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眼科の救急疾患 ~放置していたら失明しますよ~

夜中に突然、目が痛くなったら?自分のお子さんが見えない!と夜中に言いだしたら?貴方はどうしますか?もちろん、直ぐに救急車を呼ぶ方もいるでしょう。それが間違いないのですが、夜間の救急外来に眼科医がいないことも往々にしてよくあることなのです。そんな時、少しでも知識があったら未来が変わってくるかもしれません。

急に視界が真っ暗になった時、救急車を呼びますが知識がない方は救急が来るまで横になっているだけかもしれません。しかし、それでは手遅れになる場合も、、、、。そんな時!知識がある方は適切なマッサージをして視力が失われるのを遅らせることもできるのです。

また、これからお話する知識は眼科で勤務するスタッフの方々も理解していて損はないでしょう。

今回は、特に夜間や休日の救急診療において注意すべき疾患について述べます。


【痛みの強いもの】

コンタクトレンズ障害
眼科救急で強い痛みを伴うものといえば、ほとんどは角膜障害です(もちろんけんか、スポーツ、事故などによる外傷もありますが)。代表的なのがコンタクトレンズ障害です。多くはコンタクトが古かったり、装用方法や手入れが不適切なケースです。タリビッドなどの眼軟膏または点眼を処方するくらいしか対処法はありません。鎮痛剤の内服はあまり効きません。

角膜異物
金属を削る作業中に生じる鉄片などの角膜異物もかなり痛いようです。ベノキシール点眼や点眼用4%キシロカインで表面麻酔をしてから細かい鑷子などで摘出しますが、非常に小さい異物なので、肉眼では(特に普通の外科用鑷子では)難しい場合もあります。鉄片異物で時間がたったものはまわりに錆が生じており、この錆も含めて除去する必要がありますので、鉄片本体が除去できればよしとして早めに眼科の受診を指導するのが望ましいと考えます。
うわまぶたの裏の眼瞼結膜異物も痛みが強いです。うわまぶたをひっくり返してみるとまぶたのふちから少し離れたところ(異物溝と呼ばれています)に引っかかっていることがほとんどであり、異物を除去することによって痛みはすぐに軽くなります。上眼瞼の翻転さえできれば比較的簡単な処置と言えます。念のため抗菌剤の点眼を処方しておきます。

紫外線による角膜障害
たまにあるのが紫外線による角膜障害です。熔接を保護メガネなしで行うと数時間以上たってから(通常夜間に)痛みが出現します。自分で熔接していなくても、そばにいて見ているだけでも発症することがあります。また、スキーの後に目が痛くなるいわゆる雪眼も紫外線による角膜障害です。中には日焼けサロンで受傷するケースもあるようです。前述の理由により点眼麻酔剤は処方できませんので、抗菌剤の点眼または眼軟膏を処方します。

【最も緊急性の高いもの】(受診前の処置が必要なもの)

片目の視力がほとんどなくなります。一瞬にして症状が完成すること、視野全体が真っ暗になることが特徴です。原因は血栓などが網膜中心動脈という細い動脈をつまらせてしまうために、網膜の血流が途絶してしまうことです。したがって、心房細動などの不整脈や、動脈の閉塞・炎症を持病とする方が多いです。症状が特徴的なので、問診のみで診断することができることも多い疾患です。
すぐに血流が戻れば視力も回復しますが、およそ20分もたつと回復が非常に難しくなります。したがって、この疾患の処置は一刻を争います。電話などで問い合わせがあったら、即座につぎのような処置を指示し、来院後に95%O2+5%CO2の吸入、ウロキナーゼなどの線溶剤点滴、前房穿刺(急激に眼圧を下げるため)などの処置を行います。発症からある程度時間がたっていても、時に回復する幸運な方もいらっしゃるので、回復の見込みがあまりない場合でも状況によっては治療を試みる価値があるように思います。

 
<救急が到着する前に出来る初期治療>

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