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男性の因子は胚異数性と関係があるか

PGT-Aを行うことで、胚の異数性や倍数性というのがわかります。
これにより、着床する可能性がある胚なのか、ない胚なのかを判別しようとしていると考えると良いかもしれません。

さて、その胚異数性は卵子由来なのか、精子由来なのか、という疑問がわきます。

従来の主流は卵子由来と考えられていますが、精子由来について検証している論文がありますので紹介します。

Relationship between paternal factors and embryonic aneuploidy of paternal origin

Marissa L Bonus et al.,Fertil Steril. 2022 May 27;S0015-0282(22)00261-8.

2015年1月から2020年まで、453の体外受精サイクル(1,720個の胚)を対象に調査しています。

PGT-Aを受けた1,720個の胚のうち、48.9%(841 / 1,720)は正倍数性であり、49.9%(858 / 1,720)は異数性でした。
異数性胚のうち、73.7%(632/858)は、母体由来の胚性異数性を有し、8.4%(72/858)は、父性起源の胚性異数性を有し、8.4%(72/858)は、母体および父体由来の胚性異数性を有していました。

精液所見、BMI、年齢などでさらに詳細な比較をしています。

精液所見で検証しても有意差はない。

Table2

このように差はあるけれど、統計的に有意差があるかというのはまた別なのが難しいところですね。
(差と言えるほど、根拠の明確な差じゃないって感じです)

BMIと父親の年齢による有意差もない

Table3

父方の異数性率は50歳未満の男性で8.2%、50歳以上の男性で13.0%ではあるものの統計的には有意差とはならないということです。

精液検査やBMI、年齢による影響がほとんどないということは、
女性の年齢と生殖医療の技術によってカバーされているということだと僕は解釈しています。

実際に過去の研究では、男性の加齢による出生児の先天異常リスクが高まることや、妊娠率や流産率の低下が確認されてきました。

精液検査が異常であっても顕微授精であれば、1つの卵子に対して、1つの精子があれば十分です。

女性の卵子が若ければ、男性の異常を修復する報告もあります。

妊娠は二人で到達するゴールではあるけれど、治療の負担も実際の主役も卵子であり、女性です。

妊活をする上で、男性にできることはなにか、益々考えるきっかけにになってほしいと思います。



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