慢性子宮内膜炎の大規模解析研究
慢性子宮内膜炎の治療については、様々な意見があり、見解が分かれています。
日本では肯定的な意見が多く積極的な治療を行うのがメインストリームな印象ですが、海外ではやや懐疑的かつ治療内容は過剰ではないかとする見方もあります。
今回の研究は多国間でのメタ解析を行ったものです。
今回の解析は5つの研究を対象に行われました。日本もこの研究には参加しています。合計796名の反復着床不全で慢性子宮内膜炎の患者さんを対象に、慢性子宮内膜炎治療後の妊娠成績を比較したものです。
主要な評価指標は、
臨床妊娠率
妊娠継続率
着床率
出産率
流産率
が設定されました。
結果として、この研究では、抗生剤を投与して慢性子宮内膜炎が根治していた場合、
妊娠継続率が6.81倍
臨床妊娠率が4.02倍
着床率が3.24倍
という結果となりました。
以前にも紹介している通り、抗生剤の投与などによって症状が根治している場合には、やはり着床率などの数値が大幅に改善され、有用性が示唆されます。
一方で、抗生剤を投与されば治るというほど簡単なものではなく、治癒の確認をせず、慢性子宮内膜炎が持続していれば、治療効率は一向に改善しないことや、この治療と流産率とは関係がなさそうであることが、この解析では示唆されています。
また、この研究では体外受精の患者さんに絞って解析されているので、一般不妊治療の方などに対しての有効性は定かではありません。
慢性子宮内膜炎の検査は、現在当院での標準的な方法としては、CD138免疫染色によるものであり、一定の侵襲があることにも注意が必要です。
要約すると、
慢性子宮内膜炎(CE)があることによる妊娠率の低下は考えられる
CEがあることで流産率とは関係がないかもしれない
抗生剤により治癒することがある
ということでしょうか。
かねてから記載していますが、抗生剤投与については、他の診療科の医師などからも警鐘が鳴らされています。
重要な疾患にかかった際に、その抗生剤の効果が薄かったりすることで、適切な治療ができない可能性を危惧しているという声が多いように思います。
そのため、CEを治癒させることが妊娠率向上に寄与することには多くの方が肯定的ですが、治療方法については検討が必要。
そんな段階ではなかろうかと個人的には思っています。
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