された存在でした。

一つだけ本当に残念なのが、多くの人に愛された内田篤人が、新型コロナウイルスのせいで、ラストゲームを制限つきの試合で迎えなければならないこと。これは誰のせいでもないけれど、ものすごく残念なことだし、本当にコロナが憎い。

ぜひとも、鹿島アントラーズには、コロナが落ち着いた後に、超満員のカシマスタジアムで内田篤人の引退試合をやってほしいと思います。一緒にプレーしたチームメート、ライバルたちに囲まれて、満面の笑顔を見せる内田篤人の姿を見られる日が来ることを切に願います。

篤人くん、約15年のプロ生活、おつかれさまでした。いつも、ちゃんと話してくれて、本当にありがとう。これからもよろしくお願いします!

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