全裸賛美歌

人はこの世に産声を上げた瞬間、全裸だ。その瞬間、医者、看護師、母親、大衆の前で全裸になっても罰せられることはない。自由だ。だが、そんな自由は、タオルにくるまれてあっという間に終わる。

それから僕たちは、「人前で全裸になってはいけない」と教え込まれ、やがて人に裸を見られることを恥と思うようになる。

でも、心の奥ではみな全裸になりたいのだ。

だから僕は今、全裸になっている。家でね。

家は良いものだ。自分だけのテリトリーで、何をしても許される無法地帯。外で全裸になれば、「露出狂」と言われ、後ろ指をさされ、警察に連れて行かれる。

でも家なら、家なら、全裸になってもいいし、オチンコを露わにしていいし、思いっきり腰を動かしてオチンコを下腹部と肛門の間でペチンペチンさせてもいい!

誰も怒らない、誰も後ろ指をささない、警察も来ない。僕だけの全裸。僕だけのオチンコ。僕だけのペチンペチン。

このペチンペチンは拍手だ。人を作りし神が全裸になった者にのみ与える祝福だ。

僕は真の自由を手に入れたのだ。窓を開放して地球の息吹を肌身で感じるのもいい。うつ伏せになりケツを突き上げ、肛門に新鮮な空気をくぐらせリフレッシュするのもいいな。

今、僕は玄関の前で、ドアノブを握って突っ伏している。

ドアを一枚挟んで向こう側は現実だ。今、ドアノブをひねり、そよ風のようにやさしくドアを押せば僕は犯罪者だ。向こう側に出れば、僕は不審者情報デビューしてしまう。

襲いかかる背徳感、だけどその先に見える開放感。もしドアを開ければ、きっと戻ってこれなくなる。露出狂になってしまう! たとえ世界を救った英雄でも外で全裸になれば犯罪者だ!! 一瞬よぎる開放感。どうする! どうする!! どうする・・・・。

「結局、僕の自由はありふれたアパートの1Kにしかないんだ」

そう言い聞かせてドアノブから手を離した。背徳感の残り香が、まだ僕を焦らせてる。

とりあえず、うつ伏せになりケツを突き上げ、肛門に新鮮な空気をくぐらせて気持ちをリフレッシュさせよう。

それが終わったら、とりあえず着替えて仕事に行こ。

そんで、帰ってきたらぜーーんぶ脱いで全裸になる。やっぱり全裸はやめられないんだな。

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