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黒沢咲Mリーグ初のスッタンを内川へ。内川が魅せた戦略

チーム戦の魔力が跳満を見逃させ四暗刻単騎への振り込みを生み出した。


Mリーグ

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内川幸太郎選手によるnote


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Mリーグ2019:2月25日のpt状況、後半戦出場選手

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Mリーグ2019は8チームの総当たり戦の麻雀リーグで、90戦のプレステージの結果を経て、上位6チームがセミファイナルステージへ進出する。

現在2020/02/25のプレステージはチームによって際はあるものの、全チームが残り7戦前後になっている。

本日出場したの以下4チーム。

・ 角川:3位、99.1pt
・ 雷電:4位、-9.3pt
・ 赤坂:7位、-150.3pt
・ 風林:8位、-498.8pt

※ 角川=角川サクラナイツ、雷電=TEAM雷電、赤坂=赤坂ドリブンズ、風林=EX風林火山

※ ポイントは前半戦終了後のポイント

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Mリーグは半荘戦2回の、前半後半戦で選手が入れ替わる。

劇的な大逆転劇、四暗刻単騎のあがりが炸裂したのは2月25日の後半戦(2回戦目)。

後半戦の出場選手は以下の通り。

・ 角川:内川幸太郎
・ 雷電:勝又健志
・ 赤坂:村上淳
・ 雷電:黒沢咲


四暗刻単騎をあがった黒沢咲選手

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黒沢咲選手は、超門前思考の打ち手として知られており、通称「セレブ」と呼ばれている。解説をしていた白鳥翔プロは「門前の鬼」と評している。

黒沢咲選手が四暗刻単騎をあがったのは、自身の門前意識の高さがあったのかも知れない。

勝利者インタビューにて「四暗刻は意識していた」と話す。


不運にも1枚切れの西で、四暗刻単騎に振り込んでしまった内川幸太郎選手

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対して、四暗刻単騎へ振り込んでしまったのは内川幸太郎選手。イケメン雀士として人気が高く、その堅実な打ち筋から「手順マエストロ」の異名を持つ。

内川幸太郎選手は読みの能力も高く、また場況を考えたプレイが得意な選手だ。

オーラスを迎えた時点で下位2チームが1・2着を取りかねない状況、内川幸太郎選手は断ラス状態ながらチームポイントのアドバンテージがあるため難しい判断が要求された


チーム戦という難しい判断に内川幸太郎選手が下した決断。理屈としては正しい選択だった

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内川幸太郎選手は難しい判断に迫られた。

なぜならMリーグでは2試合あれば100pt~120ptを加点し、一気に240ptの差が埋まりかねないルールになっているためだ。


オーラスの点数状況でこのまま進めば7位の赤坂ドリブンズ所属の村上淳選手がトップを決める。

こうなると現在チーム3位の角川サクラナイツは点数状況が一気に接戦に持ち込まれてしまう。

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具体的な例をあげると、以下のように変化していまうわけだ。


赤坂ドリブンズの村上淳選手トップの場合

・ 角川:3位、 99.1pt →   +40.1pt
・ 雷電:4位、 -9.3pt →    -29.3pt
・ 赤坂:7位、-150.3pt → -100.3pt
・ 風林:8位、-498.8pt → -478.8pt

このポイントは概算だが、このままでは249.4ポイント差が140.4ポイント差になってしまう。一気に109ポイント近く追いつかれる計算だ。


そこで内川幸太郎選手はチームがセミファイナルへ出場できる可能性を増やすべく、

自身の着順アップは狙いつつも、
・ 7位のチームが上昇しないよう、8位のチームをアシストする

という方針に定めてプレイした。

これはチーム戦の戦略としてかなり高度な判断が必要となる。


しかし、この思惑が上手く行けば以下のようなポイントとなるため、概ねこの判断は正しいと考えてよいだろう。


EX風林火山の勝又健志選手トップの場合

・ 角川:3位、 99.1pt →   +40.1pt
・ 雷電:4位、 -9.3pt →    -29.3pt
・ 赤坂:7位、-150.3pt → -130.3pt
・ 風林:8位、-498.8pt → -448.8pt

ボーダーの赤坂ドリブンズとの差は170.4ポイントとなり、勝又健志選手をアシストする側に回ったほうが明らかに優位だ。

要するに、「30ポイント」もの差で、7位の赤坂ドリブンズをアシストする方が有利と考えられるのだ。

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内川幸太郎選手は流局寸前にまだ2向聴だった下家親番の勝又選手へなける牌を切りつつ試合をすすめ、上手くこの条件を達成できた。

しかし、それこそが悲劇の始まりだった。

Mリーグには親の和了り辞めがなく、強制的に次局を迎えることになる。

そう、

四暗刻単騎へのカウントダウンだ。


運命のイタズラ1 - 内川幸太郎、ツモが進みドラ爆へ

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黒沢咲選手は、ここで受けの広い⑦ピンをあえて外し、1枚切れの①ピンを残した。

解説を務めていた白鳥翔プロも「かなり強く暗刻手を意識している」と指摘していた。


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一方の内川幸太郎選手は、配牌で白が対子で表ドラ1と赤五萬のドラドラ手。そこから手が伸びに伸びて、ないても跳満という本手に仕上がっていく。


そこで下家から出た白をポン。

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この手をツモれば以下の点数となるため、勝又選手(風林火山)をトップにしつつ、自身も現在4着目から1着順アップを狙えるためだ。

