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一方通行風呂【毎週SS】

「一度湯船から上がったら、宿舎に戻らないといけないの」
カピバラがポツリとつぶやいた。
「もう一回入るとだめなの」
「あれを守らないと飼育員さんに怒られるんだ」
温泉に見慣れぬ青に白矢印、
一方通行の標識である。
「僕もそうさ」
透明な湯船の底、大きく描かれた数字を指さす。
「この時間以外は入浴禁止なんだ」
「ふ~ん」
「あと、入る前に湯船の温度確認怠ったら1点減点」
「原点だと何になるの」
「ここの温泉が免停になって、入れなくなっちゃうんだ」
「人間も大変だね」
「君は、流れるプールとか行かないの?」
「何それ」
「お湯が一方向に流れていくんだ。浮かんでいるだけでも楽しいよ」
「好きな方向にいけないの?」
「みんな同じ方向にいくものだからね。そうかこれも一方通行だね」
「人間は、よく分からないものばかり作るんだね」
「面白いと思うんだけどな」
「ぼくは砂蒸しがあるからいいや」
そういうとカピバラはのそのそと湯船からあがり、
砂場の方へ歩いていきました。
(410文字)


文章に限らず、私の中で時折テーマとして出てくるのが
「パッと思いついたアイデアをいかに実現に起こせるか」
というもので、
これが意外と難しいのです。

「こうしたい」という理想形の願望があっても
想定通りに形にならないことが多いものです。

今回のお話もぱっと思いついた文章をどうにか紡いで
1本にまとまるかを試してみたのですが
果たしてどうでしょうね?

企画概要はこちらから。



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