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鳥が飛び立つ時

湖や池に浮かんでいる渡り鳥が羨ましいと思った時期があった。
寒くて凍るような水の中に気持ち良さそうにプカプカ浮かんで休んでいるカモやカモメたち。
水面では足が忙しく常に水を掻いているらしいけど、何だか優雅で自由を満喫している風にも見える。
夫が運転する車の助手席に座って、車窓から眺める鳥たちは自分を見失う事などなさそうに見えた。

20代後半、7年勤めた会社を退社して実家に帰省して、新しいことをしたくてウズウズしてた。
そんな時に夫と出逢って、結婚して一緒に家庭を作ることがどんな仕事をすることより素晴らしいことのように思えた。

結婚して子どもを育てながら、気が付けば自分の環境が大きく変わっている。無我夢中の時には見えなかった余裕が、隙間を埋めるように私に夢を見させていた。
だけど進む道は決まっていて、今でもそこに安らぎを感じている。
間違ってはいない。
自分で選んだのだ。
後悔もしていない。
何度やり直してもきっと同じ道を選ぶはず。
でも鳥がいっせいに飛び立つ時、いても立ってもいられなくなる。

渡り鳥が一斉に飛び立ち、見事なVサインを作りながら飛ぶ姿は、いつも私を突き動かす。


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