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イリヤちゃんと薬漬けセックス

「俊也って、ちっちゃい子が好きなの?」
何気なくテレビを見ているときに、母がそう尋ねてきた。
その顔は神妙な面持ちでもなんでもなく、今日の晩御飯は何が食べたい?と言うような、日常会話のような面持ちで、僕にそう言ってきたのだ。
「いきなりこの人は何を言ってるんだ?」と思ったが、続けざまに母はこう言った。
「アニメとかのそういう女の子キャラって可愛い子多いもんねー。〇〇くんも小さい女の子のVTuber見て、可愛いってこの前言ってたよ。」と。
如何にも「私は理解ありますよ」というような感じで、2次元のロリキャラクターを可愛いと思うことについて、不自然な肯定をしてくるのだ。

僕は意味がわからなかった。
「なんだ?母にとって、26歳になっても彼女ができないという事は、そんなにも異常事態なのか?」確かに僕は母が26歳の時に生まれた子供だ。
母の感覚では26歳というのはある程度の恋愛を重ね、将来の伴侶を意識し、自分の子孫を育てるというステップに到達する年齢なのだろう。
そんな中でも彼女の一人も作らない癖に、女性と交流のある息子は、彼女ができないのでは無く、意図的に作ってないのでは?それは幼い子どもが好きだからなのでは?
僕は母がそのような極論に至ってしまったのだというように考察した。
しかし、僕はその答えに頭の中で辿り着いた。

「あ!?アレを見たのか?」

この日常会話のような雑談から遡ること2週間、僕は病院に入院していた。
両足がとんでも無く腫れ、歩けなくなるという謎の奇病にかかったからだ。
しかし、緊急入院だったため保険証などを持っていなかった。
さらに、当時はコロナ禍が少し開けたタイミングだったため、面会は親族のみに限られていた。
そのため親族である母親に保険証や生活に必要な道具などを、一式取って来て貰ったのだ。
そこできっと母は見たのだろう、テレビの前に無造作に置かれた『イリヤちゃんと薬漬けセックス』を…
この作品は『プリズマ☆イリヤ』という、魔法少女アニメに登場する、イリヤというキャラクターとキメセクをするという2次創作のエロ漫画だ。
注射器を持ったイリヤちゃんがアヘ顔を晒す姿が表紙には描かれており、イリヤちゃんの年齢は、パッと見た感じ、小学四年生くらいにしか見えない。
そんな幼い女の子が薬でガンギマリし、アヘ顔を晒しているこの漫画を、僕はテレビ台の上に置いていた。
「なぜそんな漫画を持ってるんだよ!!」
「お前ロリコンだろ!!」と思われるかもしれないが、これは断じて違う。

ある日、漫画家のパーティーに参加した際、名刺と一緒に「僕の作品です。よかったら読んでください」と作者本人から渡されたのだ。
人から渡されたものだったので、とりあえずテレビの前に置いておいて、そのうちどこかにしまおうと思っていた矢先に、例の奇病に罹ったのだ。
そして最悪なことに、母に『イリヤちゃんと薬漬けセックス』を見られたのだ。

『イリヤちゃんと薬漬けセックス』を見てしまった母の心情は想像を絶するであろう。
人より発達が遅かった僕は、特に勉強面などでかなり苦労したらしく。
小学生の頃は支援学級と普通学級を行ったり来たりしていた。
そんな手のかかる子供だった僕が育ち、ある程度人並みの人間として生活できている事に母は安堵していた。
しかし、その矢先の『イリヤちゃんと薬漬けセックス』である。
26年間の思い出がその瞬間、走馬灯のように頭の中でかけめぐったのは想像に容易い。
あの会話はこれまでのことを考え、覚悟の上でのあえての日常会話のような雑談ベースを選んだのだろう…
それを理解した瞬間、僕は地獄のような感情に苛まれた。
僕がロリコンじゃないことを証明するには、僕が成人女性を好きであるということを証明する必要があるわけだ。
しかし、それを今すぐ証明するのはキツすぎる。
かといって、ロリコンだと思われ続けるのも地獄である。
むしろ僕は、幼い子は絶対にそういう対象に見ないと決めている質である。
何故ならば、我々の仕事はメインの顧客がその年代だからだ。
YouTuberの中には中学生に手を出したり、中学生とセックスしたりするような輩もたまにいるが、そういう話を聞いたり、捕まった人を見るたびに吐き気がした。
「幼い子は僕達大人が守るべきものだろう!!」と僕は思っている。
そんな僕が!!!母親からロリコンだと思われている。
こんな地獄があっていいのだろうか。
むしろ僕がインフルエンサーをやってるのは、ロリとアクセスするためだと思われてたら最悪すぎる。
僕は親にロリコンではない…そして僕に彼女がいないのは単純に僕がモテないからである…という悲しい、とても悲しい説明をした。
こんなにも悲しい弁明を僕はこれまでの人生でした事がない…
そのまま僕は完治した自分の足で、テレビ台の前まで向かい、『イリヤちゃんと薬漬けセックス』を本棚の奥に、さらに奥にしまいこんだ。
『イリヤちゃんと薬漬けセックス』が今どこにあるのかは分からない。
将来、僕の大切な人、または自分の子供が、『イリヤちゃんと薬漬けセックス』を見つけないことを祈るばかりである。

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