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男性にとっての禁欲期間

男性からよくいただく質問で、

「精液検査に禁欲期間は必要ですか?」
という質問が寄せられます。

これは
「精子を貯めておいた方が、良い精子が得られるのではないか」
と考える方が多くいらっしゃいますが、正しくありません。

精液検査に禁欲機関は必要か?

Fertility and Sterilityで紹介されている論文があります。

合計9000超の精液のサンプルを、正常精子数の検体と精子が少ない検体(いわゆる乏精子症、精子数<2000万/mL)に分けて、検討したものです。

この結果によれば、

・精子数が正常な方は、11日以上の禁欲期間を置くと、精子の運動率と形態正常精子の数が低下した
・精子数が少ない方は、禁欲期間を1日とした際に最も精子運動率がよく、禁欲期間0-2日の間が正常形態精子が最も多く得られた

ということがわかっています。

精液検査をするのに問題ない期間ということだけではなく、

「最も良い精子を得るために」

という視点で考えると、

正常精子数の方は多くとも7日以内
精子数が少ない、乏精子症の方は1

の禁欲期間に設定するのが望ましいとしています。

当院でも、特に禁欲期間を設けてはいません。

主にタイミング療法中の方からの問い合わせの場合には、禁欲期間を設けずに毎日射精して良いと伝えていますし、少なくとも2日に1回など限りなく高い頻度で射精したほうが良いということも伝えています。

連続して射精したほうが精液所見が良くなる?

また、RBMオンラインで発表されている論文では、

運動精子数が500万未満だった場合に40分以内に続けて精液を採取してもらった結果、1回目よりも2回目の検査結果の方が一部の数値で向上する

と報告しています。

この研究は、男性不妊で人工授精適応とされた患者73人を対象に行われたものです。

精子濃度・精子運動率・正常形態精子率の3つがいずれも基準値を下回っている患者を対象として、短期間で精液採取をした場合の、1回目と2回目の精液所見を比較したところ

精液量は2.7ml対1.1mlで1回目の方が多い

正常形態率は6%対7%で2回目の方が高い

高速直進運動率は、5%対30%で2回目の方が良い

という結果が得られています。

全てのメカニズムが明らかにはなっていませんが、精巣の容量は決められているため、射精しないと新しい精子が入るスペースができませんし、古くなった精子からは活性酸素が出ることで知られています。それによって、DNA損傷を受けることも知られています。

こうした研究の成果からも

「精子はためたほうがよくなる」

というのは間違った理解であると言えると思います。

男性に関しては、細かなことを気にするよりも積極的に射精しておくことが好ましいと個人的には考えます。

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