仮面うつ病という病名がついた日


心療内科。
自分が行くことになるなんて思ってなかった。

今までの人生で度々、心療内科へ行くことが頭をよぎったことはある。
でも、最後の砦だと思っていた。

『おしまいだな。』

そう思いながらも、この苦しさや不安が自分の心の弱さのせいなのか、
そうじゃないのかをハッキリさせたかった。
出来ることなら後者であって欲しいと願った。

もうこれ以上は無理だった。

問診票を見ながら、心療内科の先生ってこうなのか?と思うほど、
突き抜けて明るい白髪混じりの先生が質問をする。

職場で過呼吸になったこと
少し前に胃炎を患っていたこと
仕事に行く前にひどい腹痛と下痢になること
寝ているのにずっと眠たいこと
電車に乗ると吐き気と動悸が止まらないこと

家族構成や今の生活について
きっかけは思い当たるかどうか
寝つきはいいかどうか

たくさんのことを聞いてくれて、たくさんのことを話した。

自分のことを話す機会がよっぽど無かったんだなと自覚するほど、
言葉が止まらなかった。

職場の人が少なくて、プレッシャーを感じていることや、
昇給されないことや、高圧的な話し方が苦痛に感じていることも。

最近のことだけでなく、中学生の頃から数年単位で、こういった落ち込む時期があることも。
自傷癖があったことも。

大学を卒業し、新卒で入社した会社も一年半で辞めたことも。
その時は謎の体調不良として近所の内科で血液検査をしたけど、
特に数値に異常はなく、自律神経失調症かもね、と。

ただそんな病名は無いらしい。
まだうつ病が世間一般に知られていない時代に、
うつ病として休職届を出すと、クビを切られることが多かったから、
何となくぼんやりとした自律神経失調症とつけたらしい。
それが今も一般に知れ渡っているんだと。

「あなたは"うつ病"ではありません。」

うつ病はきっかけが無い病気らしい。
太宰治みたいな症状がうつ病だと先生は言っていた。
仕事も家庭も順風満帆!誰から見ても幸せそのもの!
なのに、自殺してしまった。
本人曰く「お迎えが来ていたから」らしい。

私はきっかけがあった。
職場の同僚が辞めた辺りから、
プレッシャーと共に不安感が増していた。

そして、心療内科に行くまで仕事もしていた。

そんな私についた病名が、
"反応性抑うつ状態"
一般的に"仮面うつ病"と呼ばれる病気。

"仮面うつ病"なんて初めて聞いた。
回復の見込みは充分にあるから安心してね、と先生は言ってくれた。

「でもね、仮面うつ病ってね、周りの人から見たらうつ病になんて見えない病気なんですね。」

「責任感が強くて、しかも与えられた役目をこなせてしまう人だから、本人も気づかないうちに心を殺してしまうんです。」

「よくここまで頑張りましたね。」

その言葉に涙が止まらなかった。

『あぁ、自分って頑張ってたんだ。』

と、初めて自分のことを頑張っていたと思えた瞬間だった。

約一時間程の問診をしてもらい、比較的軽い薬を処方してもらった。

心療内科に行くことを最後の砦と思っていたけど、
もっと早くに行ってたら今は元気だったかもとタラレバを考えてしまうほど、
自分にとっては必要な場所だった。

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