結局、卵巣凍結は緩慢凍結法?

第12回日本がん・生殖医療学会学術集会では、小児がん患者への妊孕性温存が大きなテーマとして取り上げられました。

小児がん(女児)の妊孕性温存は非常に課題が多いです。
小児がんの多くは血液疾患と言われており、卵巣への悪性細胞の転移している可能性が中程度から高程度と言われていますが、受精卵や卵子の凍結ができない年齢の方も多く、その場合は卵巣組織凍結が選択肢となります。

また、同意形成も非常に難しく、医師や看護師のみならずカウンセラーやチャイルドライフスペシャリストなど多職種の連携でご本人もご家族のことも支えながら意思決定支援をされている現状を聞き、とても感銘を受けました。

生殖医療施設だけでは到底このようなケアは行き届きません。
トータルケアの重要性を強く感じました。

また、後半の議題では、卵巣凍結の方法について、議論が及びました。
専門的な内容ですが、紹介していきたいと思います。

卵巣凍結は緩慢凍結法がメイン

知られていないことも多いのですが、卵巣凍結のスタンダードは緩慢凍結法とされています。細かな技術はさることながら、何より妊娠・出産成績がダントツに多いことに起因しています。

受精卵や卵子凍結と同じガラス化法という手段もありますが、世界からすれば、十分な成績を収めている緩慢凍結法を行わない理由がない、というようなコメントをこれまで聞いてきました。

しかし、日本での主流はガラス化凍結法です。
聖マリアンナ大学などを中心に様々な研究が実際に行われています。

ガラス化凍結法が確立されていけば、新たな設備等の費用もなく、簡単に医療機関は卵巣凍結をできるようになりますので、研究成果が待たれています。

緩慢凍結法とガラス化凍結法の比較

京都大学の堀江先生のお話では、凍結のプロセスごとに卵巣組織を確認しており、

①凍結液による卵巣組織への影響として、

ガラス化凍結法:生存卵胞が非常に少ない
緩慢凍結法:生存卵胞が確認できている

②凍結融解による卵巣への影響として、

ガラス化凍結法:生存卵胞が非常に少ない
緩慢凍結法:生存卵胞が確認できている

が確認されたことを報告しています。

まだまだ基礎的な研究の状態なので、分かっていない点も多々あるのだと思います。

少なくとも現時点では、ガラス化凍結には緩慢凍結法を覆しうるだけの成果は見られていないのではないか、と思います。

個人的には、形態学的には同じであっても、
幼若時期の卵胞:思春期の発来に寄与する(その後なくなる)
成熟時期の卵胞:妊孕能に影響を与える

ということで、それぞれの卵胞が持っている運命が異なる、という先生の表現がとっても印象的でした。

この領域の研究はこれからもどんどん続いていくように思います。

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