踏ん張りどころ
先ほどまで地方事務所のスタッフと話をしていた同僚の女性が受話器を叩きつけ、言い放った。
「だから男の50代は使えないのよ!」
ロクに働きもせず給料だけは相対的に高い、そんな会社の"お荷物"としてメディアで取り上げられることが多い50代男性。
新しい展開が望めない職場環境において、定年までのカウントダウンが始まる。ようやくこのストレスから解放されるのだと一息つき、緊張が緩んでしまうのであろう。
しかし、この10年という歳月は思いのほか長い。そこを見誤るが故、やる気、向上心を取り戻すことが出来ないまま、自身を不良債権化させているのだと僕は考えている。
そして、そんなぬるま湯すら耐えられず、もはやその先には地獄しか待っていないと自分以外のすべての人が分かっているのにも関わらず、60を待たず会社に退職願いを出した先輩を僕はこれまで何人も見てきた。
先月僕より一つ年上の同僚が同じチームの所属となった。人としては素晴らしい方で、僕が一方的に親近感を抱き、普段からしつこくつきまとっているのだが、良くも悪くも「優しい」性格ゆえ、決断力、推進力が決定的に欠いており、仕事人としての評価は高くない。各部署をたらい回しにされたあげく、中途入社8年目で僕と机を並べることになった。
せっかくの好機なので、僕は密かに彼を50代の自分の写し鏡として利用させてもらうことにした。彼を観察し、自身の立ち居振る舞いを見直していく。
第4コーナーを曲がり、長い直線のペース配分を誤算しないよう、彼には伴走者として、途中で離脱されては困る。何とか彼にも、50 代の壁を乗り越えてもらえるよう、ときに褒め、おだてたりもしながら、上手くやっていければと思っている。
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