企画展感想③:DIC川村記念美術館:マン・レイのオブジェ

2022年12月3日、東京から1時間ほど車を走らせ、とうとう行くことができた念願の企画展。
元々写真家としてのマン・レイの偉大さは感じていたが、今回の企画展はオブジェに絞った企画展。まだまだ見たことのないマン・レイが見れるかもとワクワクしていきました。
企画展の内容紹介の前に、美術館自体が非常に良かったので、そのご紹介をさせてください。

DIC川村記念美術館について

以下HPより引用
『DIC川村記念美術館は、DIC株式会社が関連企業とともに収集してきた美術品を公開する施設です。
20世紀美術に主眼を置いた多彩なコレクション、作品にふさわしい空間づくりを目指した建築、四季折々の変化が楽しめる豊かな自然環境。これら「作品」「建築」「自然」の三要素が調和した美術館として、1990年5月、千葉県佐倉市の総合研究所敷地内にオープンしました。
また、建築については、勝巳の盟友にして戦後モダニズムの代表的建築家・海老原一郎により設計されました。ツインタワーを特徴とする外観がまず目を引きますが、収蔵作品の精神性や大きさに見合う展示室、来館者が快適に鑑賞できるよう配慮した採光計画など、内部空間の繊細なバランスを最優先して設計された建築です。』

メインの建物写真

建物の外観も素晴らしいが、特に感動したのは建物内部。
以下のように円が何個も重なった幾何学的な天井に、女神の女像が置かれており、とても幽玄な空間を構築。どことなく、キリスト教教会を感じさせる佇まいで、美術館自体がとても見応えがあった。何度でも行きたい。
日曜日に行ったが、私たち以外にお客さんは片手で数える組数で、とてもゆっくりと作品に向き合うことができたところも満足度が高い。
美術館に行くには心のゆとりが必要で、そこにはお客さんの数が非常に大きな影響を持つと考えるので、その意味では、場所柄含め、とても自分にとっては良い美術館。美術館の収益は心配ではあるが。

メインの建物のホール。幻想的な佇まい。

企画展「マン・レイのオブジェ-日々是好物|いとしきものたち-」について

以下HPより引用
『マン・レイ(Man Ray, 1890–1976)は20世紀にアメリカとパリで活躍した芸術家で、絵画をはじめ写真、オブジェ、映画など多岐にわたる作品を手掛けました。本展は、作家が活動の後期より「我が愛しのオブジェ」と称したオブジェ作品に注目し、展観します。パリに憧れたユダヤ系アメリカ人として言葉の壁に当たり大戦に翻弄されながらも、多くの芸術家や愛する人との出会いと別れを繰り返し生きたマン・レイ。彼が生涯にわたり自由に制作したオブジェは、ものや言葉の詩的な組み合わせで成り立ちます。独自の手法で同じ主題のオブジェを再制作したことも特筆すべき点で、ここには「芸術作品のオリジナリティ」という大きな問いに対するひとつの提案が含まれています。本展では、国内所蔵のオブジェおよそ50点を軸として、関連する作品や資料を合わせた約150点をご紹介します。』

今回の展示会ではマン・レイの写真以外のほぼ全ての著名な作品が展示されていた。その中でも自分の心に刺さった2点を紹介する。

①ニューヨーク 17

万力と鉄で作られた《ニューヨーク 17》。
これだけを見て、ニューヨークだと想定できてしまうから面白い。
生で見ると本当に摩天楼とそこにまとわりつく人々の生活、時間空間ごと圧迫するニューヨークという都市の切迫さが表されている。

ニューヨーク 17

②天文台の時ー恋人たち

こちらはマン・レイの元を去った恋人リー・ミラーの唇が空に浮いているという油絵である。
生で見ると唇の色の艶かしさや、空一面に唇を配置するという発想、そこから想起されるリー・ミラーへの執着がありありと感じられる。
パーツとしての身体・部分への愛をもっと持とうと思うことができた。

天文台の時ー恋人たち

マン・レイと同時代に生きていればもっとこの作品群には衝撃を受けたかもしれない。
マン・レイの作品は生で見ることで、自分たちの様々な感情を想起させ、そこには自分が向き合いたくなかった感情も含まれる。そういう意味でもアートなのだとこの展覧会を通して考えた。

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