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創作|彼女

彼女はいつも同じところに立っている。
彼女の髪は艶やかな漆黒で、セーラー服を着ている。
顔立ちは目鼻立ちがくっきりとしていてテレビなどでみる芸能人よりもよっぽど美しいと感じた。
彼女は学生なのに平日の真昼間も、休日の夕方でもいつでも同じ様に静かに立っている。
彼女を毎日見つめるのが日課になった。
ある日、図書館でふと見かけた新聞記事に見覚えのある少女を見つけた。
彼女だった。
記事には「行方不明」とある。
その記事によると行方不明になってから十年がたつとのことだ。
彼女は私にしか見えていないことから薄々感じてはいたが改めて思い知らされた。
彼女は死んでいた。
翌日、彼女のいる場所に花を手向けた。
記事の写真で彼女の背景にあったコスモスの花束を。
見上げると彼女と初めて目が合った。
彼女は微笑んでいた。
次の日から彼女はそこにいなかった。
彼女はいったいどこで亡くなったのだろう。
少なくともあの場所は彼女にとって思い入れのある場所なのだろうか。
相変わらず、私は死者が見えることがある。
そのたびに私は彼女を思い出す。
あの美しい黒髪の彼女を。

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