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ERA検査は有害!?

大変驚くべき論文が出てきました。
ERA検査の有効性を真っ向から否定する大規模な研究で、
しかもその著者の中に、ERA検査の開発メンバーが含まれています。

かなり波乱含みのこの論文、今後の展開に注目が集まります。
論文=すごい!ではなく、必ず主張が違う集団が存在しているので、
そちら側の主張を聞かなければ真偽のほどはわからないというのが通常の考え方です。

Mauro Cozzolino et al.Fertil Steril 2021; 118, in press

スペインの複数のクリニックにおいて、初回胚移植で陰性だった方を対象に、2回目胚移植に際してERA検査を実施して移植日を決定した群(ERA群)とERA検査を実施しなかった群の妊娠成績を後方視的に検討したという研究です。

単一施設ではないので、信用度は若干高くなりますね。

3,239 件の自己卵移植と 2,133 件のドナー卵移植が得られました。
自己卵移植のうち、255 例は ERA によって指定された胚移植でした。それ以外は1,122件の新鮮胚移植と1,862件凍結胚移植が含まれていました。
ドナー卵移植のうち、319 件は ERA によって指定された胚移植でした。それ以外は1,175件の新鮮胚移植 と 639件の凍結胚移植でした。

こうして見ていくと、日本に比べて、そもそも新鮮胚移植の比率が高いこと、そして、ドナー移植が多いことがわかります(ドナー移植を売りにしたクリニックなのかもしれませんが)

評価指標としては、胚移植ごとの生児出生率と、生児出生または妊娠中止までの連続移植での累積生児出生率でした。
副次評価項目は、着床、妊娠率、胚移植あたりの臨床的妊娠率、および妊娠あたりの流産率でした。

【結果】

いずれにおいても、出生率および累積生児出生率は、FET および fsET で、正倍数性移植を行った場合でも、ERAグループよりも高かった。
考えられる交絡因子を考慮したロジスティック回帰分析では、pET を受けた患者は、自家サイクルおよびドナーサイクルで FET および fsET を受けた患者よりも転帰が悪いことが示されました。
副次評価項目である着床、妊娠、および臨床的妊娠率は、pET を受けた患者の方が低かった。

ERAを実施する意味がない、ということよりも、ERAをすると悪くなる、という報告内容のように思えます

table1
table2

ERAは内膜スクラッチ的な要素とその検査内容の2つの意味合いがあります。
この報告が、スクラッチによる悪い部分を指摘しているのか、
そもそも着床の窓という概念を否定しているのかは、今後注目したいと思います。

それにしても、開発者が入っているという点がとても珍しく、今後の動向に注目したいと思います。


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