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FT(卵管鏡下卵管形成術)について

卵管性不妊

卵管が詰まっていたり、狭まったりしていると、精子はその先にある受精の場に進むことができません。

そうなると、精子と卵子は出会うことがなくなり、妊娠のチャンスはなくなってしまいます。

このような不妊症を「卵管性不妊」といいます。

卵管性不妊の場合は従来、体外受精でしか妊娠のチャンスはありませんでした。世界で初めて体外受精で妊娠・出産されたルイーズ・ブラウンさんも卵管性不妊だったと言われています。

体外受精となると、排卵誘発、採卵、と女性の負担は心身ともに大きくなります。

FT

FTは、この卵管性不妊に対する数少ない治療方法の一つで、卵管の鼠径部の詰まりや狭まり(閉塞とか狭窄とかいいます)をバルーンカテーテルを用いて解消する手術です。

これにより、90%以上の方がこの手術で卵管の通過性が回復すると言われており、治療後には自然妊娠も可能な状態となります。

FT後の妊娠率

FT後の妊娠率は一般的には30-40%程度です。
卵管性不妊のままで、体外受精をしなければ0%でしたので、大きな差です。

多くの方はFT後、6ヶ月以内に自然妊娠か人工授精で妊娠しています。
6ヶ月以降に妊娠する方は体外受精にステップアップしている方も見られます。

ここがとても重要で、体外受精しかなかったところが自然妊娠や人工授精で良くなるんですね。

女性側の治療負担の軽減ができるということです。

FTは保険診療

FTは大変高度な手術ですが、保険適用で実施が可能であり、
高額療養費の対象にもなります。
これにより自己負担額は年収に応じて、かなり低くまで抑えることが可能となります。
さらに、ご加入の生命保険によっては、FTは手術であるため、カバーされる場合もあります。

FTの注意点

FTを実施する場合にはいくつかの注意点があります。
医療機関によって異なることもあると思いますので、最終的には治療をうける施設で確認ください。

1.原則、静脈麻酔で実施
静脈麻酔での手術となるため、おかえりの際にはお付き添いの方が必須です。万が一を考え、安全面には万全を期しましょう。

2.手術にあたって
原則、当日0時から水も含めた絶飲食となります。
また、既往歴がある場合などは事前に医師や看護師に伝えることを忘れないようにしましょう

3.手術のリスク
発生頻度は稀であるものの、麻酔などのアレルギー、子宮穿孔などのリスクがありますので、医師からのインフォームドコンセントを受け、しっかりと内容を確認しましょう。

4.手術前後の避妊
FTは妊娠の可能性がある場合には実施できません。
そのため、FTを実施する月経周期の際には、月経開始時からFT実施時まで避妊をしていただく必要があります。
FT実施後は、避妊の必要はありません。

不妊治療は多くの場合、原因がわからずに、人工授精や体外受精とステップアップ方式で進んでいくことが多いです。

このように、原因が明確な場合には、原因を根治することによって、
心身ともにより負担の少ない治療が可能になります。

卵管性不妊症のご夫婦には、こうした観点もよくお考えいただき、
検討いただけると嬉しいです。

ちなみに私が作成した動画も以下に載せておきます。




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