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グラッセ

A「いや〜、尋問っていいなと思いまして」
B「ああ、カツ丼食わせられるやつね?」
A「そうそうその尋問なんだけどさ、ちょっとやりたいから相手になってくんないB?」
B「俺はやってないぞ!!!」
A「早い早い、まだ容疑を掛けてすらいないからね?」
B「そっかそっか、ただの取り乱した人だったね」
Aは面持ちを変え、尋問を開始した。
A「B、黙ってても何にもならないぞ?」
B「…………」
Aは部屋を退出し、料理を持って戻ってきた。
A「食うか?」
B「なんだよ、これ」
A「人参のグラッセだよ」
B「グラッセ……?ステーキに添えてあるやつか?」
A「そうだ、とりあえずこれ食えよ」
B「尋問にグラッセ出してくるなんて気色悪いな……そこはカツ丼とかにしてくれよ」
Bは仕方なくグラッセを口にする。
B「……ああ、美味いな」
A「どうだ、知ってること言う気になったか?」
B「グラッセじゃなぁ……一口だし」
A「一口じゃ足りないのか?まあ、そう言うだろうと思ってこれを作ってあるんだ──」
B「うげ……なんだよこれ。大方想像はつくけどよ」
A「グラッセ丼だよ」
B「だから丼ならカツ丼にしてくれって」
A「あいにく厨房の冷蔵庫に人参しか無かったんだ。とりあえず食え」
B「これ食って俺がなんか言うと思うのか?」
A「食ってくれ」
B「ノーコメントかよ」
Bはグラッセと白米を口に運び、苦い顔をした。
B「グラッセは美味いけど、明らかに丼にするものではないよな。人参と米も互いに困惑してるだろうな。何でここにいるんだって」
A「食レポなら結構だ。さあ、いい加減吐け」
B「これを食レポだと思ったか?まあ、こんな最悪の丼食べてたら気持ち悪くて吐くかもな」
A「おお!本当か!」
B「いや、そういうことじゃなくて」
A「おかわりならまだまだあるからな。遠慮しないで食べてくれ」
B「正直に吐くからもう勘弁してくれ」

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