からかさのレインコート【毎週SS:お化けレインコートより】
ぎゃああああああ!
公園の木々に雨宿りしていた鳥たちが
その悲鳴に驚き一斉に羽ばたいた。
「何してるんですか、からかささん!」
「旦那。あっしの、あっしの一張羅が……」
ショックのあまり言葉も出ない唐傘小僧。
傘故に曲がりはしないもが、心なしかうなだれているように感じた。
「なんで自分の傘広げちゃうんですか。
そりゃレインコートも破けるでしょうに」
「すいやせん。あまりの嬉しさについ」
あたりにはさっきまで唐傘小僧が着ていたレインコートが
ものの見事に真っ二つに裂けた状態で落ちている。
男は近くにあった屋根付きのベンチに
唐傘小僧を担いでいった。
「でもなんで急にレインコートなんか着たいって言いだしたんです?」
「最近、あっしの和紙が古くなって雨が染み込むようになっちまったんです。おかげで雨の日は仕事になりませんで」
「そんなの、和紙を張り替えたらいいじゃないですか」
「それが、ダメなんです」
「何がいけないんです?」
「張り替えたら、あっしは消えちまいます。
お化けとはいえ、あっしは付喪神みたいなもんですから」
二人の静かな沈黙の中、しとしとと雨音だけが響いていた。
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