・1 着:勝又 健志:風林、38,400
・2 着:村上  淳:赤坂、37,500
・3 着:内川幸太郎:角川、12,700
・4 着:黒沢  咲:雷電、11,500


もしくは、着順が変わらずとも村上淳選手や黒沢咲選手からは出あがりができる。

しかし、勝又健志選手からは出あがりはできない

・着順が上昇しない
・村上淳選手がトップとなり、全てが水泡と帰す

ためだ。


そして内川幸太郎選手の狙い通り、親の勝又健志選手がリーチをする。

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リーチドラ1で役がなく両面待ちで、更にはチームポイント的に加点が必要なため、勝又健志選手はノータイムでリーチを敢行した。


その同巡、黒沢咲選手が四暗刻単騎をテンパイ。

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解説陣も動揺を隠せない。

松嶋桃「スッタン! スッタン!」
白鳥翔「もうなんなの!」


運命のイタズラ2 - 3人テンパイ

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黒沢咲選手は更に次巡にツモった⑧ピンを暗槓する。そこから3巡進み、内川幸太郎選手にも聴牌が入る。

こうして、卓上には3人のテンパイ者がいる状況が生まれた。

・親:勝又 健志:待:4・7ソー、リーチドラ、残り2枚
・子:黒沢  咲:待:西単騎、四暗刻単騎、残り2枚
・子:内川幸太郎:待:④・⑦ピン、残り1枚

※ 残り枚数は流局間際にて、手牌で使われている枚数を除いた、
  実際の牌山に残っている枚数


運命のイタズラ3 - 内川幸太郎、唯一のあがり牌が、あがれない勝又健志からツモ切られる

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解説陣もこの⑦ピンに絶叫した。

「うわー、これは内川選手のあがり?」
「え、見逃し?」
そうか、あがれないんだ!」

この⑦ピンであがってしまうと自身の着順がアップしないばかりか、勝又健志選手が2着に転落し、村上淳選手がトップになってしまう。


この⑦ピン見逃しを疑問視する声はあるが、これはチーム状況と着順を考えれば当然の選択であることは、何度も確認したとおりだ

④・⑦ピンの残り枚数が1枚しかないことを知っているのは視聴者と解説陣だけなのだ。


運命のイタズラ4-西ラッシュ

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残り3枚となった最後の1巡。黒沢咲選手のあがり牌の西がまず村上淳選手に吸収された。唯一オリているところに四暗刻単騎のあがり牌が来たのは、むしろ不運以外のなんでもない。

これが勝又健志選手に入ったり、黒沢咲選手自身に入っていれば盤面は違ったのだ

そしてあろうことか、西が連続して固まっている。


下家の内川幸太郎選手のツモも、西だったのだ。

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さすがは内川幸太郎選手、プロである。
このきな臭い西をツモってきて苦悶の表情を見せて、長考する。

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なぜこの西を止めるかどうかの発想ができるのか。
あなたは理解できるだろうか。

1枚切れの西であり、しかも自身は跳満聴牌の状況でだ。


それには明確な3つの理由がある。

・ 次巡の海底牌で、勝又選手からあたり牌が出てもあがれない
・ 対面黒沢咲選手の河がきな臭く、聴牌に見える
・ 自身ノーテンで流れても、次局が確約される

という理由だ。

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(同巡の黒沢咲選手の目線での河。親リーの⑦後に、無筋・非現物の牌を何度も打っていることが確認できる。)


1枚切れの西は七対子の待牌としては優秀だ。
しかしだからといって、

そこから

四暗刻単騎に想像を膨らませるのはありえない。

ダマの七対子(2本場)に振ったとしても、自身がドラをほとんど手中に収めている以上、3,800点か7,000点、最悪でも12,000が関の山である。

Twitter上では、四暗刻単騎を読めたのではないかと憶測をするものは居るが、それは確率を知らない者の妄言だ。

四暗刻単騎が発生する確率は、たったの1万分の1程度である。ツモ四暗刻でさえ、2000分の1しかないのだ。

ツモ四暗刻に振っても、満貫から跳満が関の山だ。

確率の低いスッタンを警戒し、聴牌を崩すべき道理は皆無だ。そして、満貫・跳満どころか、役満に振ってもなおプラスなのである。


1万分の1の不運を元に内川幸太郎選手を責めるのは、あまりにも結果論が過ぎるのだ。


最終ポイント

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角川サクラナイツは、確かに手痛い結果になってしまった。

しかし、赤坂ドリブンズの村上淳選手を沈めることには成功している。

実際、村上淳選手をアシストしない状態の差は「140.4pt」になってしまうが、役満に振り込んだ結果を持ってしても、差は「156.2pt」であり、明らかな戦略勝ちとなっている

四暗刻単騎に振り込んだことを咎めるのであれば、32000点を献上しても、なお「15,800点」ものアドバンテージをチームにもたらした結果こそを褒め称えるべきだ


最後に

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内川幸太郎選手にしてみれば、最善に最善を尽くした上での不運、黒沢咲選手にしても自身を信じた上での幸運だ。

これは内川選手が不運だったと言うよりも、黒沢咲選手の豪腕が実った局と評したほうが良いだろう。

この1局は、Mリーグの名シーンとして、ぜひとも長く伝え続けていただきたい。

そしてこの素晴らしい試合の熱狂が皆さんに通じ、そしてそれぞれの選手の思惑の一部でも、本記事から伝われば本望だ。


最後に黒沢咲選手、四暗刻単騎
おめでとうございます!

内川幸太郎選手、素晴らしい闘牌でした!















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