比較的戸数のあるマンションに暮らしており、地下2層に駐輪スペースが設けられている。5,6年に一度、各世帯に自転車の所有確認があり、最終的に確認の取れない自転車を処分するわけだが、管理側は相当慎重に、数ヶ月かけて判断を下す。我々のもそうだが、越してきた当初は現役でも、この数年は一度も跨がることもなく、空気は抜け、ホコリが溜まった自転車を次に転居する際に持っていくのか、というと躊躇せざるを得ず、そんな不道徳の積み重ねが、管理、住人側双方にとって面倒な5,6年に一度の整理の背景にある。
15年前に約8年の東南アジアでの暮らしを終え、帰国した。海外生活を始めるにあたり、その国の大使館、領事館に「在留届」を出すことが外務省より推奨され、帰国の際の届け出までが一つの対と考えられている。各国の在留邦人の数はその届け出がベースになっているわけだが、当然在留届を出さないものもいるし、たちの悪いのは在留届は出したものの帰国の際の届け出をしない、というケースも多くあり、在外公館が実態を掴んでいると考えるのは幻想である。いま居るマンションの自転車のように数年に一度整理する機会があれば良いが、到底現実的ではなく、その亡霊の数は澱のように溜まってゆく。
ウクライナで120人の在留邦人が取り残されているというニュースを読んだが、勇んで救出に出向いて、その地に足を踏み込んだらもぬけの殻だったなんてことも大いにあり得る話だ。ロシア軍の侵攻まで退避のための十分なリードタイムがあり、そもそもそんなところにまだいる日本人は、救出に来られる方以上に間違いなく強い意志の持ち主なので、無駄な税金をかける必要はない、と個人的には思います。

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