家でビッグマックをつくる 完成編
マクドナルドは100以上の国と地域で40000店舗以上展開する世界的ファーストフードチェーンである。それぞれの地域でその地域性に合わせたメニューが展開されており、特色のあるハンバーガーが販売される中、ほとんどの地域でほぼ共通の材料と調理法で提供されているハンバーガーがある。
その名はビッグマック。
ある日、仕事中にビッグマックについて考えていると、唐突にいくつかの疑問がふつふつと湧き上がってきた。あのバランスはどのようにしてつくられているのだろうか?ビッグマックは家庭でつくることができるのか?そして、ビッグマックはもっとおいしくなるのだろうか?いてもたってもいられなくなった私は、ビッグマックを自作することを決意し、まず手始めにビッグマックを理解するため、マクドナルドへ向かった。
ビッグマックを理解する
ビッグマックの誕生は1967年にさかのぼる。ペンシルベニア州にあるマクドナルドのフランチャイズオーナーであるジム・デリガッティ氏は、近隣のファーストフードチェーン店との競争に勝つために、新しいハンバーガーを考案した。それは3つに切り分けたバンズを重ねた二階建ての構造が特徴で、大人向けのボリューミーなものだった。このハンバーガーはたちまち評判になり、翌年にはアメリカ全土で販売されることになった。
このハンバーガーの名前には、当時マクドナルドの広告部門に勤務していたエスター・グリックステイン・ローズ氏の提案した「ビッグマック」が採用された。名前に「マック」を冠していることからも、当時の期待が伺える。日本では1971年にマクドナルドの1号店が開業した当時から、看板商品として販売されている。
ビッグマックの歴史を理解したところで、いよいよ中身を調べていこう。改めて、買ってきたビッグマックを観察する。
ビッグマックは専用の箱に入っている。文字がでかい。特にcの文字が上面から飛び出しているあたりがわんぱくで大変よい。フォントはおそらくHelveticaだろう。シンプルかつ個性のあるパッケージだ。
中身が見えやすいように少しずらして本体を撮影した。3つに分かれたバンズにはそれぞれ名前がついており、上から順に「クラウン」「クラブ」「ヒール」と呼ばれる。クラウンとクラブの間には、パティ、ピクルス、レタス、ソース、オニオンが挟まれており、クラブとヒールの間にはパティ、チーズ、レタス、ソース、オニオンが挟まれている。レタスは細切りでオニオンは微塵切りになっている。
ソースからは甘さと酸味を感じる。舌触りは滑らかでサウザンアイランド系の味わいだ。ただし、パティの塩気と肉肉しさに打ち勝つほどの強さはない。味の核になるのはあくまでもパティだ。ここで重要な役割を果たしてくるのがピクルスで、酸味が絶妙なアクセントをもたらしている。ソースとピクルスの2つの酸味が食欲を引き立て、ボリューミーなビッグマックをおいしく食べることを可能にする。
それにしてもうまい。素晴らしい完成度である。
より強いビッグマックに会いに行く
では、ビッグマックの制作に移ろう。基本的には本家ビッグマックをリスペクトし、なるべく同じようにつくっていくが、より美味しくなると感じた要素についてはレベルアップを図る。より強いビッグマックに会いたいからだ。
材料をそろえる
簡単なものから考えていこう。まず、レタスだが、ビッグマックに使われているものと同様に、玉レタスを細切りにする。ここはなるべく新鮮なものを使うくらいしか工夫の余地は無さそうだ。オニオンも同様に微塵切りにして水にさらしておく。
次にチーズ。公式ホームページによると、このチーズはプロセスチーズなので、市販のチェダーチーズスライスを使用する。チェダーチーズスライスはちょっと大きめのスーパーに行けば大抵置いてある。
ピクルスはスーパーだと缶詰や瓶を扱うコーナーにだいたい置いてある。カルディのような輸入食品を取り扱う店にも確実にあるはずだ。今回は家にたまたまあったスイートピクルスを使う。
パティ、バンズ、ソースについてはレシピを考えて料理をする必要があるため、以下で個別に説明する。
パティをつくる
マクドナルドの公式ホームページにはパティの生産者を紹介する記述があり、パティのつくり方に関しても言及されている。それによるとパティはビーフ100%でつなぎは一切使用せず、味付けは塩コショウのみというシンプルなものになっている。
今回はこの作り方を踏襲しつつ、甘みを出すための砂糖と、肉と相性の良いスパイスであるナツメグを加えてみる。牛挽肉300gで作ったら、約5枚分(ビッグマック2.5個分)と半端な数になったが、そのまま記載する。
材料(5枚分)
牛挽肉 300g
塩 5g
砂糖 15g
胡椒 適量
ナツメグ 適量
全部混ぜてこねて整形して焼くだけだ。焼く時に縮んで高さが増すことを考慮して、薄く大きめに整形した。パティを焼く時は縮むのをなるべく抑えたいので、フライ返しなどで押しつけながら焼く。本当はミートプレスがあると格好がつくのだが、飲食店でもないしこのやり方で十分だろう。
