ある夢の話~短編小説~

これは夢の話である。

ある春の日の夜、俺は不思議な高級ホテルに迷い込んでいた。

チェックインしようとロビーで部屋を選んでいると、

横から犬がひょっこり顔を覗かせ、ロビーの机に前足を乗せてきた。

犬「わし、301号室に泊まりたいワン」

俺は不思議に思いながらも、その部屋を選んだ。

俺は犬と一緒にエレベーターに乗った。

犬は3階のボタンを押せないようだ。

俺「なるほど、だから俺を呼んだのか(笑)」

そう理解し、俺は3階のボタンを押した・・・

しかし、3階のボタンが光らない・・・

なんでだ?そう思った瞬間。

エレベーターは急下降を始めた。

えっ?ロビーは1階で地下ってあったっけ?

エレベーターの照明がチカチカ付いたり消えたり、

急下降の重力に逆らえず、犬と俺は床に伏せた。

「チーン。」

エレベーターがどこかの階に到着したようだ・・・

でも、1階のままだぞ?風景が少し変わっているが。

横にいた犬は・・・

何故か、おじいさんに変わっていた。

えっ?と思いつつ、

エレベーターの扉が開くと、

おじいさんは駆け出して、街中に消えていった。

なんだこれはと思いつつ、俺も街に出た。

季節は冬になっていた。

街にはクリスマスの曲が流れ、

幸せそうな若者やカップルであふれていた。

ただ、どしゃ降りだった。

俺「え?もうクリスマス?」

このとき、街並みに違和感を感じた・・・

時代が違う・・・

俺はクリスマスケーキを売るお兄さんに尋ねた!

俺「今は何年ですか!!??」

お兄さん「もうすぐ2001年だよ!」

俺はハッとした・・・

そしてすべてを悟った。

この時代なら・・・

『この時代ならまだアイツは生きている!!』

俺はどしゃ降りの街中を必死に探した。

あの人でもない、この人でもない・・・

くそっ。。。会いたいのに・・・

なんでいないんだよ!!!

その時、街の片隅に見慣れた女性が、

雨に打たれたまま、

赤いクリスマスプレゼントの袋を持って立っていた。

俺は一瞬立ち止まりそうになったが・・・

ちがう、、、あれは今の彼女だ・・・アイツじゃない・・・

でも、彼女とは5年前に付き合いだしたばかり

この時代にいるわけがない・・・

俺はそんな違和感を気にすることなく、

そのままアイツを探そうと歩き始めようとした。

・・・・・

・・・・・

足が止まる。

俺は我に返った。

俺は何をやってんだ・・・

そのまま、雨の中寂しげに待つ彼女の元に歩み寄り、

彼女を抱きしめて、わんわん泣いた。

彼女「・・・どうしたの?大丈夫?」

俺「・・・あぁ、もう大丈夫だ。」

・・・

そのふたりの姿を、嬉しそうに微笑みながら見る

赤い傘をさした人がいた。

その人は、ふたりを見届けると、

きびすを返して街の雑踏の中に消えていった。

・・・・・

そこで俺は目を覚ました。

何だ夢か・・・・

横には彼女がもう起きて俺を見ていた。

彼女「どうしたの?寝ながら号泣してたよ?」

俺「マジで?(笑)大丈夫大丈夫!」

俺「そんなことより・・・結婚すっか(笑)」

・・・・・・


人は過ぎ去った時代には戻れない。

人は失った人にはもう会えない。

今を生きるしかないんだ・・・

過去を振り返るのはもうやめて、

今、そばにいてくれる人を愛そう。

それが、アイツのためでもある。


あのおじいさんは・・・

誰かに会えてるといいけどな・・・

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