がん患者さんの今の悩み これからの悩み
妊孕性温存を担当していて、難しいと感じるのは、
自分たちが伝えないとならない妊孕性温存は、
現在の患者さんの一番の悩みではない。
ということ。
また、
患者さんが悩んでいるだろうという先入観があると、
正しい問いができなくなる
ことを感じています。
「今の悩み」(がん治療中の悩み)
がん治療中の悩みとしては、
今後の自分の将来のこと
仕事のこと
経済的なこと
診断・治療のこと
不妊治療や生殖機能に関する問題
が挙げられます。
世代によって若干の違いはあり、25歳を超えてくると、少しずつ生殖機能に関する問題が重要度を増してくる傾向にあります。
全世代で概ね共通しているのは、今後の自分の将来のことが一番不安であることです。
がん治療を受けている、あるいはこれから受ける人は今後の自分の将来がどうなるのかという極めて大きなテーマに対して、強い不安を感じているということを前提に考えなければいけません。
だからこそ、別のnoteでも紹介しましたが、患者さんが医療者と妊孕性について話したことを48%くらいの方が忘れてしまう、という報告がされているのだと推測します。
それだけ、別のテーマに頭が引っ張られた状態であるということです。
また、この今後の自分の将来に対しての不安を想像するのであれば、
正確な聞き取りが欠かせません。
「20代前半だから、社会人になりたてだろうから、仕事が悩みだろうな」
「結婚しているから、妊娠のことが悩みだろうな」
「すでに一人子どもいるから、次の妊娠はまぁなくてもいいだろうな」
このような主観に基づいた予想はとても危険だなと日々感じます。
なのでゼロベースでしっかりと聞いていくことが必要だと思いますが、
聞くというのも簡単ではありません。
「キーパーソンはどなたですか?」
以前、そのように患者さんに質問をしていた方がいました。
この質問自体は常套句的に教わるものかと思いますが、
その患者さんは、小さい頃にご両親が離婚されていて、身寄りのない方でした。キーパーソンは自分自身であり、聞かれる事自体が侵襲的でした。
このように、聞くこと自体が難しい内容が多々含まれています。
そのため、僕自身は可能な限りセンシティブな内容は、問診票で聞いてしまうこととしています。
また、追加で聞きたいことがある場合には、聞くべき理由をしっかり伝えて、その上で質問をするように心がけています。
「これからの悩み」(がんサバイバーの悩み)
がん治療後の悩みはだいぶ内容が変わってきます。
今後の自分の将来のこと
不妊治療や生殖機能に関する問題
仕事のこと
後遺症・合併症のこと
体力の維持または運動すること
という順番になります。25-29歳の方については、
第一位が不妊治療や生殖機能に関する問題となります。
がんは、Stageや種類にもよりますが、多くの場合、治癒することを前提として考えられるべきです。
そうなると、将来浮上するこの悩みに対して、がん治療中にも情報提供をしておくことが必要になるというわけです。
ただ、僕自身も肝に命じていることは
「なんでも自分たちでやろうと思わないこと」
です。
がん患者さんの気持ちはやはりがん患者さんだから分かる部分があると思っており、そういう点では患者団体の方などとの接続も重要です。
伝えたいことはたくさんあっても、タイミングも大事だし、誰が言うかも大事な要素です。
患者さんの状況をよくみて、ナビゲートすること。
それが僕自身が、認定がん・生殖医療ナビゲーターとして活動している中で一番に気をつけていることです。
よろしければサポートをお願いします! 主に、不妊治療や若年がん患者の方の妊孕性温存に関する情報収集の書籍代や活動費用に充てさせていただきます。