バンズをつくる
バンズも公式ホームページに記述があるが、レシピの参考になるような具体的な情報は何も得られないので、自分の好きなようにやろうと思う。正直ここが本家ビッグマックと一番差がつく部分だろう。材料は以下の通り。
材料(5個分)
強力粉 260g
塩 5g
砂糖 18g
ドライイースト 5g
無塩バター 16g
水 160g
卵(塗る用) 適量
ごま 適量
配分は、出来上がりをイメージしつつ、過去に作ったバンズのレシピから調整して考えた。作り方自体は、YouTubeでバンズと検索して出てくる動画とだいたい同じようにやってるので割愛する。焼く直前に上面に溶き卵を塗り、ごまをふりかける。バンズは3つに切り分けたいので、高さを出すためにクッキングシートを輪っかにしたもので囲った。画像では3つ分しか囲えていないが、これは途中でめんどくさくなっただけ。
190℃のオーブンで20分程度様子を見ながら焼いた。当たり前と言えば当たり前だが、クッキングシートで輪っかを作ったものの方が、高さが出ていて使いやすそうなので、そちらを採用する。
ソースをつくる
ソースは市販品を活用する案と自作する案を検討して、両方のパターンを試した。この記事では、つくりやすさの観点から、市販品を活用する案を紹介する。自作する案は、レシピ製作の過程を書いていたらめちゃくちゃ長くなったので、別の記事にした。時間に余裕があるのならそちらもご覧いただきたい。自作の方が本家の味に近くなるが、本家と食べ比べるわけでもないので、どちらを使っていただいても構わない。
家でビッグマックをつくる ソース編
さて、市販品を活用する案だが、コストコを散歩していたらこんな商品を見つけた。
ビッグマックのソースに色がそっくりで期待できる。3つで1セットだったので「そんなにハンバーガー食わねえよ…」と一瞬躊躇したが、「まあ、ハンバーガーたくさん食えばいいか」と開き直ることで購入できた。
味見をしたところ、細部のニュアンスは異なるものの、かなり近いと感じたのでこれを使うことに決めた。というかこれを使わないとハンバーガーにしか使えないソースが3本も余るので使うしかない。ビッグマックのソースと違い、刻んだピクルス(レリッシュ)は入っていないので、これだけは追加する必要がある。
ということで、市販品バージョンの材料は以下の通り。
材料
ハインツバーガーソース 適量
刻んだピクルス 適量
ハンバーガーを組み立てる
ビッグマックの構成要素が完成したので、いよいよハンバーガーをつくっていく。材料を書き終わってから気づいたが、基本的に全部適量なのでわざわざ書くほどでもなかった気もする。
材料
バンズ 1つ
パティ 2枚
チェダーチーズスライス 1枚
レタス 適量
オニオン 適量
ピクルス 適量
ソース 適量
まず、バンズを3つに切り分ける。それぞれをトースターで軽くトーストする。トーストはできたてハンバーガーのおいしさを左右する重要な要素なので、必ずやった方がいい。
下から重ねて完成。重ねる順番は以下の通り。
ヒール→オニオン→ソース→レタス→チーズ→パティ→クラブ→オニオン→ソース→レタス→ピクルス→パティ→クラウン
感想
うまい。味は構造はかなりビッグマックに近い。ビッグマックを目指したので当然ではある。本家ビッグマックの味の箇所でも述べたように、肉肉しさに酸味のアクセントが加わった味わいだ。ハンバーガーの一つの完成系と言いきっても良い。
パティは砂糖やナツメグを入れたためか、本家のものと比べて上品な味わいになった。もしジャンキーさをより感じたいなら塩を増やすか、本家同様に塩胡椒のみでもいいだろう。
本家と異なる部分として最も印象的だったのはバンズである。もっちり感が強く、トーストした香ばしさも感じる。やはり焼きたてのパンはめちゃくちゃ美味しい。
一方で、そのバンズが仇となった部分もあった。画像からもわかる通り高さがあるため、非常に食べづらい。私はハンバーガーを食べるのはそれなりに得意な方だが、それでも終盤には完全に崩れてしまった。本家ビッグマックのあの大きさが2階建てバーガーをうまく食べれる限界サイズなのだろう。つまり、本家ビッグマックはバーガーとしての利便性とおいしさを実に絶妙なバランスで成り立たせたハンバーガーなのだ。こうして、ビッグマックに対するリスペクトがまた一段と深まった。
食べ終わって感じたこと
直前で「リスペクトが深まった」とか言っておいて元も子もないが、正直言ってあの二階建て構造でなくても、味は同じだと思う。つまり、もっとおいしく、もっと食べやすいビッグマックがあるはずだ。
というわけで、以下の記事でより食べやすいビッグマックに取り組んでみた。本稿では、あくまでもビッグマックのスタイルを保ちつつビッグマックのブラッシュアップに取り組んだが、この記事では味の要素を残しつつ、その他の部分についてアレンジを試みた。こちらも是非ご覧いただきたい。
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